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渋谷区と世田谷区で同性パートナーシップ証明制度がスタートして10年が経ちました
渋谷区と世田谷区が同性パートナーシップ証明制度導入10周年記念企画を実施とのニュースでもお伝えしていたように、11月5日、同性カップルのパートナーシップを公的に承認し証明書を発行する制度が東京都世田谷区と渋谷区で初めて導入されてからちょうど10年となりました。
10周年を迎えるにあたり、朝日新聞が特集のようなかたちでいくつもの記事を上げていたので、ご紹介します。
まず、モンキー高野さんと高島由美子さんは世田谷区パートナーシップ宣誓第1号となったカップルです。モンキー高野さんはトランス男性で生まれつき耳が聞こえず、手話講師として活躍しています。高島由美子さんは「らーちゃん」の名前で「Living Togetherのど自慢」をはじめ多くのLGBTQイベントで手話通訳をしている手話通訳士の方です。お二人をフィーチャーした記事では、胸を張って「家族です」と言えるようになったり、パートナーシップ宣誓制度が心の支えになっていること、一方で、社会の理解はまだ不十分で、若い世代で悩んでいる方がまだ多いことも語られていました。
上川あや区議の活躍もあり、LGBTQが生きやすくなるような制度が次々に整備されてきた世田谷区に、関西から引っ越してきた元警察官&元消防士のカップル、KANE and KOTFEさんをフィーチャーする記事も掲載されました。お二人は「パートナーシップ宣誓制度」の先に同性婚を見据え、「法制度が整えば、国民の理解も進むと思う。制度ができてからがスタートで、その10年後には『昔は同性が結婚できなかったなんて信じられない』と思える時代が来ると信じている」(KOTFEさん)、「人権の問題として、誰もが自由に生き方を選択できる社会をめざしたい」(KANEさん)と語りました。
両区で制度がスタートしてから10年が経ち、2025年5月末時点で全国の532自治体が制度を導入し、人口カバー率は9割を超え、9837組が宣誓しました(NPO法人虹色ダイバーシティと渋谷区の共同調査より)。全国に制度が広がったことにより、公営住宅への入局が認められたり、病院で家族として面会できるようになったり、さまざま、異性婚夫婦と同等の行政サービスが受けられるようになりました(自治体によって濃淡がありますし、病院によってはいまだに親族として扱わないところもありますけれども)。2017年には同性カップルが養育里親として認められるようになり(大阪市が初)、2021年からはファミリーシップ制度(明石市が初)も広がりを見せ、保護者として保育所の送り迎えなどが認められるようになり、昨年は住民票の続柄について事実婚夫婦と同様の表記が認められるというエポックメイキングな出来事(大村市が初)も生まれました。
自治体が公的に承認したことにより、企業も動き、悲願だった生命保険の受取人になることもできるようになり、不動産の購入の際に共同でローンを組めるようになったり、社内LGBTQ施策も急速に進み、社会が大きく変わりました。その社会変化を踏まえ、同性婚の法制化という課題が前景化し、「結婚の自由をすべての人に」訴訟も始まりました。
一方で、記事では、社会の理解が進んでいない実態も明らかにされています。渋谷区が制度利用者を対象に2022年に実施した調査によると、「制度の社会的な認知・理解が足りないと感じる経験をした」との回答が48.6%に上ったそうです(具体的には、アパートの賃貸契約を断られたり、クレジットカードの家族カード作成を断られたりしたケースがあったとのこと)。世田谷区も2024年度に「男女共同参画に関する区民意識・実態調査」で「パートナーシップ・ファミリーシップの宣誓」について4択で区民に尋ねたそうですが、なんと「知らない」が47.0%、「名前は聞いたことがあるが、内容は知らない」が33.4%に上ったそうです。
そのような課題はありつつも、やはり、両区が創設した同性パートナーシップ証明制度が社会に与えた影響は大きく、たくさんの「よかった」が全国各地から聞こえるようになりました。自分の住んでいる、あるいは出身の市区町村が制度を導入し、同性カップルも婚姻相当であると承認してくれるようになったことの喜びは、決して小さくないものがありました。そして、制度が全国に広がりを見せ、異性カップルも同性カップルも平等であるという「社会通念」が浸透してきたと見做されるようになったことが「結婚の自由をすべての人に」訴訟での数々の画期的な違憲判決や犯罪被害者給付金裁判での勝訴もにもつながっていると言えるでしょう。
全国で初めて2015年2月に制度創設を公表した渋谷区で、男女平等・ダイバーシティ推進担当課長としてLGBTQに関するさまざまな取組みを実施してきた永田龍太郎さんが、11月1日発行の渋谷区の広報誌の表紙と巻頭インタビューを飾っています。以下の画像をクリックしてPDFをダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
なお、最近の制度導入のトピックとして、山梨県のことがニュースになっていました。
山梨県では1日から「パートナーシップ宣誓制度」の運用が始まり、同日、30代の女性のカップルが第1号となり、初めて宣誓受領証(パートナーシップ証明書)を交付されました(おめでとうございます)。お二人は「さまざまな積み重ねでこうした形になったのは喜ばしいが、これから育っていく制度だとも思う」と語りました。
山梨県では甲州市と韮崎市で制度が導入されているほか、県は15の市町村と連携協定を結んでいて、今後も拡大していくそうです。
参考記事:
「家族」に認められた喜び パートナーシップ「第1号」2人の10年(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASTC41CDRTC4OXIE032M.html
「ばれたらゲームオーバー」から胸張って「家族」 世田谷のカップル(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASTC41DDDTC4OXIE04MM.html
パートナーシップ制度の人口カバー率9割超 差別ある中「心の支え」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASTC4153KTC4OXIE010M.html
「同性婚までの過渡的措置」パートナーシップ制度10年意義と課題は(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASTB02V50TB0UTIL013M.html
11月1日から「パートナーシップ宣誓制度」運用開始 第一号の申請を認め、カップルに宣誓書を交付(テレビ山梨)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/uty/81181


