NEWS

多様なLGBTQの人たちがメディアでフィーチャーされています

 米国でトランスジェンダーへの弾圧が強まるとともに企業などのDEI施策も縮小・撤退を余儀なくされたり、世界的に(例えばスロバキアトルコでも)LGBTQへのバックラッシュが進んでいるなか、日本でもLGBTQ支援の動きは以前ほど盛んではなくなっているように感じられます。そんななかでも、この10月には、Web上で多様なLGBTQの人たちをサポーティブに取り上げる記事がたくさん見られ、希望を感じさせました。以下にダイジェストでお伝えします。
 

 まず、10月6日・7日には、2013年に東京ディズニーリゾートで初の同性結婚式を挙げ、2015年の渋谷区同性パートナーシップ証明第1号となった東小雪さんが小学館の子育てをする親御さん向けのポータルサイト「HugKum(はぐくむ)」に登場しました。その内容は少なからずシリアスなもので…3歳から中2まで約11年にわたり実父から性虐待を受け、摂食障害やリストカットも経験、という、本当にヘビーな体験を乗り越えてきたことを、勇気をもって語ってくださっていました。高校時代に同性に惹かれる自分に気づいたそうですが、それは性虐待や宝塚とは関係なく、親友が「小雪ちゃん、私勉強が手に付かない、好きな人がいるの」と言い、その相手が女の子だったことに驚き、女性は男性を好きになって結婚するものだという思い込みが払拭されたのだそうです。宝塚を退団後、結婚式を挙げることになる方と出会います。彼女は「私がうつ状態でたくさん薬を飲んでいるのに驚いて、寄り添ってくれた人」だったそうです。「彼女自身は家族に愛されて育ってきたとても健康な人です。そういう人と結婚できる幸せを感じ、自己肯定感みたいなものも感じていました」。しかし、彼女が同級生に結婚式の招待状を出したら、「子どものお受験に差し障るから出席できない」という返事をもらったそうで、「陰湿な差別も、単純明快な差別もいろいろあったけれど、中でもそれが一番ショック」だったそうです。
 宝塚歌劇団出身で、キラキラしてて、2010年代の“LGBTブーム”を牽引したスター的な存在である東さんが、こんなにも辛く、苦しい体験をしてきたということが赤裸々に語られていて、LGBTQの方もそうでない方も、ショックを覚えたり、「本当に大変だったね…」と抱きしめたい気持ちになった方々、多かったのではないでしょうか。そんなに辛い体験をしながらも、それを乗り越えて、最前線で活動してきたことに敬意を表します。そして、これからの幸せをお祈りします。
 

 『AERA』誌でドラァグクイーンのクアラルンプール・とき子さんがフィーチャーされていました。名前の通り、クアラルンプール出身で、上智大の学生の方ですが、昨年の春、白血病と診断されたことをきっかけに、逆境をバネにして観客を楽しませているように見えたドラァグクイーンの先輩たちのようにそうなりたいと、「後悔したくない」と思い、二丁目のクイーンの方たちに相談し、デビューすることになったんだそう。双子の弟に「お兄ちゃんはゲイで、しかも女装してるんだ」ってカムアウトしたところ、「友達とショーを見に行くね」と言ってくれるようになったり、大学でも受け容れられているんだそう。そんなとき子さんは11月3日の「ソフィアンズコンテスト」にファイナリストとして出場します。ソフィアンズコンテストは、従来のミスコンを廃止し、2020年に男女の区別をなくして出場者の「発信力」を評価軸の一つとする新たなコンテストとして立ち上げられたものです。優勝するといいですね!
【追記】20215.11.7
 見事優勝したそうです。ドラァグクイーンとしての優勝は史上初だそう。おめでとうございます!

 
 札幌で女装を楽しみたい人のためのバー「7丁目のパウダールーム」の店長をつとめるかたわら、さっぽろレインボープライドの実行委員としても活躍してきたドラァグクイーンの満島てる子さんのことが共同通信で配信されていました。
 満島さんは三重県出身で、小学生の頃にゲイだと気づき、地元と距離を置こうと北大へ進学したそうです。初めて訪れたゲイバーでコミュニティに迎えられ、店のオーナー(たぶんケンタさん)勧められてドラァグクイーン「てるまゑ・ノヱビア」になり、自身を肯定できるようになったといいます。お店では以前、初めて来た酔っぱらいの客が「殺すぞ」とすごんできたものの、動じることなく「飲も!」と乾杯し、ということもあったそう(のちに酒を酌み交わす常連になったそうです)。また、7年間、さっぽろレインボープライドの運営に携わり、今年はドラァグクイーンとして出演し、ショーも繰り広げました。

 
 オリコンのWebサイトに、SHOW-1さんへのインタビューが載りました。
 三重でLGBTQ団体を立ち上げ、伊賀市で全国で3番目に同性パートナーシップ証明制度が導入された際の記念式典にも立ち会い、みえレインボーフェスタ(現在は三重レインボープライド)を開催、そして現在はダンサーとして数々のLGBTQイベントにも出演している方ですが、このインタビューでは、子どもの頃から性別違和に苦しみ、自ら命を絶とうとしたこともあるなど、深刻な経験を赤裸々に語っています。19歳のとき、厳格な父親に思い切ってカムアウトしたところ、「我が子には変わりない」「手術するだろうけど健康には気をつけろよ」と思いのほか温かい言葉をもらえて、生きる支えになったそうです。ホルモン療法や手術を経て、男性として生きていける安心感が得られてから、ポジティブに生きられるようになったというSHOW-1さんは、同じように性別違和に苦しむ方などに向けて、「自分だけは自分の味方でいてほしい」というメッセージを語っていました。


 同じくオリコンのWebサイトに、女性モデルとしても男性モデルとしても起用できる「ノンバイナリーモデル」として活動している岡本舵楽さんのことがフィーチャーされていました。
 小中の9年間、いじめられ、高校を卒業して就職後、適応障害と診断され、半年ほど引きこもっていて、インスタライブをしていたときにリスナーさんが「モデルやれば?」と言ってくれたのをきっかけに、開き直ってモデルを志すようになったんだそう。もともと“性同一性障害”で、中性的な見た目をしていたこともあり、女性モデル、男性モデル、ジェンダーレスなモデルと性別の境界を超えた活動が増えていき、「ノンバイナリーモデル」と名乗るように。「正直、垢抜けた後も相変わらず根暗ですし、自己肯定感も低いまま」だそうですが、「街を歩いていたらたまにすれ違う人たちが 『あの人、めっちゃおしゃれじゃない?』『え、かっこいい…モデルさんかな?』と言ってくれたりもするので、そのときだけは嬉しくなって自己肯定感が高く」なるそうです。これからもノンバイナリーモデルとしてのご活躍を期待します。
 

 朝日新聞に掲載された記事によると、明石書店で編集者として働く辛島悠さんは、出生時に女性とされましたが、性自認はノンバイナリーで、約10年前に“性同一性障害”の診断も受けています。幼少期は多様な生態を見せる水生生物が好きで、図鑑を飽きずに眺め続け、相撲の独特な世界観や力士の風貌にも惹かれたそうで、小学校高学年になると「変わっている子」といじめられるように…。中学では明るく面白いキャラの仮面をかぶるようになりましたが、本当の自分を出せない状況が心身の負担となり、大学卒業の頃には進路が決まらない不安から摂食障害を発症し、専門学校に通っていたときに自閉スペクトラム症(ASD)と診断されました。幸い、明石書店に編集者として採用され、発達障害やノンバイナリーであることもカムアウトしたうえで働けているそうです(よかったですね)
 

 『AERA』誌で、“13歳の引きこもりの女の子”として10年活動をしているSMの女王様でレズビアンの「ひつじ」さんのことがフィーチャーされていました。ひつじさんは「女の子めっちゃ可愛い! 付き合いたい! セックスしたい!」というタイプで、なかなか相性の良い女性とは出会えていないそうです。10年前、『日曜日のサザエさん症候群とインターネットの雑音から抜け出せない13歳ヒキコモリ』をキャッチフレーズに「サクセスストーリーを生きる」中二病の13歳という設定で活動を始めたそうですが、そこには、幼少期に凄まじい修羅場をくぐり、そのトラウマから、これまで何度か自殺未遂を図り、精神科に入院したこともあるという事情も関係しているそうです。「どうかお幸せに」と言うのは簡単ですが、言葉を失ってしまうと言うか、その経験のヘビーさに胸が痛む思いでした…。

 
 最後に、今月、鹿児島市で初開催された「かごしまレインボープライド」にも参加したオープンリー・バイセクシュアルのシンガーソングライター、よしむらさおりさんのことが鹿児島読売テレビで取り上げられていたので、ご紹介します。よしむらさんは音楽と講演を通じて同性婚の法制化など、LGBTQが自分らしく生きられる社会の実現を訴えています。(詳しくは動画をご覧ください)
 

参考記事:
3歳から中2まで約11年にわたり実父から性虐待を受けた元タカラジェンヌ・東小雪さん「傷が癒えることは一生ない」摂食障害、リストカット、薬物依存…壮絶な過去を乗り越えて今願うことは
https://hugkum.sho.jp/726090
【元タカラジェンヌ・東小雪さん】実父からの性被害・レズビアンを告白し、ディズニーシーでの初の同性挙式に込めた想い。差別と向き合い、伝えたいのは“自分らしく生きる”こと
https://hugkum.sho.jp/726095

「お兄ちゃんはゲイで、しかも女装してるんだ」 白血病を乗り越え“ドラァグクイーン”になった男子学生の決意と挑戦《上智大「ミスコン」廃止から5年》(AERA)
https://dot.asahi.com/articles/-/267831?page=1

バーの店長「人目引く女装」始めた経緯は 念願のさっぽろレインボープライド舞台に(共同通信)
https://news.jp/i/1355315662806876448?c=302675738515047521?c=302675738515047521

親父とは“男として”話したかった…厳格な父に“本当の自分”を伝えた元女性、予想外の言葉に「今も支えられている」(オリコン)
https://www.oricon.co.jp/news/2414950/full/

いきなりモデルになれる? 適応障害、引きこもりで自暴自棄に…容姿に自信のなかった少年が「ノンバイナリーモデル」に転身したきっかけ(オリコン)
https://www.oricon.co.jp/news/2414907/full/

発達障害に性別違和 「ふつう」に見せるため、必死に見たロンバケ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASTBG2SCPTBGULLI008M.html

パワー系メンヘラとうつ状態を行ったり来たり “13歳”女性が人生を「サクセスストーリー」と位置付けるワケ(AERA)
https://dot.asahi.com/articles/-/268334?page=1

「自分らしく生きるために」両性愛者シンガーが語る鹿児島の“性の多様性”と制度の壁(鹿児島読売テレビ)
https://news.ntv.co.jp/category/society/ky77f4998e9403406dbea757dd702a1b59

ジョブレインボー
レインボーグッズ