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同性パートナーも事実婚相当だと認める法令が33に拡大するも、120の法令は除外
今年1月21日、政府は「公営住宅法」など24の法令について同性パートナーも対象になりうるとの見解を示し、その他の法令についても早期に検討するよう各府省庁に指示していましたが、9月30日、検討結果が発表され、災害弔慰金など新たに9つの法令について同性パートナーが対象に含まれうるとされた一方、社会保障など120の法令が除外されました。
9月30日に内閣官房副長官補室が発表した「法律及び政令における「事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」と同一又は類似の文言を含む規定での同性パートナーの取扱いの取りまとめについて」によると、同性パートナーが事実婚に含まれ得るとされた法令は以下のとおりです。
<同性パートナーが事実婚に含まれ得るとされた33の法令>
特定秘密の保護に関する法律
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律
災害弔慰金の支給等に関する法律
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行令
医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律施行令
銃砲刀剣類所持等取締法
犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律
犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律施行令
オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律
国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する財産の凍結等に関する特別措置法
国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令
特定複合観光施設区域整備法
児童虐待の防止等に関する法律
債権管理回収業に関する特別措置法
民事執行法
借地借家法
少年の保護事件に係る補償に関する法律
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
少年院法
少年鑑別所法
出入国管理及び難民認定法
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第十六条第八号に規定するやむを得ない事由を定める政令
私立学校法施行令
医療法施行令
社会福祉法施行令
公営住宅法
特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律
住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律
高齢者の居住の安定確保に関する法律
公営住宅法施行令
逆に、同性パートナーが事実婚に含まれ得るとされなかった120の法令は以下のとおりです。
<同性パートナーが事実婚に含まれ得ると判断されなかった法令一覧>
一般職の職員の給与に関する法律
国家公務員災害補償法
国家公務員退職手当法
一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律
国家公務員の配偶者同行休業に関する法律
北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律
北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律施行令
災害救助法施行令
警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律施行令
児童扶養手当法
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律
母体保護法
母子及び父子並びに寡婦福祉法
児童扶養手当法施行令
母子及び父子並びに寡婦福祉法施行令 引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律
地方公務員法
地方公務員災害補償法
地方公務員等共済組合法
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び地方公務員等共済組合法及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する 法律の一部を改正する法律の施行に伴う地方公務員等共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第347号)第7条第1項の規定により読み替えて適用する被用 者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第60条第5項の規定により同法第3条の規定による改正前の地方公務員等共済組合法による職域加算額についてなおその効力を有するものとされた同条の規定による改正前の地方 公務員等共済組合法
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び地方公務 員等共済組合法及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律の施行に伴う地方公務員等共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第347号)第14条第1項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第61条第1項に規定する同法第3条の規定による改正前の地方公務員等共済組合法による年金である給付に係るなおその効力を有するものとされた同条の規定による改正前の地方公務員等共済組合法
地方税法
恩給法
地方公務員等共済組合法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令
地方公務員災害補償法施行令
社会保障協定の実施に伴う地方公務員等共済組合法等の特例に関する政令
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び地方公務員等共済組合法及び被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律の施行に伴う地方公務員等共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第347号)第14条第2項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第61条第1項に規定する同法第3条の規定による改正前の地方公務員等共済組 合法による年金である給付に係るなおその効力を有するものとされた地方公務員等共済組合法施行令等の一部を改正する等の政令(平成27年政令第344号)の規定による改正前の地方公務員等共済組合法施行令
地方公務員等共済組合法施行令
地方税法施行令
非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令
裁判官の配偶者同行休業に関する法律
証人等の被害についての給付に関する法律
証人等の被害についての給付に関する法律施行令
死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律施行令
在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律
国家公務員共済組合法(昭和33年法律第128号)
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行及び国家公務員の退職給付の給付水準の見直し等のための国家公務員退職手当法等の一部を改正する法 律の一部の施行に伴う国家公務員共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令 (平成 27 年政令第 345 号)第8条第1項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元 化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成 24 年法律第 63 号)附則第 36 条第5項の規定によりなおその効力を有するものとされた同法第2条の規定による改正前の国家公務員共済組合法
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行及び国 家公務員の退職給付の給付水準の見直し等のための国家公務員退職手当法等の一部を改正する法 律の一部の施行に伴う国家公務員共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令 (平成 27 年政令第 345 号)第 15 条第1項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の 一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成 24 年法律第 63 号)附則 第 37 条第1項に規定する同法第2条の規定による改正前の国家公務員共済組合法による年金で ある給付に係るなおその効力を有するものとされた同条の規定による改正前の国家公務員共済組合法
国家公務員等の旅費に関する法律
所得税法
租税特別措置法
国税徴収法
国税徴収法施行令
国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令
社会保障協定の実施に伴う国家公務員共済組合法等の特例に関する政令
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行及び国家公務員の退職給付の給付水準の見直し等のための国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う国家公務員共済組合法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第345号)第15条第2項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第37条第1項に規定する同法第2条の規定による改正前の国家公務員共済組合法による年金である給付に係るなおその効力を有するものとされた国家公務員共済組合法施行令等の一部を改正 する等の政令(平成27年政令第344号)の規定による改正前の国家公務員共済組合法施行令
所得税法施行令 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令 租税特別措置法施行令
小笠原諸島振興開発特別措置法施行令
国税通則法施行令
相続税法施行令
東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令
地価税法施行令
消費税法施行令
法人税法施行令
私立学校教職員共済法第25条において準用する国家公務員共済組合法
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係政令等の整備及び私立学校教職員共済法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第 348号)第12条第1項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険 法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第 78条第3項の規定によりなおその 効力を有するものとされた同法第4条の規定による改正前の私立学校教職員共済法第25条において準用する改正前の国家公務員共済組合法
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び私立学校 教職員共済法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係政令等の整備及び私立学校教 職員共済法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第348号)第13条第1項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険 法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第 79条の規定によりなおその効力を有するものとされた同法第4条の規定による改正前の私立学校教職員共済法第25条において準用する改正前の国家公務員共済組合法
公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償の基準を定める政令
私立学校教職員共済法施行令
社会保障協定の実施に伴う私立学校教職員共済法の特例に関する政令被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律及び私立学校
教職員共済法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係政令等の整備及び私立学校教職員共済法による長期給付等に関する経過措置に関する政令(平成27年政令第348号)第13条第1項の規定により読み替えて適用する被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険 法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)附則第79条に規定する同法第4条の規定による改正前の私立学校教職員共済法による年金である給付に係るなおその効力を有するものとされた改正前の私立学校教職員共済法施行令第7条で準用する改正前国家公務員共済法施行令
原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律
ハンセン病問題の解決の促進に関する法律
ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律
労働者災害補償保険法
石綿による健康被害の救済に関する法律
特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律
雇用保険法
中小企業退職金共済法
社会福祉施設職員等退職手当共済法
戦傷病者戦没者遺族等援護法
未帰還者留守家族等援護法
未帰還者に関する特別措置法
引揚者給付金等支給法
戦没者等の妻に対する特別給付金支給法
戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法
戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法
戦傷病者特別援護法
中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律
特別児童扶養手当等の支給に関する法律
介護保険法
国民年金法
厚生年金保険法
年金生活者支援給付金の支給に関する法律
特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律
厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律
社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律
確定給付企業年金法
確定拠出年金法
廃止前農業者年金基金法(独立行政法人農業者年金基金法附則第6条第1項第1号において行う業務に関する規定)
健康保険法
健康保険法施行令
船員保険法
船員保険法施行令
高齢者の医療の確保に関する法律
高齢者の医療の確保に関する法律施行令
国民健康保険法
国民健康保険法施行令
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済に関する特別措置法施行令
予防接種法施行令
独立行政法人医薬品医療機器総合機構法施行令
勤労者財産形成促進法施行令
国民年金法施行令
厚生年金保険法施行令
年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行令
社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する政令
廃止前厚生年金基金令(公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令第3条第2項においてなおその効力を有する規定)
石炭鉱業年金基金法施行令
独立行政法人農業者年金基金法
農林漁業団体職員共済組合法
独立行政法人農業者年金基金法施行令
小規模企業共済法
海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律施行令
公害健康被害の補償等に関する法律
防衛省の職員の給与等に関する法律
連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律
この結果を受けて、LGBTQコミュニティからは、1月時点から少し増えて33の法令で同性パートナーが事実婚相当であると認められたことを前進だと喜びつつも、まだたくさんの法令で事実婚相当だと認められない(差別的取扱いが温存された)ことについて、批判の声が上がっています。
長崎県大村市で住民票の続柄について事実婚と同様の表記を認めてもらった(現在、雇用保険法に基づく「移転費」の支給について事実婚と同様であり支給が認められるべきだとして裁判を闘っている)松浦慶太さんは、「前進だと思う。嬉しいことだ」としつつも、「認められる法令と認められない法令があることには違和感を覚える。早く認めてほしい」と語りました。
一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんはYahoo!への寄稿で、今回、社会保障関連の法令が外されたことについて、雇用保険法を例に挙げ、介護休業給付金の制度では家族の介護のために最大93日間の休みを取ることができ、その間の賃金が一定保障される制度で、異性パートナーであれば事実婚でも適用される一方、同性パートナーは対象外となるため、企業によっては介護休暇自体は取ることができてもその間の給付金支給はなく給料の保障はなく、そのような長期間、無給で休みを取ることはできず、現実的に休むことは難しいと指摘・説明しています。
また、「なぜ国は同性カップルを社会保障から排除するのか」について松岡さんは、政府が、異性の事実婚は「協力や扶助、同居義務の規定などが適用される」という判例が積み上がっているのに対し、同性パートナーにはまだ判例が積み上がっていないからだとしていることに言及し、「同性カップルと異性カップルの生活実態は同じだ。同性パートナーだけを社会保障から排除する理屈は立たず、合理的な理由のない差別的取り扱いとしか言えない」と批判しています。
それだけでなく、例えば今回事実婚に該当し得るとされた「私立学校法施行令」は、同性パートナーの権利を認めるものではなく、「法人の役員が親族等に特別な利益を与えてはならない」といった規定に同性パートナーも含むという、むしろ制限を加えるような内容で、つまり「同性カップルに対し「負担だけ強いて保障はしない」という、当事者の生活にとって重要な社会保障制度からは排除したまま、むしろ不利益だけを異性の事実婚と同等に課すような結果になってしまっている」と批判しています。
「根本的には、早急な「同性婚」の法制化、つまり婚姻の平等の実現が求められるが、当事者の日々の生活にとって、事実婚として社会保障を受けられるかどうかは死活問題だ。国は社会保障制度を中心とした120の法令についても、早急に事実婚に該当し得ると判断すべきだろう」
10月1日に記者会見を開いたLGBT法連合会の神谷悠一代表理事は「(DV防止法など含め)33法令で認められたことは当事者を勇気づけるものだ」と評価したうえで、「生活に密着した重要な法令で対象外とされているのは問題だ」「(年金や保険など)社会保障法関連で対象外となっており、承服しがたい。今後も検討を続けてほしい」と訴えました。同じ記者会見で「Marriage For All Japan―結婚の自由をすべての人に」の佐藤倫子弁護士は「社会保障など市民生活の基盤となる制度についてはゼロ回答。恣意的な取り扱いだと言わざるを得ない」と批判しました。
なお、LGBT法連合会は9月30日に「いわゆる「事実婚」に適用される法令の同性パートナーへの適用に関する政府検討の結果について」と題した声明を発表しています。
「2025年9月30日、共生社会担当大臣は、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」と同一または類似の文言を含む法令のうち、新たに9つの法令において同性パートナーが対象に「含まれ得る」と発表した。あわせて、同性パートナーが対象に「含まれ得る」とされていない法令(主に社会保障関係)について公表した。これにより、2025年1月21日に発表された24の法令と併せ、計33の事実婚に適用される法令において、同性パートナーが対象に含まれ得るという解釈が示されたことになる。
当会は、この結果を一歩前進であると一定の評価をする。2024年3月26日の犯罪被害者給付金に関する最高裁判決を契機として政府が行った検討の結果、33の法令において同性パートナーを事実婚関係と同等に位置づけたことは、平等な権利保障に向けた前進であり、性的マイノリティ当事者を勇気づけるものといえる。今回、新たに同性パートナーが含まれ得るとされた法令は、災害弔慰金の支給等に関する法律(災害弔慰金の支給対象に同性パートナーを加える)、などである。
一方で、社会保障関係の法令を中心に、120の法令において同性パートナーが「含まれ得る」とされていないことについては承服し難い。
政府は、この間の国会審議において、社会保障関係の法令を同性パートナーに適用しない理由として、異性間の事実婚については民法上の協力扶助・同居義務の規定が適用されるという判例が確立しているのに対し、同性カップルには同様の判例等が確立していないことを挙げている。
しかしながら、民法及び社会法の歴史的展開を見ると、事実婚に協力扶助等の規定が適用されるという判例の確立に先行して、遺族保障などの社会保障制度が事実婚にも適用されてきた。加えて、民法上婚姻が認められていない間柄(重婚的関係、近親婚等)についても、一定の条件のもとで事実婚として扱い、社会保障制度の一部を適用している。以上のような経緯及び社会保障制度の目的を踏まえて、あらためて検討が行われることを強く希望する。
また、地方自治体においては、今回含まれ得るとされた法令と類似する制度をはじめ、法律婚・事実婚を対象とする各種の法令・制度(特に、被害者・被災者支援関係、住宅関係など)について、最高裁判決の趣旨を踏まえて、同性カップルが対象から排除されていないかどうか、検討が行われることを望みたい。
当会は、今回の政府発表を踏まえた法の運用を注視するとともに、その意義を広く社会に周知啓発を進めることにより、一部法令で同性パートナーが事実婚関係と認められた意義を多くの当事者とともに噛み締め、連帯の力を確かめ合いたい。引き続き当会は、差別のない平等な権利保障の確立に向け、働きかけを継続していく所存である。」
今回新たに追加が決まった9つの法令のうち災害弔慰金について少しお伝えします。これは災害が原因で死亡したと認定された人の遺族に500万円を上限に弔慰金を支給する制度で(実施主体は市区町村で、都道府県と市区町村が4分の1ずつ、残りを国が負担。災害から一定期間が経った後に死亡した場合でも、避難生活での疲労やストレスが原因であるという因果関係が認定されれば、その遺族も支給対象になります)、事実婚のパートナーは対象だったのに同性パートナーは対象外とされてきました。これに対して世田谷区の上川区議が2019年に区議会で改善を求め、世田谷区が検討を進めることとなり、2022年4月、現行制度とは別に制度を設けるかたちで全国で初めて同性パートナーへの災害弔慰金の支給が実現しました。
今回、政府が33の法令で同性パートナーが事実婚相当であると認めたのは、名古屋の内山さんが犯罪被害者給付金支給をめぐる不平等に声を上げ、裁判を起こし、最高裁で見事に勝訴を勝ち取ったおかげです。もちろん、全国で同性パートナーシップ証明制度が実現し、同性カップルも公営住宅に入居できるようになったことや、LGBT法連合会の長年の活動や、Marriage For All Japanの輝かしい成果のおかげでもあるでしょう。
いろんなところで当事者やアライの方たちが声を上げ、平等な扱いを求めて闘ってきた結果、今日、犯給法や災害弔慰金や公営住宅法などで同性パートナーが事実婚相当であると認められたのです。法連合会の声明で述べられているように、その意義を多くのみなさんとともに噛み締め、連帯の力を確かめ合いたい気持ちです。
参考記事:
「同性パートナー」33の法令で事実上の婚姻関係に「含まれうる」(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000456554.html
三原じゅん子大臣「同性パートナーも婚姻同様」災害弔慰金など9法令にも適用 LGBTQ当事者の声は?(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/2199850
「社会保障、検討続けて」 120法令で同性対象外(共同通信)
https://news.jp/i/1346012994686255170?c=302675738515047521?c=302675738515047521
「同性パートナーも事実婚と同じ扱いに」災害弔慰金支給など33法令に拡大も、社会保障など120法令は除外(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/43968
同性パートナーの事実婚適用「負担だけ強いて保障しないのは差別」(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/355594eed387a924987a03262b2673d62ccf4961