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性的マイノリティの3人に1人が医療サービスの利用に困難を感じた経験があることが明らかに

 日本に住むLGBTQ+の方々の健康と医療ニーズについて調査を行ない、その結果を公表(見える化)し、現状と課題の分析を行なったうえで、医療現場への啓発や改善提案につなげる「PRISM調査」の中間報告発表会が16日に実施され、性的マイノリティのおよそ3人に1人が医療サービスの利用時に困難を感じていることなどが発表されました。

 同調査はぷれいす東京が「性の健康」をテーマに全国のLGBTQ+の当事者グループと協働するコンセントプロジェクトの一環として行なっているもので、日本に住むLGBTQ+の方々の健康と医療ニーズを調査し、その結果を公表(見える化)し、現状と課題の分析を行なったうえで、医療現場への啓発や改善提案につなげるものです。
 今回は、8月29日時点の全国約1100人の当事者の回答結果をまとめた中間報告発表会が開かれました。
 すべての都道府県から回答が寄せられ、そのうち東京からの回答が約27%を占めていました。また、回答者の約34%が「現在の性自認が、出生時に割り当てられた法律上の性別と異なる」方(トランスジェンダーやノンバイナリーの方)でした。
「性自認などを理由に医療サービスの利用に困難を感じたことがある」という人は全体で39.1%、トランスジェンダーやノンバイナリーの方では約62%に上りました。
 過去1年間で「医療を受ける必要があると感じたのに、実際に受けなかった」という人が37.5%に上りました。
 トランスジェンダーやノンバイナリーの方が医療機関を受診しようとする際、見た目の性別と保険証の性別(性別欄だけでなく名前から窺える性別も)が異なることや、医療従事者がトランスジェンダーへの理解があって偏見や差別なく真摯に診てくれるかどうかがわからず、不安を覚え、受診自体をためらってしまう実態が浮き彫りになったかたちです。
 同調査では、「問診票は男女二択で異性愛前提となっている」「プライバシーが守られず、カミングアウトを強いられることもある」といった声や、救急搬送されたり入院することになった際、同性パートナーが家族と扱われないことへの不安の声も上がったそうです。

 弁護士JPニュースによると、記者会見に臨んだ一般社団法人「にじいろドクターズ」理事の金久保祐介医師は、これまで国内で実施されてきた調査では、ゲイ・バイセクシュアル男性を主な対象とするものが多かった一方、PRISM調査はレズビアン・バイセクシュアル女性やトランスジェンダーを含む幅広い人々を対象にできていると評価しました。「現場で医療に携わっていると、LGBTQ+の人々が困っているという事例はよく聞く。ジェンダーに特化した医療を近くで受けられる、という人も少ない。また、『LGBTQ+のために医療をしたい』という医療従事者は増えているが、そのための十分な医療教育がない。PRISM調査は、日本の医療機関を『だれも取り残さないもの』にするための、大変貴重なデータになる」
 パーソナルヘルスクリニック横浜院・院長で産婦人科医師の池袋真氏は、月に数百人のトランスジェンダーやノンバイナリーの人々を診察しているそうですが、アウティングを恐れて通常の医療機関を受診できず、北海道や沖縄などから飛行機で東京まで受診にくる場合もあるそうです。また、美容医療や性感染症に関する診療科が男女で分かれていることが多い点も、トランスジェンダーやノンバイナリーの人々の受診のハードルを上げているといい、さらに乳がん・子宮頸がんなどの検診も受けづらいという問題があるそうです。親や医師から反対されたてホルモン療法を受けられず、インターネットを利用して自身でホルモン製剤を購入・服用し、副作用や合併症のリスクを負うケースがあるそうです。池袋氏は「ホルモン療法は医師による診察や医療従事者の介入が定期的に必要だ」と語り、医療へのアクセスのハードルを下げる必要があると訴えました。
 臨床心理士・公認心理師のみたらし加奈氏は、トランスジェンダーの人々の希死念慮の強さに触れ、その背景には社会情勢のほか医療現場における無理解の問題も影響していると指摘しました。精神科などの医療現場で主治医による診察の前に公認心理師などが予診を行なう際、患者に「主治医には(性自認を)言わないで」と頼まれるケースも少なくないそうです。「精神科医療では、患者と治療者(主治医)とで『治療同盟』が築けない間柄では、誤診や受診の中断につながるケースが多い」とのことです。

 調査には「医療機関でこのようなサービスや配慮があると受診しやすいと思うこと」という項目もあり、「LGBTQ+に関する知識があったり、教育を受けていたりする医療従事者がいる」「偏見や差別なく真摯(しんし)に接してくれる医療従事者がいる」がともに76%となりました。自由回答では、男女でリストバンドの色が分かれている病院に入院した際、戸籍性ではなく自認性の色を渡されたことや、見た目にそぐわない漢字の名前をひらがな表記にしてもらったことなど、病院側が配慮してくれた事例についても回答が寄せられたそうです。
 ぷれいす東京の生島さんは「意外にも、法律や制度が変わらない場合でも、一般の医療機関で対応できることがたくさんある」と、「レインボーノッツ」代表でオープンリー・レズビアンの五十嵐ゆりさんは、手術前の家族向け説明の機会の際に主治医から「どんなパートナーの方がいらっしゃるか楽しみにしていました」とポジティブな言葉をさりげなくかけられ、安心して受診できることの重要性を実感したと語りました。

 
 「PRISM調査」は今月末まで実施中です。まだ回答されていないLGBTQの方は、ぜひご協力をお願いいたします。
(調査項目は多岐にわたりますが、だいたい15分くらいで回答できます。例えば通勤やスキマ時間で回答していて中断を余儀なくされたとしても、同じデバイス(端末)であれば再開が可能です。当事者の方、お時間あるときに、ぜひ回答してみてください)


 
 参考記事;
「問診票は男女二択のみ」…性的マイノリティーの3人に1人が医療サービス利用に困難感じる(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/society/be4ca7582a8c4d8b9b5a2d5c3b21bb33

トランスジェンダーの人々「病院に行きづらい」 差別・偏見恐れ6割超が“困難”と回答…LGBTQ+「医療ニーズ」の実態とは(弁護士JPニュース)
https://www.ben54.jp/news/2681

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