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性の多様性を否定する那覇市議が当事者の児童生徒数を議会で質問…アウティングの懸念や抗議の声

 「性別は男と女で十分」などと性の多様性を否定する主張をしている那覇市の和田圭子市議(無所属)が12日の市議会で市内のトランスジェンダーの児童・生徒の数や増減を尋ねると通告したことをめぐり、市民グループや当事者団体が抗議しています。
 
 
 和田氏は那覇市議選に際して沖縄タイムスが実施した候補者アンケートで、LGBTQ施策について「性別は男と女で十分。子供たちに変な教育はしないでほしい。少子化を促進する法案には断固反対。性転換医療ビジネスの利権に注意」と回答するなど、非常に差別的な姿勢を鮮明にしていました。
 市議選は7月20日に行なわれ、和田氏はトップ当選を果たしました。
 現在、那覇市議会9月定例会が開かれていますが、和田市議は12日の一般質問で「LGBT理解増進法の子供達に及ぼす影響について」との項目で「拙速に制定されたこの法律が、未成年の子供達に及ぼす影響について心配がある」として、「現在、那覇市において、学校授業でLGBT教育が実施されている小学校、中学校は、何割あるのか伺う」「那覇市内の小学校・中学校において、現在トランスジェンダーの児童生徒を学校で把握している人数及び過去に把握した人数のデータがある場合は、推移も伺う」などといった質問を行なうことを通告しました(通告書はこちらでご覧いただけます。PDFです)
 
 沖縄タイムスは9月11日、「性別は男と女で十分」と多様な性の在り方を否定している和田市議が市内のトランスジェンダーの児童生徒数や増減を尋ねると通告したことについて、「専門家は狙い撃ちのような質問が当事者を不安にさせると懸念する」と報じました。答弁を担当する市教委は同紙の取材に対し、「デリケートな個人情報」だとして調査しない方針だと答えたそうです。また、(有料会員限定記事なので詳細は伏せますが)県内でLGBTQに関する講演などを行なっている当事者の方も、なぜトランスジェンダーに限って児童生徒数を把握したいのか、カミングアウトの強制につながるおそれもある、との懸念を示しました。

 翌12日の沖縄タイムスでは、市民グループ「沖縄カウンターズ」が「排除や偏見を助長する」として質問の取り下げを求める声明を市議会事務局に届け、和田市議が質問に立つ12日に市役所前で抗議のスタンディングを行なうことが報じられました。(報道にはありませんが、「沖縄から結婚の平等にYES!」実行委員長のはちさんもスタンディングに参加したそうです)
 声明では、トランスジェンダーの児童・生徒数を問う質問に関して、アウティングにつながる可能性や、個人の特定につながるリスク、プライバシーの侵害、当事者の子どもたちが安心して学んだり相談できる環境が損なわれる恐れが指摘されています。また、LGBT教育を実施する学校の校数を問う質問についても、炙り出しの意図が疑われる、LGBTQ教育の自由・専門性への干渉につながると批判されています。
 
 同紙の記事の「エキスパートEye」というコーナーでも、批判のコメントが寄せられていました。
 武蔵野美術大学美術館等での勤務経験があるライター/キュレーターの宮原ジェフリーさんは、「市が2015年に「性の多様性を尊重する都市・なは」宣言を行った姿勢と真っ向から対立します」「社会的少数者を矢面に立たせる発言に対して、議会と市民双方が声を上げ、行政の理念を再確認することが不可欠です。行政と議会がこれまで積み重ねてきた多様性尊重の取り組みを揺るがせにせず、むしろ一層強化することが、子どもたちの安心と地域社会の成熟につながるはずです」と述べています。
 また、スマートフォンアドバイザーのモバイルプリンスさんは、「この質問通告は、いわゆる「モット&ベイリー論法」と捉えることができます」と指摘したうえで「「性別は男と女で十分」と主張する政党と関係する政治家が、当事者を特定しうる問いを発するのは、当事者には「日本には日本人だけで十分」と言いながら外国ルーツかどうかを詮索されるのに似た恐怖として響きます」と述べています。

 11日にはTransgenderJapanも「和田圭子那覇市議会議員の9月定例会一般質問(2025年9月12日)に対する懸念と要請」と題する声明を発し、「子どもはアイデンティティを育む途上にある存在であり、明確な性自認や性的指向を子どもたちに外的動機づけによって表明させることは教育としては不適切である。当事者探しなどのアウティング被害に遭う危険性を考慮すれば、なおさら賛同しかねる。さらに、「子供たちに変な教育はしないでほしい」「逆に増えてしまう悪影響」などという言動をする和田氏の場合、トランスジェンダー児童生徒の経年人数変化のデータが提供されると、それを用いたLGBT教育バッシングを展開するであろうことは容易に予測される。和田氏の一般質問はその前提から内容に至るまでトランスジェンダーに対する差別的眼差しに貫かれていると言わざるを得ない」として、和田市議、市議会、市および市教委に対し、差別言説を広めないこと、差別言説への毅然とした対応、当事者の数の調査を行わないこと、LGBTQ+教育や性教育を実施する自由の保障などを求めています。
(なお、レインボーイベント特集でもお伝えしているように、11月開催予定の東京トランスマーチでは、5周年を記念してより盛大に開催すべく、クラウドファンディングを実施しています。よろしければご協力を)

 

参考記事:
トランスジェンダー児童生徒数を那覇市議会で質問へ 参政党公認の和田圭子氏 専門家懸念「人権脅かす」(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1667960
参政党の和田圭子那覇市議に抗議 トランスジェンダー児童生徒数に関する質問 市民グループら撤回要求(沖縄タイムス) 
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1668777

和田圭子那覇市議会議員の9月定例会一般質問(2025年9月12日)に対する懸念と要請(一般社団法人TransgenderJapan)
https://tgjp.jp/statement20250911/

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