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船橋市の図書館で中高生がセレクトしたLGBTQ関連本が展示中です
千葉県船橋市の船橋市中央図書館でLGBTQやジェンダーをテーマにした企画展「モノクロ〜世界を彩るカラフルの魔法〜」が開催中です。会場には、市内の中高生ら13人が選んだ本13冊が展示されています。
この企画はセクシュアリティに関する知識を深め、より話しやすい環境を作ることなどを狙いに、認定NPO法人JASH日本性の健康協会が主催するもので、今年で3回目です。中高生が中心になり、LGBTQについて知ってもらいたいことを語り合い、自ら本を選んでいることが特徴です。今年は『世界のLGBTQ+の歩き方:体験から文化、歴史、ナイトライフ、追悼まで』(原書房)、『境界を生きる 性と生のはざまで』(毎日新聞社)などが選ばれています。
今年は6月の東京プライドにJASHのユースメンバーがブース出展していて、絵具ワークショップで様々な人たちに思いを描いてもらったそうです。
中学2年生から高校3年生までのメンバーが参加した7月のキックオフミーティングで、今年のブックオフのタイトルやテーマを考え ました。「モノクロ〜世界を彩るカラフルの魔法〜」というテーマには「同じ色のモノクロの世界に、LGBTQを象徴とするカラフルな色が必要ではないか」という思いが込められています。モノクロでは全てが同じ色で探し物は見つからないから、いろんな色が必要なんだという言葉にみんなが深く共感して「モノクロ」をテーマにすることに決めたそうです。
ハフポストによると、担当者の方は「子どもたちが選んだ本を通して、LGBTQについて知ってもらうきっかけになれば」と話しているそうです。
「モノクロ〜世界を彩るカラフルの魔法〜」
展示期間:2025年8月1日(金)~31日(日)
会場:船橋市中央図書館(千葉県船橋市本町4-38-28 ライブ2000 2・3階)
開館時間:月~金 9:30-20:00、土日祝 9:30-17:00
図書館のLGBTQ関連の本といえば、アメリカの一部の州で図書館からLGBTQや人種関連の本が消えている(禁書にされている)ことが問題視されています。
2022年に「ゲイと言ってはいけない」法を制定したフロリダ州では、この法を根拠に保守派が「子どもにふさわしくない」内容の本を図書館から撤去するよう要求し、特に“露骨な性描写”や“暴力的表現”があるという理由でLGBTQ関連の本が標的になりました。同州では2021年7月から2023年12月にかけて5107冊が禁書扱いにされ、同州を含め11州が100冊以上を学校図書館などから撤去したといいます。(P!NKは2023年のフロリダ州でのコンサートで、同州で禁書とされた2000冊をコンサートの観客に無料配布したんだそう。素敵ですね!)
こうした禁書運動の中心にいるのは、全米に支部を持つ保守派団体「Moms for Liberty(自由を求めるママたち)」で、子どもがいつ性の多様性を学ぶのか、もしくは学ばなくてもよいのかを決めるのは「政府ではなく親だ」と訴えます。CNNが2023年に同団体を特集した際、インタビューに答えたコロラド州支部代表の女性は、より多くの子どもをゲイやトランスジェンダーにするための陰謀があると話し「教師や労働組合、わたしたちの大統領までもがこうした動きを後押ししている」と根拠を示さずに主張、「家族を破壊し、伝統的な保守の価値観を壊し、人々の考えを変えようとしている」などと語りました。
NY在住の堂本かおるさんによると、禁書ブームの出発点はコロナ禍にあります。保守派の親たちは、まずは長引くリモート・スタディに、学校再開後はマスク着用ルールに強く反発し、子の教育方針の決定権は州や学校でなく親にあるとする「親の権利 (parental right)」を訴えだしたのです。背景にはBlack Lives Matter運動の広がりがあります。保守派の白人はその勢いにおののき、自身の優越性と既得権の保持に傾きました。こうした流れから禁書推進グループは当初、黒人史をテーマとする本を禁書のターゲットとしていました。その後、LGBTQを取り上げた本も禁書の対象になります。福音派やカトリックなどの宗教右派や共和党の政治家もこの運動を支持し、第二次トランプ政権の誕生がその流れを後押ししました。
世の中には多様な人種・民族、多様な性、多様な宗教の人たちや障がいを持つ方などが共に暮らしていて、そのことを描いた絵本や本を図書館で読み、マイノリティの子どもたちが自己肯定感を高めたり、マジョリティの子どもたちが理解を深めたりすることは、重要な教育的効果をもたらすことは明白です。アメリカが残念な状況にあるなか(日本でも起こりつつある問題だと『プレジテント』は指摘しています)、日本の中学生や高校生が、どうしたらLGBTQへの理解を深めてもらえるかと真剣に考え、船橋市の図書館でこのような企画を実現しているのは、とても素晴らしいことです。希望が持てます。
参考記事:
【千葉県船橋市】公立図書館にて、学生ボランティアが『LGBTQ』や『ジェンダー』をテーマに選書するブックフェア「モノクロ〜世界を彩るカラフルの魔法〜」を本日8月1日より開催(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000129429.html
中高生が選んだ13冊の「LGBTQ」の本。船橋の展示に込められた思いとは(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_68a3d65be4b00feff7d0db86
アメリカでLGBTQや人種の本が続々禁書に 表現の自由はどこへ 違憲訴訟や対抗措置も(GLOBE+)
https://globe.asahi.com/article/15076421
「禁書」が広がるアメリカ、LGBTQ関連本を図書館から撤去 保守派「価値観の押しつけ」と主張、反対派は「多様性の尊重が重要」と批判(共同通信)
https://www.47news.jp/11566490.html
トランプ政権下「古き良きアメリカ」を目指す保守派の「禁書運動」が子どもたちの絵本にまで及ぶ深刻実態(プレジデント)
https://president.jp/articles/-/98806
子ども向けの本が図書館、学校から消えていく…多様性を唱えつつ禁書運動が広がるアメリカで起きていること(プレジデント)
https://president.jp/articles/-/98860