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那覇市のLGBTQ支援宣言から10年が経ちました
今年は同性パートナーシップ証明制度10周年イヤーですが(11月で渋谷区・世田谷区での施行から10年を迎えます)、那覇市が2015年7月に「性の多様性を尊重する都市・なは」宣言(レインボーなは宣言)を発表してから10年の節目でもあります。『沖縄タイムス』が「なは女性センター」を運営する平和交流・男女参画課の與那覇るみ担当副参事に、この10年の成果や今後の課題についてインタビューした記事が掲載され、同性パートナーシップ証明制度施行10周年イヤーとも響き合うような、行政(都道府県や市区町村)のこの10年余りの取組みを総括し、象徴するような記事でもあると感じられました。
與那覇氏によると、那覇市は1997年以降、市民向けに性的マイノリティに関する啓発講座を実施してきました(編注:1997年といえば、府中青年の家裁判で、行政当局は同性愛者をも視野に入れたきめ細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利を十分に擁護することが要請されている、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されないという画期的な判決が出た年です。まだ性的マイノリティへの差別禁止を謳う条例などはどこにもなく(2001年の堺市が最初)、那覇市の取組みはものすごく先進的だったと言えます)
2013年に大阪市淀川区がLGBT支援宣言を発し、職員への研修、相談窓口の設置、市民への啓発、コミュニティ支援などの具体的な支援策を実施したのに続き、全国で2番目に那覇市が2015年7月19日、レインボーなは宣言を発しました。翌2016年7月8日には、全国5例目となる「パートナーシップ登録」制度を開始しました。
與那覇氏は「ピンクドット沖縄と協力して、イベント内で市の宣言とパートナーシップ登録証明書を交付できたのも大きかった」と述懐しています(ピンクドット沖縄は2012年から那覇市と共催で開催されていました。開催の経緯について砂川秀樹さんが語ったインタビュー記事がこちらになります)。7月15日現在、パートナーシップ登録は80件、ファミリーシップ登録は3件だそうです。「『那覇、いいよね』と転入した人たちもいる」とのこと。
「市が性的少数者のカップルにパートナー・ファミリーシップの証明書を出すが、実際に機能させるには企業の理解と協力が欠かせない。パートナーやその家族の介護休暇、慶弔休暇と見舞金などを異性婚と同様に受けられるかは企業の判断になる」「パートナーシップ制度の利用は当事者にとって職場に自分の性的指向を伝えることになる。企業には情報の扱いに気を配った体制を整えてほしい。特に性的指向を同意なく公表されるアウティングは許されない。そういう研修が必要だが、市はマンパワーが足りておらず、現状は当事者団体が企業から要請を受けて行っているケースが多い」とのことです。
行政としての今後の課題については、「まだ地域で活動する小さな団体への声かけができておらず、情報収集が足りない。隔月で開催するレインボー交流会を通しネットワークを広げていく」と語られています。「なは女性センターはLGBTQの電話相談を毎月コンスタンスに受けているが、いまだに女性だけの取り組みを行う施設と勘違いされている。性の多様性について取り組む団体の集約的な場所に発展させたい」
那覇市が性の多様性条例を制定へ、沖縄県内で3例目とのニュースでお伝えしたように、那覇市は市条例の制定を目指しています。
「市条例が制定できれば『性の多様性を応援します、不当な差別は許しません』など市の姿勢をより明確にできる。条例なので議会の承認が必要。議論を深めていきたい。本年度はパブリックコメント、来年度に議会提出・制定を目指す」
全国的に見てもかなり早い時期から性的マイノリティ支援の取組みを進めてきた那覇市。LGBTQ支援宣言や同性パートナーシップ証明制度もいち早く実施してきましたし、ピンクドット沖縄というプライドイベントを共催しながら、こうした宣言の発出や同性結婚式での証明書の授与というシンボリックなイベントも行ない、市民や全国の人たちにその取組みを印象づけてきました。企業の体制がまだ不十分だとも言われていますが、ホテルパームロイヤルNAHAやカフーリゾートなどのアライ企業の支援活動などもあって(パームロイヤルの高倉さんは企業向けに講演なども行なっています)、この10年の間に沖縄の社会(世間)もずいぶん変わってきたのではないでしょうか。以前は不可能だと見なされていた国際通りでのプライドパレードも、2022年から開催されていて、そのことも世間(LGBTQの受容)の変化を象徴しています。官・民・コミュニティが一体となってLGBTQフレンドリーな街をつくっていくというのが理想的な流れですが、那覇市ではそれが最も理想的に実現しているように感じられます。
参考記事:
性の多様性を尊重する「レインボーなは宣言」から10年 LGBTQ当事者の背中を後押し 担当職員に成果と課題を聞く(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1638252