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香港のトランス男性が公衆トイレ法をめぐる訴訟で勝訴
香港の高等法院(高等裁判所)は23日、トランスジェンダーが自認する性別の公衆トイレを使用することを犯罪と規定する香港の法律が不当だと訴えたトランス男性を支持し、法律の一部を無効であると認めました。
この訴訟は、Kと呼ばれるトランス男性が起こしたものです。K氏は性別違和の治療をしており、その一環として実生活体験(Real Life Experience)治療と呼ばれる性自認に沿った実生活での体験を医師から勧められていました。その治療の中に男性用公衆トイレの使用も含まれていましたが、K氏の香港IDカードの性別欄は女性のままであり(性別適合手術を待ちながらホルモン治療を受けている段階でした)、男性用公衆トイレを使った場合、2000香港ドル(約3万7000円)以下の罰金を科される可能性がありました。K氏は、これが平等、プライバシー、そして差別を受けない権利の侵害に当たると訴えました。
高等法院のラッセル・コールマン判事は、K氏の主張に同意し、公衆トイレに関する現行法のうちの2つの条項を無効とし、政府に1年以内に改正するよう命じました。判事は「多くのトランスジェンダーの人々は、恐怖、嫌がらせの脅威、そして性自認が無効化または損なわれるのを避けるため、公衆トイレを全く利用しないことを選択している」と指摘し、K氏の治療には自認する性別に合った公衆トイレの使用を含む「実生活の経験」が必要だったと述べました。コールマン判事はまた、この判決は、政府が公衆トイレをめぐる法廷闘争において、原告側の主張をほぼ全面的に認めたことを意味すると記しています。
K氏は「今日、性別移行途中である私のトランスの友人たちと私は晴れて脅威や拒絶に晒されることなく公衆トイレを利用できるようになりました」と声明で述べました。「これは香港がよりジェンダーフレンドリーな環境になっていくための前向きな一歩です。そして香港の司法システムが将来、よりインクルーシブなものになっていくことを望みます」
香港のトランスユースサポート団体「Quarks」は、今回の裁定が「トランスジェンダーの権利を法的に認めたというだけでなく、香港の人権の発展に向けた大きな前進でもあります」と述べています。
香港では、香港終審法院(最高裁)が2023年9月、同性カップルの権利を保障する法的枠組がないのは違憲であり、政府は2年以内に同性パートナー法を整備をしなくてはいけないとの判決を下し、今月、政府が同性パートナー法案を議会に提出するところまで行っていますが、トランスジェンダーに関しても、過去10年間で数々の勝訴を収めてきました。
2023年2月、香港終審法院は、トランスジェンダーがIDカードの性別を変更するのに性別適合手術の完了を要件としているのは権利の侵害にあたるという判決を下し、政府は昨年4月、性別変更を認める対応を実施しました。
米国ではトランス女性の五輪出場が禁止されることになり、ロシアでは「LGBT」と検索しただけで罰金を科される法案が下院で可決されるなど、暗澹たる気持ちにさせられる日でしたが、香港からこのような大きな前進のニュースが届いたのは本当に喜ばしいことでした。
参考記事:
香港裁判所、トランスジェンダーが性自認に沿ったトイレを使用する権利を支持(ロイター)
https://jp.reuters.com/world/china/H3JQZCY2XBO6HKFCCR3YUPILIY-2025-07-23/
香港のトランス男性、公衆トイレ法めぐる訴訟で勝訴(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/3590032
Court strikes down Hong Kong’s transgender bathroom ban(Q NEWS)
https://qnews.com.au/court-strikes-down-hong-kongs-transgender-bathroom-ban/