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【参院選】ジェンダー平等や同性婚に関する記事いろいろ
参院選の選挙ポスターにスマホをかざすと候補者が同性婚と選択的夫婦別姓に賛成かどうかがわかりますとのニュースでもお伝えしたように、国政選挙に際し、主要メディアの多くが同性婚の実現を重要な社会的課題(イシュー)として政党・候補者アンケートに盛り込むようになり、争点の一つになった感があります。政党・候補者アンケート以外でも、(選択的夫婦別姓制度を試金石とする)ジェンダー平等のこととあわせて新聞社が社説などで触れているほか、同性カップルをフィーチャーした記事なども掲載されています。参院選とからめたジェンダー平等や同性婚に関するメディア報道をまとめてお伝えします。
東京新聞の7月13日の記事「参院選千葉 同性婚と選択的別姓「セットで実現すべきだ」 同性カップルは訴える 「選べないことは人権問題」」では、船橋市に住む斉藤さんと都内在住の中島さん(いずれも仮名)のカップルを取り上げています。お二人は30代で、パートナーシップ宣誓はしていますが、中島さんの職場に近い都内で同居を考えたときに、単独名義の契約で選べる物件が(価格の高騰もあって)少ないが、収入を合算して入居審査を受けたりペアローンを組んだりするのは容易ではなく、同性カップルの入居を嫌がる大家さんもいて、異性カップルならスムーズにできることが、同性カップルには認められていなかったり難しかったりすることを実感したといいます。パートナーシップ宣誓は法的効力がなく、相続などの権利も与えられないため、「老後が不安」と語ります。中島さんは、もし同性婚が認められても、職場の人全てにカムアウトしているわけではなく、名字が変わることがアウティングにもつながりかねないため、「別姓が認められないと結婚は難しい」と感じています。お二人は選択的夫婦別姓の制度が整ったうえで「法的に認められた完全な結婚がしたい」と語っています。
同じ東京新聞の7月15日の記事「「結婚したいと思う全員ができる世界になったら」 同性婚の法制化を待ち望むカップルたちが見守る参院選」は、リアルな当事者の声を伝えています。
渋谷区在住の会社役員の女性(35歳)は「人権を守る人を国会に―」と願っています。きょうだいの結婚式前夜の食事会の後、親族の男性が「俺はわかんないし、認められないな」と言っていたと知り、「認めるとか認めないとか、その考え方自体が暴力的だ」と感じたそうです。Marriage For All Japanの調査で今回の参院選候補者のうち同性婚の法制化に賛成する人は44%しかおらず、「同性婚に反対」と明記する政党もあることに「自分もダメージを受けるけど、性のあり方に悩む若い子たちが聞いたら『自分は反対される存在なんだ』と思ってしまう」といいます。練馬区在住のゲイの会社員の方(29歳)は、「結婚してるの?」と聞かれたときに「結婚してないですよ。したいと思う全員が結婚できる世界だったらいいですよね」と返すようにしています。参院選では「同性婚の賛否を争点と考える人が増えてほしい」と願っています。
熊本日日新聞の7月16日の記事「「ばれないためのうそに、心に傷が付く…」 同性カップル「法的な家族になりたい」【2025年参院選 「10代の目、20代の声」】」は、20代の男性カップルをフィーチャーしています。旅行しても、引越しを検討しても「男女であれば必要のない気苦労は数え切れない」といいます。お二人は「病気やけがなど、もしもの時に真っ先に連絡を受けてサポートできる法的な家族になりたい」と語り、参院選では同性婚の実現に向けて票を投じたいと思っています。記事は「声は小さくても苦しんでいる当事者は確かに存在している。その小さな声を、政治に届けたい。」と結ばれています。
TBSの7月15日のニュースでは、茨城の公立高校で3年生に向けて政治の知識や考え方を深める「主権者教育」の授業が行なわれ、投票権がある18歳が実際に期日前投票を行なったりする様子が報じられましたが、参院選で重視するテーマについて班ごとに話すなかで同性婚や夫婦別姓を挙げた生徒さんもいたのが印象的でした。
ハフポスト日本版では、Marriage For All Japanの調査結果をもとに、婚姻平等(同性婚)に賛成する議員が多い政党・少ない政党はどこかを詳しく紹介し、同法人の「今度の選挙で選ばれる議員の任期は6年。結婚の自由をすべての人に訴訟の最高裁判決が出る時に国会議員です。判決をどう国会で法律に反映させるか、その時の国会議員が重要」とのコメントを紹介しています。
オルタナでは、各政党のサステナビリティ領域(SDGs)に関するスタンスを解説する記事の3回目で同性婚・夫婦別姓を取り上げています。Marriage For All Japanの調査結果などをもとに、与党/野党ではなく、保守/リベラルの対立軸が鮮明になったと分析していました。
その他、朝日新聞のジェンダー関連の記事や、東京新聞(および中日新聞)、京都新聞の社説などでは、全国の五つの高裁で同性婚を認めないのは違憲だとの判決が下り、立法措置を迫られていることや、LGBTQ差別解消法の制定を野党の多くが支持している(一部反対している政党もある)といった言及もありました。
来年には「結婚の自由をすべての人に」訴訟の最高裁判断が下ると見られ、ほぼ違憲判決が出ることは間違いないと見られていますが、それを受けて国会が速やかに民法を改正し、同性婚の法制化が実現するとは限らず、強固に同性婚に反対する政党が国会で多数を占めていれば、法改正を渋り、先送りにする可能性が高いです(2023年に最高裁判決が出た性同一性障害特例法の要件も、まだ改正がなされていません)(ちなみにLGBT理解増進法の基本計画・指針もまだ策定されていません)。チェック機能を持つ参議院においてLGBTQに支援的な政党が多数を占めるかどうかは非常に重要です。いくつものメディアがそのことを理解し、参院選での投票先選びにおいて重要だと後押ししてくれているのは頼もしい限りです。
一方、今回の参院選では、あからさまに外国人を排斥する言説のことが問題視されており、8日には外国人の人権や難民問題に取り組む8団体が「外国人が優遇されているというのは全く根拠のないデマ」で「政府、国会は人種差別撤廃条約に基づき、人種差別を禁止し終了させる義務がある」とする緊急共同声明を発表(詳細はこちら)、15日には日本ペンクラブが「このまま社会が壊れていくのを見過ごすことはできない」と排外主張を批判する声明を発表しました。極めて異例の事態です。
こうした選挙運動を利用したヘイトスピーチに対し、各地で抗議デモが行なわれています(LGBTQの人たちも参加しています)。前橋では、脳性まひがあり車椅子で生活する若い方が呼びかけ、スタンディングデモを行なったそうです。
松岡宗嗣さんは16日、『GQ』誌に「生活の苦しさは外国人のせいなのか?参院選で広がる排外主義を考える」と寄稿し、外国人が増えて治安が悪くなっている、生活保護が増え、医療保険にタダ乗りして、外国人留学生ばかり優遇されて、日本の土地は買い占められ、日本人の労働も奪われ、このままでは日本が危ない、といったSNS上の言説に一つひとつ反証したうえで、「物価高や賃金が上がらないことによる生活の困難は、経済政策の問題で外国人のせいではない。しかし、不安のはけ口として外国人などに責任が押し付けられている」「外国人を追い出しても日本社会が良くなるわけではない」「自国第一主義の考えは、ナチスドイツを生み出した」「排外主義の言葉の裏には、排除されるのは外国人だけでなく、次は自分自身かもしれないという「排除のドミノ」が隠れている」「人種や民族への差別、優生思想、性差別の考えは「高齢の女性には子どもは産めない」「終末期の延命医療費の全額自己負担化」「LGBTなんかいらない」といった発言に共通する」と指摘し、問題の本質を的確に説明しています。
ゲイのYouTuber・かずえちゃんもXで「不安を煽ることで誰かの人権を奪うような行為は、決して許されることではありません」「どんな属性であっても、すべての人が互いの人権を尊重し合い、共に生きられる社会を」と表明しています。
保守派と目される前東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏ですら「カルト的、陰謀論的な排外主義政党が支持を拡大」「この危険な政党に拍手喝采する大衆は、ナチスのプロパガンダを信じてヒトラーに政権をとらせたドイツ人と同じだ。第三次世界大戦前夜のような嫌な空気が漂っている」「「『ユダヤ人のせいで皆さんの生活が苦しいのだ』、ヒトラーは、勤め帰りの労働者にこう街頭演説で呼びかけた。そして、政権をとり、ユダヤ人を虐殺した。同じような主張をしている日本の政党がいる。ドイツも自由で民主的な選挙でナチスを政権に押し上げた。歴史を学ばない国は滅びる」と警鐘を鳴らしています。
憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活や幸福追求の権利、(婚姻平等やジェンダー平等を含む)法の下の平等などの理念に則り、人びとの幸せのために働く議員が多数を占める参議院になってほしいですね(というか、そんなあらゆる政治家がやるべき当たり前のことすら危うくなってるのが本当に深刻です)
参考記事:
参院選千葉 同性婚と選択的別姓「セットで実現すべきだ」 同性カップルは訴える 「選べないことは人権問題」(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/420513
「結婚したいと思う全員ができる世界になったら」 同性婚の法制化を待ち望むカップルたちが見守る参院選(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/420820
「ばれないためのうそに、心に傷が付く…」 同性カップル「法的な家族になりたい」【2025年参院選 「10代の目、20代の声」】(熊本日日新聞)
https://kumanichi.com/articles/1829583
参議院選挙の「期日前投票」前回より増加 若者の投票率向上に必要なことは?【Nスタ解説】【選挙の日、そのまえに】(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2047720
参院選、「結婚の平等」に賛成する候補者は43%。自民党や参政党は何割?(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_686c68dbe4b0dd2148c65d4e
参院選で確認したい各党の政策③同性婚・夫婦別姓(オルタナ)
https://www.alterna.co.jp/158308/
(2025参院選 ニッポンの現在地:4)ジェンダー 選択的夫婦別姓、届かぬ思い(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16253783.html
<社説>’25 参院選 ジェンダー平等 生きづらさ、なくす選択(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/419554
社説:ジェンダー政策 人権尊重の視点から進めよ(京都新聞)
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1514962
「差別に投票しない」 参院選での発言に市民らデモ 前橋(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250715/k00/00m/040/322000c
生活の苦しさは外国人のせいなのか?参院選で広がる排外主義を考える──連載:松岡宗嗣の時事コラム(GQ)
https://www.gqjapan.jp/article/20250716-soshi-matsuoka-column
舛添要一氏「歴史を学ばない国は滅びる」 ナチスに触れ、排外主義政党の支持拡大に警鐘(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202507140000578.html