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世界各地でバックラッシュが強まるなか「PRIDE」パレードが開催されました
6月29日、ニューヨークやサンフランシスコ、シカゴなど全米各地でプライドパレードが開催されました。米国ではDEI(多様性、公平性、包摂性)を敵視するトランプ政権2期目の発足後初めての開催で、参加者らは「攻撃には誇りを持って抵抗する」「私たちは分断されない」などと訴えました。
今年のプライドは、トランプ大統領がトランスジェンダーの人権を大きく後退させたり、企業へのDEI縮小・撤廃の圧力が強まるなかでの開催となりました。
NYC PRIDEの主催団体は「私たちのコミュニティが直面する攻撃にPRIDEを持って抵抗する」との姿勢を強調し、約100万人の市民が参加者に「PRIDE! PRIDE!」と声援を送り、「時を戻させない」と声を上げました。沿道では「トランスの子どもたちを守れ」「私たちは分断されない」などと書かれたボードを手に声援を送る人たちもいました。
今年の企業協賛金は目標を75万ドル(約1億800万円)下回ったそうですが、それでも巨大なフロートの出走を継続したMacy’sやKiehl’s、航空会社やホテル、ヘルスケア企業のフロートには大きな声援が飛んだそうです。「差別とヘイトに抵抗する看護士」「トランス差別は許さない」「移民LGBTQ+」といったグループやプラカードにも大きな声援が送られました。
ただ、パレードに参加したトランスジェンダー女性は以前よりも「恐怖が増したように感じる」と話していたそうです。
実際に、マーチの後、約1万人の参加者が集まっていたワシントン・スクエア・パークで上半身裸の男性がクマ撃退用催涙スプレーを撒く事件が起き、目の痛みを訴えた人々が病院に運ばれたといいます。
また、複数のメディアが報じているように、「ストーンウォール・イン」でこの日、「プライドが始まった場所を祝う」イベントが正午から翌朝4時まで開催される予定でしたが、22時過ぎ、「ストーンウォール・イン」のすぐ近くで発砲事件が起こりました。テレビ朝日によると、16歳の少女が口論の末、16歳と17歳の少女に発砲したとのことです。NYPDによると、17歳の少女は脚を撃たれたものの、容体は安定しています。16歳の少女は頭を撃たれ、重体です。犯人は逃走し、警察はまだ容疑者を特定できていないため、この事件が果たしてヘイトクライムなのかどうかは「捜査が進まないと何も言えない」とのことです。ニューヨーク市のエリック・アダムズ市長は「今夜、プライドの祝賀が終わりかけた頃にストーンウォール・イン付近で発砲事件があったことを知り、心が痛む。多様なLGBTQ+コミュニティの人々を称え、喜びを分かち合うべき時期に、こうした事件が起きるのは本当に痛ましい」とXに投稿し、また、『Advocate』誌によると、トランスジェンダーの権利擁護団体「Christopher Street Project」は、「今夜、ストーンウォール・イン前で起こった発砲事件の被害者とその家族のことを想い、胸を痛めています。さらなる情報を待ってはいますが、私たちが強調したいのは、クィアやトランスの人々に対するこのような許せない暴力は、ヘイトを煽る者たちが責任を負わなければならないということです。私たちは公正、安全、LGBTQ+の尊厳があらゆる場所で保障されることを要求します」との声明を発しました。
世界有数のLGBTQコミュニティの結束力の強さを誇るサンフランシスコでは、参加者と観衆が声を合わせて「ノー・トランプ」とシュプレヒコールを上げました。
時事通信によると、サンフランシスコプライドでも企業協賛が減っていて、ラスベガスから訪れたオードリー・リギンズさんは「彼らは本当の支援者ではなかった。金もうけのためにやっていたのか」と失望感をあらわにし、「トランプは憎悪をあおり立てて喜んでいる」と憤ったそうです。
1970年にNYC、LA、サンフランシスコ、シカゴでプライドパレードが初開催されてから今年で55周年を迎えました。50周年はコロナ禍でほぼ全てのプライドが中止となったので、本当は今年が節目を祝うタイミングだったのではないでしょうか。しかし、今年のプライドは、催涙スプレーが撒かれたり、(まだヘイトクライムと決まったわけではありませんので憶測で物を言うことは慎まなくてはいけませんが)「プライドが始まった場所」であるストーンウォール・インの付近で発砲事件が起こり、(おそらく当事者か支援者の)少女が負傷するという、本当に残念な展開になりました。多くの方たちがショックを受け、憤ったり悲しんだりしているのではないかと思われます。早く捜査が進み、事件が解明されることを期待するとともに、米国のLGBTQコミュニティがヘイトに負けず、連帯を強め、前進していけるよう、エールを送ります。
一方、今年3月にプライドパレード禁止法が可決されたハンガリーでは、オルバン政権による禁止措置にもかかわらず、過去最多となる18万〜20万人もの人々がブダペストに集結し、猛暑の中、歌い踊りながら行進したそうです。昨年のプライドパレードの参加者は3万5000人ほどでしたが、オルバンの禁止措置に抗して参加を決めたという方や、ハンガリーのLGBTQを支援するために欧州各地から集まった方たちも多く、参加者がふくれあがったようです。BBCによると、パレードではオルバン首相をからかうような内容の横断幕やプラカードが目立ち、「オルバン氏が過去15年間にわたり「敵」と見なしてきた人々による、平和的な「復讐」のように思えた」とのことです。ある手作りのプラカードには「歴史の授業で独裁を見抜く力は身につけた。わざわざ見せてくれなくてもいいよ、ヴィク!」と、また別のプラカードには「もうファシズムにはうんざり」と書かれていたそうです。オルバン首相の顔に鮮やかなアイシャドウと口紅を施したTシャツも会場の至るところで見られました。
AFPによると、今年66歳になる参加者は「私はゲイであることを誇りに思うし、政府が私たちを抑え込もうとしていることが非常に怖い」「こんなに多くの人がいることにとても驚き、泣きたくなる」と語ったそうです。
28日のパレードでは、警察の対応は抑制的だったものの、パレードに先立ち設置された仮設カメラや警察車両の搭載カメラがイベント全体を記録していたそうです。3月に制定されたプライドパレード禁止法では、警察に顔認識ソフトを使用する権限を与えており、パレード参加者には14ポンド(約2700円)から430ポンド(約8万3000円)の罰金が科される可能性があるといいます。そのような危険を承知のうえで、18万〜20万人もの人々はパレードに参加したのです。
親政府系メディアはこぞってパレードを非難しました。『マジャル・ネムゼト』紙は「ブダペスト・プライドで混乱」という見出しを掲げ、「悪名高い気候活動家で、最近ではテロリスト支持者ともされるグレタ・トゥーンベリが、インスタグラムに『ブダペスト・プライドに参加している』と投稿した」と書き立てました(なお、グレタさんはインスタグラムの投稿で「ファシストは決して愛を禁止できない」と書いています)
地元メディアによると、政府に抗して市の行事としてパレード開催を宣言した(が、ハンガリー警察はパレードの開催申請を認めなかった)ブダペストのカラーチョニ市長は28日の演説で、「禁止されたようには見えないだろう!」と笑顔で語りかけました。「むしろ私たちは、肥大した憎しみの権力に対して、平和的かつ自由に、堂々たるショーを披露しているように見える。このメッセージは明確だ。彼らには我々を支配する力はない!」
世界を勇気づけるような素晴らしいニュースでした。拍手!
トルコのイスタンブールで29日、禁止されているプライドマーチを行なおうとして50人以上が警察に逮捕されました。
イスタンブール弁護士会人権センターは「本日のイスタンブールプライドマーチに先立ち、当会人権センターのメンバーを含む弁護士4人と計50人以上が、恣意的で不当かつ違法な拘束により自由を奪われた」と非難しました。
イスタンブール県知事のダブト・ギュル氏は前日に「社会の平和、家族の構造、道徳的価値観を損なうこうした呼びかけは禁止されている」「公共の秩序を脅かす集会や行進は容認されない」と警告していました。会場のタクシム広場は29日早朝から警察によって封鎖されていたそうです。
イスタンブールではかつて、イスラム主要国としては唯一のプライドパレードが開催され、2013年には数万人規模で盛り上がりを見せていました。しかし、強権的なエルドアン大統領がパレードへの規制を強め、2015年にはついに機動隊が催涙ガスやゴム弾、放水によって参加者らを強制的に排除し、以降、毎年弾圧が続いています。それでもあきらめることなく、パレードを開催しようとする人々が集まって抵抗を続けています。もう10年もの間、毎年…。これがPRIDEというものです。
トルコのLGBTQやアライの方たちが逮捕されることなく安心してパレードできるようになることを願わずにはいられません。
参考記事:
ニューヨークでプライド・マーチ トランプ政権からの報復恐れスポンサー撤退相次ぐ(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/894430
NYで性的少数者ら行進 政権に不安も「時戻すな」(共同通信)
https://nordot.app/1312142925743948163?c=302675738515047521?c=302675738515047521
米各地で「プライド・パレード」 トランプ氏の圧力に怒りの声(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=202506300014
NYプライドマーチ「誇り持ち抵抗」 米政権圧力でスポンサー離れも(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250630/k00/00m/030/043000c
全米各地で「プライドマーチ」 DEI敵視の米政権に「抵抗」示す(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250630/k00/00m/030/208000c
米NY 性的マイノリティパレード後に2人が銃撃される 1人は頭部撃たれ重体(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2012124
NYで16歳少女がLGBTQパレード後に口論の少女2人を銃撃 頭撃たれ1人が重体(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000436336.html
LGBTQのパレード後に…10代の少女2人が銃で撃たれ1人重体 容疑者の行方わからず 米NY(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/international/4393f1b18cd249878d851943da3e3ed1
16-year-old girl in critical condition after shooting near Stonewall Inn(Advocate)
https://www.advocate.com/crime/stonewall-shooting-two-teenage-girls
ゲイ権利運動の聖地「ストーンウォール」で銃撃事件が発生...LGBTQ+プライドパレード後に何があったのか(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/07/558657.php
移民など多様性訴えに100万人が興奮 企業スポンサーは減少、NYのプライド・マーチに密着(DAILY SUN NYC)
https://www.dailysunny.com/2025/06/30/nynews250630-3/
LGBTパレード数万人参加 政府は禁止、EU支持 ハンガリー(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025062900061
10万人がプライドパレード参加 禁止法に「抗議」 ハンガリー(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20250629/k00/00m/030/202000c
ハンガリーで性的少数者の権利求め行進 政権に反発、10万人規模に(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/AST6Y25KDT6YUHBI003M.html
ブダペストの「プライド・パレード」に数十万人参加、オルバン首相の禁止措置に反発(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/articles/cev04vwj2zko
LGBTQパレード「EUが仕組んだ」、ハンガリーのオルバン首相が非難(ロイター)
https://jp.reuters.com/world/europe/EXE3F2SKQJNL5K4VAS72AFRQ2U-2025-06-30/
ハンガリー最大のプライドパレード開催 オルバン政権に反発(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3586054
禁止のプライドパレード直前に逮捕、50人以上 トルコ(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3586227