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トランスジェンダーの弁護士を脅迫した男に実刑判決

 トランスジェンダーの仲岡しゅん弁護士(大阪弁護士会)に殺害予告のメッセージを送ったとして、脅迫罪に問われた小野勝信被告(38歳、東京都品川区)に対し、大阪地裁(角田康洋裁判官)は11日、懲役10ヵ月(求刑懲役1年6カ月)の実刑判決を言い渡しました。 

 判決によると、小野被告は昨年6月3日~5日に計9回、仲岡弁護士が所属する法律事務所のホームページの問い合わせフォームから「男のくせに女のフリをしている」などと中傷するメールを送信し、「メッタ刺しにして殺害する」と脅迫しました。検察は「小野被告は、かねてからジェンダー論争に関心を持ちLGBT法案に関する仲岡弁護士の主張をネット上で見て、その思考を変更させるには暴力で押さえつけるしかないと考え脅迫した」と指摘していました。角田裁判官は「被害者がLGBTに関し、被告人と異なる感情を持っているという身勝手な考えにもとづく犯行で、単発ではなく9回にわたり、生命を脅かす告知をしていて悪質。被害者に与えた恐怖は大きい」として、前科なども踏まえ、実刑が妥当と結論づけました。
 最後に角田裁判官は被告に対し「あなたがお話しした『二度としない』という気持ちを忘れずにいてください」と語りかけ、被告は「はい」とうなずいたそうです。

 仲岡弁護士は判決を受けて、「既に示談しているので、今さら犯人を責める気はありませんが、法廷で語られた動機は、「LGBT法で変態が女性スペースに入ってくるのはデマだ」という私の主張を暴力で押さえつけたかったとのこと。そういう誤った「議論」を煽ってきたのは誰なのか、考える必要がありますね」とX(Twitter)でコメントしています。
 

 昨今の「LGBT法ができると男性器のついたトランス女性が女湯に」といったデマを信じた被告が、それをデマだと説く当事者の弁護士に対して憎悪(フォビア)を募らせ、暴力的に押さえつけようとしてこのような恐ろしい脅迫事件に至りました。司法もそれを「身勝手な考え」だと認め、脅迫の罪を重く見て実刑判決を下しました。
 仲岡弁護士はきちんと被害届を出し、公にしたので、犯人も逮捕され、このように適正に裁かれることにつながりましたが、もしかしたら全国に、同じように脅迫を受けたり、それに近い言葉の暴力を浴びたりしながら、泣き寝入りしている方たちもいらっしゃるかもしれません。
 SNS上でのトランスジェンダーへの中傷に対しても昨年、慰謝料の支払いを命じる判決が出ていますし、つい先ほど、LGBTQユースの居場所づくり活動に対する悪質な誹謗中傷投稿について法的措置が可能になったというお知らせもありました。被害を受けた当事者の方や、そのような中傷を見聞きした方は、泣き寝入りしたり諦めたりせず、誰かに相談しましょう。(法務省が案内する相談窓口はこちら。虹色ダイバーシティが紹介している報告先一覧はこちら
 
 
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https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2023/6/4.html
SNSでトランス女性弁護士への中傷を繰り返していた女性に慰謝料80万円の支払いを命じる判決
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2023/08/5.html
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https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/news/2023/12/26.html


  
参考記事:
【速報】「めった刺しにしてやる」トランスジェンダー公表の弁護士に殺害予告 男に懲役10カ月の実刑判決 「裁判の中で『二度としない』と言ったことを忘れないでください」と裁判官(関テレ)
https://www.fnn.jp/articles/-/640991
トランスジェンダー公表の弁護士に殺害予告、男に実刑判決 大阪地裁(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS1B4R2PS19PTIL00V.html

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