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トランスジェンダーの弁護士を脅迫した男に懲役1年6ヵ月が求刑

 トランスジェンダーの仲岡しゅん弁護士(大阪弁護士会)に殺害を予告するメッセージを送ったとして脅迫罪に問われた小野勝信被告(38歳、東京都品川区)の初公判が21日、大阪地裁で行なわれました。被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、検察側は懲役1年6ヵ月を求刑して即日結審しました。判決は来年1月11日に言い渡されます。


 今年6月(プライド月間)、性的マイノリティの支援に携わっているトランス女性の仲岡しゅん弁護士が、「男のくせに女のフリをしている」「メッタ刺しにして殺害する」などと中傷するメールを送られ、脅迫を受けました。この事件を受けて、当事者団体だけでなく、自由法曹団や大阪弁護士会など全国20超の弁護士団体が非難声明を発する異例の事態となっています(詳細はこちら
 仲岡弁護士は警察に被害届を出し、10月に容疑者として品川区在住の38歳の男性が逮捕されました。
 
 そして12月21日、大阪地裁で初公判が行なわれました。
 小野被告は「間違いありません」と起訴内容を認めました。
 その後の冒頭陳述で検察は、「小野被告はLGBT法案に関する仲岡弁護士の主張をネット上で見て腹を立て、その思考を変更させようと脅迫した」と指摘し、「心当たりのない人物からの脅迫で被害者の精神的苦痛は大きかった」と主張しました。
 被告人質問で小野被告は、意見が異なる人がほかにもいるなかで仲岡弁護士を脅迫した理由を問われ、仲岡弁護士がトランスジェンダーであることを公表しているからではなく、「ホームページからなら匿名でメッセージを送れると思った」と述べました。
 弁護側は最終弁論で、犯行には精神疾患や飲酒の影響があったが、父親が監督を約束していると主張。示談も成立していることから、「早期の社会復帰を可能にするのが相当」と訴えました。
 
 
 どうしてこのような事件が起こってしまったのか、トランスジェンダーの当事者はどう受け止めたのか、二度とこのような事件が起こらないようにするために何が必要なのか、を的確に伝える言説として、事件直後のTransgenderJapanの非難声明をここで再び紹介します。
「これは紛れもなくトランスジェンダーという属性を理由とする殺害予告であり、ジェノサイド(集団殺害)へ地続きとなる許されない行為です」
「日本においては、2018年にお茶の水女子大学がトランス女性の受け入れを表明して以降、トランスジェンダー、特にトランス女性に対する憎悪扇動や差別言説(以下、まとめてトランス差別とする)がSNSを中心に振り撒かれ始めました。その内容の多くは、欧米諸国で宗教保守らが発信している言説の輸入でした。2021年5月末から6月にかけてにLGBT理解増進法案が国会に提出されるか否かが争点となった時期を皮切りに、トランス差別を主導する運動団体が相次いで結成・始動され、トランス差別言説が増幅されていきました。そして2023年2月以降の所謂LGBT法案をめぐる国会の議論において保守の立場からの法案への抑制・反対の理由としてそれらの言説が用いられ、またヘイトクライムが発生し、いよいよトランス差別が現実世界においても噴出している現状があります。このような経過の果てに、この度の仲岡さんに対する殺害予告があります」
「トランス差別言説を通じて、トランスジェンダーの生活実態と離れたところで「議論」の体裁でヘイトスピーチやデマ・誤情報が流されています。これらに影響を受け、誤ったトランス女性像を描いている人も少なくありません。トランスジェンダーも人間であり、そうでない人達とともにすでにこの社会で生活をしています」
「この度の仲岡さんへの殺害予告を受け、改めてヘイトクライムに対する怒りを表明するとともに、殺害予告犯が適切な司法手続きに則った刑事処分を受けること、及び、このような事態が繰り返されない社会の構築を求めます」
 

参考記事:
トランスジェンダー公表の弁護士に殺害予告した罪 男は初公判で起訴内容を認める(関テレ) 
https://www.fnn.jp/articles/-/633640
トランスジェンダー公表の弁護士を脅迫 男に懲役1年6カ月求刑
https://digital.asahi.com/articles/ASRDP659PRDPPTIL011.html

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