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【追悼】夢のようなショーの数々で人々を魅了してきたドラァグクイーン、オナン・スペルマーメイドさん

 9月1日、ドラァグクイーンのオナン・スペルマーメイドさんがすい臓がんで亡くなりました。享年52歳でした。
 SNSには本当に大勢の方から「信じられない」「オナンちゃん大好きだったのに…」といった追悼コメントが続々と寄せられ、オナンさんの思い出の写真や動画などもアップされ、一時はX(Twitter)のトレンドにも入りました。
 葬儀はご家族の方だけで執り行なわれるそうです。
 
 オナンさんは90年代前半からドラァグクイーンを始めた方で(先日TOKYO MXで放送された「なんて美だ!」という美術番組でHossyさんが第一世代、バビ江さんが第三世代とおっしゃっていたので、オナンさんは第二世代だと思われます)、二丁目はもちろん、いろんな街の、本当に様々なたくさんのイベントに出演してきました。映画祭の公式パーティや東京レインボープライドでMCを務めたり、cali≠gariのライブに出演したり、ミュージカル『プリシラ』にも出演を果たし、「Drag Queen Story Hour TOKYO」にも参加するなど、縦横無尽で多彩な活躍を見せました。
  
 オナンさんのショーほど「夢のような」「素敵な」「ウットリするような」という言葉がふさわしいショーはありませんでした。まるで良質な舞台を観ているかのような。ロマンチックな短編映画のような。ドラマチックな人生絵巻のような。一篇の詩のような。心の奥底に大切にしまっているものを引き出してくれるような…。オナンさんの生き様そのものがアートであり、クィアであり、キャムプでした。こんなにドラァグクイーンらしいクイーンもいませんでした。そんなオナンさんに魅了され、大好きになった方がどれだけたくさん、いらしたことか。楽屋やフロアでは本当に明るく、気さくで、おしゃべり好きで、新人クイーンにもお客さんにも気を遣うような、素晴らしい方でした。
 
 日本のドラァグクイーンカルチャーは世界に誇れる素晴らしいものですが、オナンさんはそのいちばん先頭で、ドラァグというものの魅力や豊かさや可能性を実に美しく、鮮やかに切り開いていってくれた方でした。

 この日、世界は素晴らしい宝物の一つを失ってしまった…そんな気がしてなりません。
 
(文:後藤純一)


 
 

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