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LGBTQ+旅行者の80%が、自身の安全を考慮して旅先を選ぶと回答していることがわかりました

 Booking.com(以下、ブッキング・ドットコム)が今年、日本を含む世界27ヵ国、11,555人のLGBTQ+旅行者を対象に実施した調査※の結果を発表し、LGBTQ+旅行者の80%が自身の安全とウェルビーイングを考慮しなければならないと回答していることがわかりました。

※調査はブッキング・ドットコムが2023年3月・4月にオンラインで実施したもので、次を含む27の国・地域の1万1,555名のLGBTQ+旅行者を対象に行なったものです:アルゼンチン(209)、オーストラリア(608)、ベルギー(206)、ブラジル(508)、カナダ(803)、コロンビア(309)、クロアチア(206)、デンマーク(201)、フランス(1,000)、ドイツ(1,011)、香港(204)、インド(403)、イスラエル(206)、イタリア(602)、日本(407)、メキシコ(307)、オランダ(511)、ニュージーランド(209)、シンガポール(210)、スペイン(408)、スウェーデン(203)、スイス(202)、台湾(205)、タイ(210)、イギリス(1,004)、アメリカ(1,003)、ベトナム(200)。LGBTQ+の回答者は、性別、性自認、性的指向においてそのようなアイデンティティを持った方々です。また、アンケートの回答にあたっては「今後12ヵ月以内に旅行を計画していること」を条件としました。 
 
 旅先を選ぶ際にLGBTQ+として自身の安全とウェルビーイング(心身および社会的な健康など幸福)を考慮しなければならないと回答したのは日本人のLGBTQ+旅行者で60%、世界全体では80%にも上りました。これは、去年の48%(世界:64%)と比べて大幅に増加しています。
 世界には同性間の性行為を違法と見なす国が64ヵ国あり、そのうち11ヵ国では死刑が科せられる場合があります(弊社の資料「LGBTQの海外安全情報」もご覧ください)。多くのLGBTQ+旅行者にとって旅先選びはとても重要です。日本人LGBTQ+旅行者の43%(世界:64%)は、完全に候補の対象外としている旅先があると答えています。日本人LGBTQ+旅行者の43%(世界:71%)は、LGBTQ+に対する態度や差別、暴力をめぐるニュースによって、自分の旅先の選択に大きな影響を与えると回答しています。また、日本人LGBTQ+旅行者の28%(世界:41%)は過去1年間で、LGBTQ+をサポートしていない旅先だとわかった際に旅行をキャンセルしたことがあると答えています。さらに、日本の25%(世界:58%)のLGBTQ+が旅行中に差別を受けたことがあると回答しました。

 さらに、6%(世界:29%)の方は偏見にさらされたことがあり、4%(世界:20%)の方は、他の旅行者からじろじろ見られたり、笑われたり、暴言を吐かれたりした経験がある、7%(世界:18%)の方が旅行先で現地の人から同様のことをされたことがある、4%(世界:13%)の方が現地の公的機関(地元警察など)などから脅迫されたり威圧的な態度をとられたことがあると回答しています。
 10%(世界:32%)の方は、批判を受けたり気まずいやりとりにならないよう、自分の行動を変えなければならないと感じており、また、そのようなことが起こらないよう見た目を変えなければならないと感じている方も8%(世界:25%)いらっしゃいます。この影響を最も受けているのは若い世代で、Z世代のLGBTQ+旅行者のうち、自分の行動を変えなければならないと感じている当事者は11%(世界:40%)、自分の見た目を変えなければならないと感じている当事者は14%(世界:32%)です。

 トランスジェンダーの方(ノンバイナリーなどを含む)は、性自認や名前、容姿がパスポートの情報と一致しない場合、旅行でさらなる困難に直面することがあります。48%(世界:62%)の方が、自身が当事者であることが旅行中の服装やメイクの選択に影響を与えたことがあると答えています。さらに、LGBTQ+旅行者の5%(世界:19%)は、自分の性別や代名詞を勝手に決めつけられた経験があります。

 LGBTQ+コミュニティ全体において、「身の安全への懸念」が旅の目的地の選択に重要な影響を及ぼしています(日本30%、世界39%)
 一方、多くの旅行先において主要な問題、あるいは大きな課題がまだあるとしても、58%(世界:71%)は、LGBTQ+としての経験が、旅行者としてより自信を持つことにつながると感じています。

 LGBTQ+旅行者の70%(世界:83%)が、どんなアクティビティにも参加する自信があると答えていますが、45%(世界:65%)のLGBTQ+旅行者は、LGBTQ+のためのアトラクションやアクティビティ(たとえば、ゲイタウンのツアーなど)に参加する傾向が強いようです。

 ポジティブな旅行体験もはるかに一般的になってきており、LGBTQ+コミュニティのより大きな自信につながっていることは間違いありません。LGBTQ+旅行者の48%(世界:82%)は、宿泊先とのやりとりなどでポジティブな交流を経験したと回答しています。
・15%(世界:42%)の旅行者が、到着前の宿泊施設とのやりとりがフレンドリーで有益だったと答え、2022年の8%(世界:25%)から増加しています。
・26%(世界:47%)の旅行者が、ウェルカムドリンクやフレンドリーなスタッフなど、到着時の第一印象が素晴らしかったと答え、2022年の16%(世界:31%)から増加しています。

 LGBTQ+旅行者の63%(世界:78%)が、旅行業界がLGBTQ+フレンドリーになることで、より快適に旅行できるようになったと感じています。 

 旅行業界がLGBTQ+旅行者のニーズを満たすためにやるべきことがまだまだあるということも浮き彫りになっています。チェックイン時に周辺エリアの情報や案内をもらったと答えたのは16%(世界:40%)である一方、LGBTQ+向けの情報が提供される頻度ははるかに低く、そのような案内を受けとったことがあると答えた方はわずか4%(世界:16%)でした。14%(世界:34%)は、現地の法律、宗教的な考え方、安全に訪れられる場所のヒントなど、その地域のLGBTQ+を取り巻く状況に関する情報を知りたいと考えています。

 旅行業界がアライとして行動することの必要性は、以下のことからも明らかです。
・49%(世界:65%)は、LGBTQ+へのサポートに関してどのような取り組みをしているかを理解するため、旅行前に旅行会社や観光スポット・アクティビティなどを調べると答えています。
・45%(世界:66%)は、旅行や観光スポット・アクティビティなどの予約において、LGBTQ+の当事者が運営するブランドを予約する可能性のほうが、そうでないブランドを予約する可能性よりも高いと答えています。
・54%(世界:69%)は、LGBTQ+インクルーシブなポリシーがある航空会社やブランドに好感を持ちやすいと答えています。

 ブッキング・ドットコムのCMO兼シニア・バイスプレジデントのアルヤン・ダイクは、次のようにコメントしています。「矛盾と不安定さが増す世界において、今日のLGBTQ+の旅行者がより慎重になると同時に、より自信を感じているというのは驚くべきことではありません。私は、ゲイとして、成長し、世界を生き抜く方法を学ぶ過程で身につく自己肯定感について理解できます。また、LGBTQ+旅行者は、安全やウェルビーイングに対する特別な配慮が必要であることが、この調査でわかりました。ブッキング・ドットコムは、誰もが常に自分らしく世界を体験できるようになるべきだと考えています。近年、LGBTQ+の人々に対する理解、認知、受容は大きく前進していますが、その進歩を当たり前なものと考えることはできません。旅行業界は社会のインクルージョン推進のリーダーとなるよう努力し、身近な場所を訪れるにしても、地球の裏側を旅するにしても、誰もが生き生きと活躍できる環境の醸成を支援するべきです」


 LGBTQ+旅行者に対する世界規模のアンケート調査は、それ自体がたいへん貴重なものですが、今回の調査結果は、旅行業界がよりLGBTQ+インクルーシブに変わっていくために何をなすべきかという方向性も示唆するような、たいへん有意義なものでした。
 大阪では、来年秋のIGLTA総会開催に向けて、大阪観光局が地元の観光産業のLGBTQ+インクルーシブな取組みを支援してきました(詳細はこちら)。こうした動きがもっと業界全体に広まり、日本が世界のLGBTQ+旅行者から「選ばれる国」になるといいですね。

 

 
参考記事:
ブッキング・ドットコム、2023年の調査から、LGBTQ+当事者の旅行者は「不安」と「自信」の相反する気持ちを抱えていることが明らかに(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000327.000015916.html

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