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長野県内で社内LGBTQ施策に取り組んでいる企業は14%にとどまることが明らかに

 長野県でLGBTQ(性的マイノリティ)に配慮した取組みを行なっている企業が14%にとどまることが14日、信濃毎日新聞社の経済アンケートでわかりました。首都圏を中心とする大企業では、同性パートナーにも慶弔休暇の適用などを認める人事制度の改定や差別禁止の明文化など、LGBTQも働きやすい職場環境の整備が浸透しつつありますが、中小企業の多い長野県では取組みが遅れている実態が浮き彫りになりました。認定NPO法人 虹色ダイバーシティは、「地方の企業の実態調査は珍しく、貴重なアンケート結果だ」としています。
 

 アンケート結果によると、LGBTQが働きやすい職場環境づくりのために何らかの取組みを「すでに実施している」とした企業14%、「検討中」が28%で、「実施予定なし」は57%となりました。アンケートは県内主要企業が対象で、昨年11~12月に県世論調査協会に委託して実施し251社が回答したそうです。
 今回のアンケートで「すでに実施」とした割合を従業員規模別にみると、「1千人以上」が27%で最多、「300人以上1千人未満」23%、「100人以上300人未満」14%、「50人以上100人未満」11%、「50人未満」5%となり、規模が小さいほど取組みが進んでいないことがわかりました。「すでに実施」「検討中」とした企業に具体的な取組み(複数回答)を尋ねたところ、「ハラスメントや差別の禁止を社内規定などに明記」が77%で最多、「社内相談窓口の設置」(59%)、「社内セミナーなどの開催」(43%)、「採用活動での配慮」(31%)が続きました。
 経団連が2017年に会員企業233社から回答を得た調査では、「すでに実施」が42%、「検討中」34%、「予定なし」23%で、5年前にして、県内企業との違いが際立つ結果になっています(会員企業は首都圏の大企業が多数を占めています)
 県人権・男女共同参画課の平林正枝課長は、県内企業で取組みが進んでいないことについて「企業が自分のこととして捉えられていないのかもしれない。意識啓発を進める必要がある」と話しました。

 同じ信濃毎日新聞の「性的少数者配慮 働きづらさは経営リスク【長野県内企業 取り組み遅れ】」という記事では、「県内では一部の企業が動き出しているものの、大半は限られた人材や資金を理由に「様子見」の状況だ。だが当事者は都市や地方を問わず存在しており、取組みの着実な進展を願う声が上がる。環境整備は、人権を守る側面だけでなく、労働力不足の時代に地方企業が多様な人材を確保する観点からも不可欠だ」と述べられています。

 法制度としてはパワハラ防止法があって、全国どこでも、どんな規模の企業であっても、少なくともSOGIハラ・アウティングが起こらないよう社内で防止策を講じることが措置義務とされていますが、今回、長野県で明らかになったように、地方では依然として取組みが進んでいない様子が浮き彫りになりました。 
 しかし、虹色ダイバーシティも「貴重だ」とコメントしているように、地方でこうした県内企業へのアンケート調査が実施されること自体が今まであまりなかったことで、そのことは前向きな評価に値すると言えます。まずは現状を明らかにして課題を認識したうえで、県としてLGBTQも働きやすい職場づくりの取組みが広がるような働きかけを行なう、施策を考えていくという方向に進んでいけたらよいのではないでしょうか。
 長野県は今年4月から「しあわせ信州パートナーシップ届出制度」を導入する予定です。制度導入も企業の取組みが進むきっかけになることでしょう。

 

 地方自治体が、管内の企業の社内LGBTQ施策の促進を図るための取組みを実施してきたケースは様々あります。
 2015年の渋谷区の新条例では、同性パートナーシップ証明制度だけでなく、区内の事業者に同性パートナーシップに最大限の配慮を行なうことを求める旨が明記されていて、このことが、生命保険や住宅ローンなどにおける同性パートナーを配偶者と同等に扱う平等化の取組みにつながりました。
 文京区は2017年、区が発注する工事などで事業者と交わす契約書類にLGBTへの差別を禁止することを明記しました。罰則や取引停止などの処分規定はないものの、条例の趣旨を契約相手に周知し、適切な対応を求めるもので、画期的だと評価されました。
 同じく2017年には札幌市が「LGBTフレンドリー指標制度」を導入しました。基本方針、啓発、内部体制、福利厚生、配慮、協力連携の6つの項目についてLGBTQ施策を評価し、市LGBTフレンドリー企業として登録証を交付し、市の公式サイトで紹介するというものです。きちんとLGBTQのことに取り組んでいる企業を市として称え、表彰するような仕組みです。
 同様に、大阪市でも2019年から「LGBTリーディングカンパニー認証制度」が始まりました。
 福岡市でも昨年、「ふくおかLGBTQフレンドリー企業登録制度」が始まりました。
 埼玉県は昨年9月から、独自の指標を設けてLGBTQ施策を評価する「アライチャレンジ企業登録制度」だけでなく、「にじいろ企業研修の実施」「にじいろ企業相談の設置」をワンパッケージとして、LGBTQも働きやすい職場環境づくり事業を開始しました(全国初だそうです)
 
 今後も、こうした動きが全国に広がりを見せることでしょうし、何か新しい取組みが生まれたりもするのではないかと期待されます。

 

参考記事:
性的少数者配慮の取り組み 長野県内企業14% 中小多く遅れ(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023011500078
性的少数者配慮 働きづらさは経営リスク【長野県内企業 取り組み遅れ】(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023011500081

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