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【東京五輪】サッカー女子カナダ代表のクィン選手がトランスジェンダー初の五輪メダリストに

 8月6日、サッカー女子決勝でカナダが優勝し、カナダ代表の一員であるクィン選手が、トランスジェンダー初の五輪メダリスト(しかも金メダル)となりました。
 クィン選手は札幌ドームで7月21日に開催された予選リーグでなでしこジャパンと対戦し、五輪の試合に初めて出場したトランスジェンダー・アスリートとなっていましたが、さらに「史上初」の栄誉を積み重ねました。
 Outsportsは、「クィンのプレイは、それ自体がとても重要な意味を持つパーソナルなゴールでもあった」と評しました。
「今やロールモデルが見え、実現可能なスポーツの夢を抱くことができるようになったすべての若いトランスやノンバイナリーにとってのゴール。たくさんのトランスジェンダーたちが、今までより少し胸を張って立ち、少し笑顔が大きくなったという意味でのゴール。ロッカールームで交わされる会話がより(トランスジェンダーにとって)ポジティブになり、きっとそれが他のロッカールームにも、あるいは会議室や、国会にまで広がっていくと期待されるという意味でのゴールだ」
 
 
 ほかにも続々と、LGBTQアスリートのメダル獲得の報が入ってきています。

 7月25日に行なわれた柔道女子52kg級の決勝で、フランス代表のアマンディーヌ・ブシャール選手は阿部詩選手と戦い、銀メダルに輝きました。アマンディーヌ・ブシャール選手は今年6月のプライド月間に正式に同性のパートナーがいることをカムアウトしています。6月にフランスで放送されたドキュメンタリーの中で「私は自分の人生に満足しているし、自分のスポーツにも満足しています。私は自分自身を受け容れています」と語っています。

 3日に行なわれたボクシング女子フェザー級で入江聖奈選手と決勝で戦い、銀メダルを獲得したフィリピン代表のネスティー・ペテシオ選手は、試合後の記者会見で「私はLGBTQコミュニティーの一員であることを誇りに思います」と語りました。
「前に進もう、闘おう! この勝利はあなたのためでもあります」
「あなたのジェンダーがどんなであれ、夢を持ち続けていさえすれば(きっと叶います)。闘いを続けましょう」

 5日、女子サッカーの3位決定戦が行なわれ、米国がオーストラリアに競り勝ちました。ミーガン・ラピノーは今回、銅メダルを手にしました。

 7日には、男子10m高飛び込みの決勝戦が行なわれ、男子シンクロナイズドダイビングで金メダルを獲得していたトム・デイリー選手が、銅メダルにも輝きました。試合後、トム・デイリーはLGBTQコミュニティのために素晴らしいスピーチを行ないました。
 信じられないことに、6日の男子10m高飛び込みの準決勝の直前、ロシア国営テレビが、ローレル・ハバード選手に「この汚らわしい性的倒錯に強く反対する」と、トム・デイリー選手に対しても「忌まわしい」だの「変態」だのホモフォビアむきだしの侮辱をしていたことが報じられました。しかしトム・デイリーは、惑わされることなく試合に臨み、見事に銅メダルに輝き、英国のダイビング選手として初の4つの五輪メダルを獲得という記録を打ち立てた人物となりました。
 トム・デイリーは、勝利後のインタビューでは夫や息子への感謝を述べていましたが、その後、『ガーディアン』の取材に対し、五輪期間中、LGBTQに(自身にも)向けられてきたヘイトについて口を開きました。
「私は英国の選手で本当に幸運でした。迫害されることなく、夫や息子と暮らしている私としてダイビングボードに乗ることができるのですから。この五輪に参加している国のうち、LGBTQが死刑になる国が10もあります。私たちにはまだやることがあります」
「歴史は、社会はすべて異性愛白人男性が記述してきたということを示しています。しかし、人種や宗教、ジェンダー、性的指向にかかわらず、本当にたくさんの多様な物の見方や視点があります。私たちが一体となって、こうした多様な視点を活かすことができれば、世界はよりよいものになることでしょう」
「世界中に、恵まれない状況で育つ子どもたちがたくさんいます。私はスポーツ選手が、彼らの孤独感を減らし、価値ある存在であり、何か達成できることがあると感じさせることに貢献できると思っています。私も思春期の頃、周囲と違うことに気づいていました。いつも人々が良くないことを言ってるのを耳にしました。あなたも、自分には何も言う力がないなどと思わないでください。自分が世間に飲み込まれ、決して何者にもなれないなどと思わないでください」
「私も今まで、世界の人々に自分らしく生きられるようなインパクトを与えられる日が来るとは思っていませんでした。今はそのことを本当に誇りに思っています」

 また、7日に行なわれた男子4×400mリレーでオランダが銀メダルに輝き、アンカーをつとめたラムセイ・アンヘラ選手が、国内新記録でゴールしました。ラムセイ・アンヘラ選手は半年前に同性パートナーとの写真をInstagramにアップしています。ちなみに彼氏さんはPol IJpelaarというモデルの方だそうです。「私はゲイです」というコメントがなく、さらりとハートマークの絵文字や、ラブラブな写真を投稿するかたちでカミングアウトを果たしているのは、男性アスリートにしては珍しいと、Outsportsは評しています。

 8日、女子バスケットボール決勝戦で米国代表が金メダルを獲得し、試合後、スー・バード選手を婚約者のミーガン・ラピノー選手が抱きしめ、キスで祝福する場面がありました。米国のバスケットボール選手の中で最もたくさん金メダルを獲得しているスター選手であり開会式で旗手もつとめたスー・バード選手は、今大会が最後だと語っているため、婚約者ラピノーと共に出場するのは東京が最後となりそうです。
 

 LGBTQアスリートの参加が180人を超えたというだけでもスゴいのに、約30名のLGBTQアスリートがメダルを獲得し、これまでにない記録を打ち立てました。
 Outsportsによると、今大会でLGBTQのアスリートが獲得したメダルの数は金11銀12銅9に上っており、これを「チームLGBTQ」というふうに見なすと、世界7位になるそうです。
 
 

参考記事:
トランスジェンダー初の五輪メダリスト誕生 サッカー女子カナダ代表(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/3360606
Quinn’s Olympics: They made history and they had game(Outsports)
https://www.outsports.com/olympics/2021/8/6/22612715/quinn-canada-trans-nonbinary-sweden-soccer-gold-olympics-tokyo-2020
LGBTQ公表選手 181人で過去最多(日テレNEWS24)
https://www.news24.jp/articles/2021/08/04/09917899.html
Lesbian boxer proudly dedicates historic Olympic medal to LGBT+ community: ‘Go forward, fight!’(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2021/08/04/nesthy-petecio-olympics/
Ramsey Angela won a surprise silver medal 6 months after ‘coming out’ on Instagram(Outsports)
https://www.outsports.com/olympics/2021/8/7/22615049/ramsey-angela-track-olympic-silver
婚約者の金メダルをラピノー選手がキスで祝福。バード選手に「あなたは誇り」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/sue-bird-megan-rapinoe-olympic-kiss_jp_610fb3cfe4b06253fa505442
Team LGBTQ finishes 7th in the Olympics medal count, a testament to being out(Outsports)
https://www.outsports.com/olympics/2021/7/26/22594865/medal-count-team-lgbtq

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