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米政府が、宗教の名の下にLGBTQ従業員の解雇を合法化しようとしています

 トランプ政権が、米連邦機関と取引のある企業が、宗教の名の下にLGBTQの職員を合法的に解雇できるよう規則を変えることを発表し、非難を浴びています。
 
 問題となっているのは現地時間8月14日(水)に米労働省が発表した規則(雇用機会均等令の改定)です。オバマ政権は、大統領命令11246号(雇用機会均等令。ジョンソン大統領が公民権法成立を受けて、政府機関の契約者や下請契約者が人種差別などを行わないよう、公平な雇用を定めたもの。1967年に性別が、2014年に性的指向と性自認が追加されました)を改定した13672号を発布し、LGBTQの従業員が守られるようにしました。これにより、連邦契約遵守プログラムの規則も修正され、2015年4月8日から施行されています。
 実は、大統領命令11246号には例外条項があり、「宗教関連の企業、協会、教育機関、ソサエティ」は連邦契約の遵守を免れます(信仰に基づき、同性愛者を雇わないようにすることが認められます)。今回の規則の改定は、この例外条項を「宗教運動組織」にまで拡大し、「組織が深い宗教的信念に基づく場合には、連邦政府の制裁を受けることなしに、雇用に関する決断を行うことができる」ようにするものです。組織が別に宗教と関係ないように見える場合でも、オーナーが宗教的だと主張すれば、そうだと認めるそうです。
 この規則の改定が実行されれば、政府の業務を請け負う業者が、LGBTQの従業員や結婚せずに妊娠している従業員を宗教的な価値観に基づいて解雇できるようになります。つまり、カトリックや、福音派などの宗教右派の雇用主が、宗教的価値観に合わないと言ってそうした従業員を自由に解雇できることになるのです。
 
 アメリカ自由人権協会(ACLU)は「これは宗教の名の下に税金で賄われる差別だ」と非難しました。
 ACLUは、アメリカ人の労働者の1/4が連邦契約を持つ組織で働いていると指摘し、「この規則は我々の市民としての権利を侵害するものであり、職場での差別を後押しするものだ。我々はこれを止めるために活動する」としています。

 2015年の同性婚実現以降、いくつもの州で公然と同性愛者を差別することが可能になる「宗教自由法」が成立し、昨年にはケーキ店が同性婚を祝うウェディングケーキの制作を拒んだのは差別であるとする高裁判決が最高裁で破棄されました。こうした反動的な流れは、宗教右派からのリベンジであり、彼らに支えられたトランプ政権による嫌がらせのようなものです。今回の規則改定を許せば、大勢のLGBTQが路頭に迷うことにもなりかねません(ただでさえ、ホームレス化したり、仕方なくセックスワークをしている人たちが大勢いるというのに…)
 
 これから30日間、パブリックコメント(市民たちから意見を募る)プロセスに入るそうです。LGBTQコミュニティ+アライの方々から数多く反対意見が寄せられることでしょう。ストーンウォール50周年を祝ってくれたようなセレブの方たちも反対キャンペーンを展開してくれるかもしれません。
 

参考記事:
アメリカ政府、「LGBTQも婚外子を妊娠している人も解雇していい」(ELLE ONLINE)
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a28713540/lgbtq-labor-rule-190816/
Trump will make it legal for federal contractors to discriminate against LGBTQ people(LGBTQ Nation)
https://www.lgbtqnation.com/2019/08/trump-will-make-legal-federal-contractors-discriminate-lgbtq-people/

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