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トランスジェンダーの約8割がオフィスで男女共用個室トイレの利用を望んでいることが明らかになりました

 「トイレ利用は,人間の尊厳にも関わる人権の一つである」という認識の下、金沢大学の岩本健良人間科学系准教授が座長となり、LIXIL、コマニーとの産学協同で「オフィストイレのオールジェンダー利用に関する研究会」が発足し、調査・研究が進められてきましたが、この度、オフィスで働く3万人超を対象にした大規模調査の結果がまとめられ、プレスリリース(PDF)が発表されました。これによると、トランスジェンダーの4割以上が利用したいトイレを利用できていないそうです。また、オフィスに男女共用個室トイレがオフィスにあったら利用したいと回答した人が、トランスジェンダーでは8割にも上りました。
 以下、調査結果の概要をお伝えいたします。
 
1. トランスジェンダーの4割以上が、働きたい性別で働けていない
 トランスジェンダーの働きたい性別(希望)と、実際に働いている性別(実態)を調査したところ、4割以上の方が、自身が望む性別で働くことができていないということがわかりました。出生時に割り当てられた方の性別で働いている方が35.5%、自認する性別で働けている方はわずか18%にとどまりました。

2. トランスジェンダーの約4割が、利用したいトイレを利用できていない
 トランスジェンダーがオフィスで利用したいトイレ(希望)と、実際に利用している性別(実態)を調査したところ、約4割の方が利用したいトイレを利用できていないことがわかりました。4割というのは1と同様の数字であり、利用したいトイレを利用するために、まずは働きたい性別で働ける職場環境を整えることが重要であると言えます。
 
3. 誰もが利用しやすいオフィストイレにするためには「トイレの選択肢があること」が重要
 普段利用しているオフィストイレの満足度に関して12項目について評価してもらったところ、トランスジェンダーでは「トイレの選択肢の多さ(男女別、多機能、男女共用など)」が顕著に低く、シスジェンダーであっても2番目に低い結果となりました。「トイレの選択肢があること」がオフィストイレの満足度に大きく影響することがわかりました。

4. オフィスにおける多機能トイレの利用状況
 オフィスの多機能トイレの利用状況を聞いたところ、日常的に利用している方が、シスジェンダーで13.4%、トランスジェンダーでは24.3%に上ることがわかりました。理由としては「性別に関係なく利用できる」という心理的な安心感が目立ちました。

5. オフィスにおける男女共用個室トイレの可能性
 オフィスに男女共用個室トイレがあったら利用するか?という質問に対して、シスジェンダーで約6割、トランスジェンダーでは約8割が利用したいと回答しました。
 なお、「労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則」で、トイレは「男性用と女性用に区別すること」と定められており、職場に男女共用トイレのみを設置することはできないそうです。法律から変えていかなければいけないということも浮き彫りになりました。

6. 男女共用トイレの一般的なサインについて「変えなくてよい」という声が最多に

 男性の形(青)と女性の形(赤)が並んでいる男女共用トイレの一般的なサインについて、意見を聞いたところ、シスジェンダー・トランスジェンダーともに「変えなくてよい」という声が最多になりました。
 また、インタビュー調査で、「性別を問わずに利用できる多機能トイレがオフィスにあった場合、どのようなサインがよいか」を聞いたところ、賛否両論だったそうですが、「どなたでもご利用ください」と明記されている利用しやすいという声が共通で、レインボーカラーなどの特別なものは不要、男性と女性がくっついたようなサインは不快だ、という声が目立ったそうです。
 
 日刊ゲンダイがこの調査結果について「時代は確実に変化している」「法律や法令が時代についていけていない現状がある」「このトイレ問題、職場の選択的夫婦別氏制度と同じくらい真剣に考えなくてはいけない」と書いています(時代は確実に変化していますね!)

 
 それから、世界遺産の厳島神社がある宮島に、トランスジェンダーの方も安心して利用できる男女共用個室トイレを含む「TOTO宮島おもてなしトイレ」が設置されるというニュースもありました。TOTOと広島県廿日市市が協同し、訪日外国人やトランスジェンダーなど多様な観光客を見込んで観光地トイレのモデルケースとして開設するものだそうです(全国に広がるといいですね)
 
 
 海外ではどうでしょうか。
 アメリカでは、トランプ政権下、ID上の性別の方のトイレを利用することを強制する差別的な州法ができている州もありますが、リベラルな東海岸や西海岸では、トランスジェンダーへの配慮が進んでいるようです。
 著名な社会学者である橋爪大三郎氏は、「ボストンのトイレ表示から「LGBTの権利」を考える」という記事で、ボストンのレストランに入った際、もともと男女別に2つあったトイレが両方オールジェンダートイレになっていて、片方がEVERYONE(すべての方が使えます)、もう片方がANYONE(どんな方でも使えます)と書かれていたと教えてくれました(なんと気の利いた対応でしょうか)。橋爪氏は「トイレはトイレの問題であることを超えた、生きる権利の問題なのである」と語っています。
 それから、「サンフランシスコの当たり前「男女共用トイレ」は快適そのものだ」によると、全米50都市の中で最もLGBTQ人口が多い(コミュニティの結束力が強い)サンフランシスコでは、小学校のトイレがオールジェンダー化されていっているそうです。「どなたでもご利用できます」という意味のアメリカ的なジョークが効いたサインも紹介されていて、おもしろかったです。
  
 
参考記事:
トランスジェンダー8割がオフィスの男女共用トイレを希望(日刊ゲンダイ)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/259437
「TOTO宮島おもてなしトイレ」、8月1日にオープン(観光経済新聞)
https://www.kankokeizai.com/%E3%80%8C%EF%BD%94%EF%BD%8F%EF%BD%94%EF%BD%8F%E5%AE%AE%E5%B3%B6%E3%81%8A%E3%82%82%E3%81%A6%E3%81%AA%E3%81%97%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%80%8D-%E3%80%818%E6%9C%881%E6%97%A5%E3%81%AB%E3%82%AA/

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