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田亀源五郎『弟の夫』が金沢大の入試問題の題材に 

 金沢大学の今春の文系後期一括入試(小論文)の設問で、田亀源五郎さんの『弟の夫』※などを題材にして、性的マイノリティの子どもへの対応を考える問題が出題されていたことが明らかになりました。
 
 『弟の夫』の中で設問の題材に使用されたのは、カナちゃんの同級生の兄である中学生のカズヤくんが、ゲイであることをずっと誰にも相談できず、つらい思いを抱えていたのですが、同性結婚したというマイクのことを聞いて、話をしたくて、家に訪ねてくるという場面です。
 問題文は以下の通りです。
 
漫画『弟の夫』(双葉社)の一部を読んだ上で、性的マイノリティの子どもが今後、不利益を被ることなく学校生活を送るために、教師やクラスメートなど、周りの人たちはどういった対応を取ればよいとあなたは考えますか。資料1~4を踏まえた上で、具体的な提言を交えながらあなたの考えを700字以内で述べなさい。(一部改題)

 そのほかにも、性的マイノリティの自殺対策(生きる支援)に取り組む団体「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」による2013年の調査の結果で、異性愛ではない男子が小学生から高校生の間にいじめや暴力を受けた経験は、言葉による暴力が53%、無視や仲間はずれも34%にのぼるという報告が上がったということ、性的マイノリティについて学校で学んだ経験などのグラフ(高校生で学んだ経験がある人は男女ともに2割もいませんでした)なども資料として使用されているそうです。
 
 大学の入試でこのような設問がなされた背景として、セクシュアリティ教育を専門とする埼玉大の渡辺大輔准教授は、「性的マイノリティをめぐる問題への関心の高まりがある」と語っています。文系後期一括入試で出されたということは、幅広い人権感覚が文系の学問には必要だ、という大学のメッセージとも言えます。

※田亀源五郎さんはもともと『バディ』や『G-men』などのゲイ雑誌でエロティックな漫画作品を掲載していた方ですが(『G-men』誌では表紙絵も担当)、2014年から月刊『アクション』で『弟の夫』の連載が始まるや、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞、そして海外でもアングレーム国際漫画祭最優秀漫画賞ノミネート、アイズナー賞最優秀アジア作品部門最優秀賞、ハーベイ賞最優秀マンガ部門(BEST MANGA)ノミネートなど、内外で高く評価され、輝かしい受賞歴を誇る作品です。昨年は、NHKで実写ドラマが放送され、こちらも評判を呼びました。今年、多くの日本人漫画家とともに大英博物館の「マンガ展」で展示されています。
 
 数年前までは、まさか田亀さんの作品が入試で使われる日が来るなんて、誰も想像していなかったと思います。ゲイ雑誌でリアルタイムでその作品を読んで育った者としては、とても感慨深いです。
 
 
 ちなみに、6月20日発売の『CDジャーナル』2019夏号で、特集として田亀源五郎さんをフィーチャー、表紙にもその作品が掲載されています。『CDジャーナル』は、2019年7月号から季刊としてリニューアルすることになったのですが、そのリニューアル記念号の特集に選ばれたのが、田亀源五郎さんです。インタビューや作品紹介、「田亀源五郎をかたちづくるモノたち」などが盛り込まれた特集です(実は、ゴトウが今回、田亀さんへのインタビューと原稿の執筆を担当させていただきました)。ぜひ読んでみてください。
 ちなみに『CDジャーナル』は2011年にもゲイミュージックを特集しており(当事者のライターをたくさん起用し、ゲイカルチャーやゲイテイストがとても深く掘り下げられていて、画期的な特集でした)、ゲイフレンドリーな音楽雑誌と言えそうです。
 
(後藤純一)
  


参考記事:
入試に同性愛めぐる設問が…「大学からのメッセージだ」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASM6C4SJMM6CUTIL01K.html

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