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『ボヘミアン・ラプソディ』作品賞&主演男優賞受賞!だけじゃなかった今年のゴールデングローブ賞

 1月6日(現地時間)、第76回ゴールデングローブ賞授賞式が開催され、本命視された『アリー/ スター誕生』を退けて『ボヘミアン・ラプソディ』が映画の部「ドラマ部門」作品賞および主演男優賞に輝きました。
 『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリー役を演じ、見事に主演男優賞に輝いたラミ・マレックは受賞スピーチで「ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、クイーンが、私たちに、世界に、音楽業界に、多様性を受け入れること、ありのままでいることの大切さを教えてくれたことに感謝しています。そして、フレディ、人生で最高の時間をありがとう。あなたのことを心から尊敬しています。あなたは本当に美しく、素晴らしい人です。僕がこの賞を受賞できたのはあなたのおかげです。この賞をあなたに捧げます」と語り、感動を呼びました。

 映画の部「ミュージカル/コメディ部門」作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞に輝いたのは、公民権法が施行される以前の1962年、アフリカ系ジャズピアニストのドン・シャーリーと彼が雇ったイタリア系用心棒との心の交流を描いた『グリーンブック』です。実はドン・シャーリーは生前にカミングアウトしていなかったもののゲイであることで知られており、映画の中でもそのようなシーンがあるそうです。
 したがって今回、ゴールデングローブ賞映画の部で作品賞を受賞した2作品は、いずれもゲイ(またはバイセクシュアル男性)をフィーチャーした作品ということになります。これは本当にスゴい、前代未聞の出来事です(アカデミー賞ではクィア映画※が作品賞を獲ったのは未だに2017年の『ムーンライト』だけです。実に稀少なことなのです…)

※主人公がセクシュアルマイノリティ(クィア)である映画、あるいはセクシュアリティやジェンダーについてのマイノリティ性(クィアネス)を主要なテーマとして正面から描いた映画。芸術作品においてはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々だけでなく、より多様な、あらゆるセクシュアルマイノリティ(クィア)について表現していくことに意義があると考えるため、弊社ではLGBT映画ではなくクィア映画と呼びたいと思います。
 
 今年のゴールデングローブ賞におけるクィア映画の躍進は、それだけにとどまりませんでした(氷山の一角でした)
 Advocateは「ケヴィン・ハートへの当てつけのように、今年のゴールデングローブ賞は過去最高にクィアなものとなった」と評しています。
 Hollywood Foreign Pressによると、今年は、アメリカの映画やドラマにおけるクィアのキャラクターが記録的な数に上ったそうです。そのほとんどはストレートが演じているものの、今回のゴールデングローブ授賞式で最初のクィア関連作品に贈られた賞は、オープンリー・ゲイの俳優、ベン・ウィショーに授与されたものでした。
 
 ベン・ウィショーは1970年代の一大ゲイ・スキャンダルである「ソープ事件」を描いた『英国スキャンダル〜セックスと陰謀のソープ事件』で、国会議員のジェレミー・ソープ(のちに労働党のリーダーに)と恋人関係にあったノーマン・スコットを演じており、テレビの部「リミテッドシリーズ/テレビ映画部門」助演男優賞を受賞しました。ベンは「ノーマン・スコットは真実のクィアなヒーローであり、ゲイ・アイコンです。彼にこの賞を捧げます」とスピーチしました。

 映画の部「ミュージカル/コメディ部門」の主演女優賞は、『女王陛下のお気に入り』のオリヴィア・コールマンに贈られました。『女王陛下のお気に入り』は18世紀初頭のイングランドを舞台にしたコメディ・ドラマで、病気がちなアン女王の寵愛を受けて権力を振るおうとする幼なじみ・サラと新入りの側近・アビゲイルがバトルを繰り広げるのですが、女性どうしの肉体関係も描かれた作品です。主要な3人がすべてノミネートされた今回のゴールデングローブ賞では、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズの3人が女性どうしの関係についてのジョークを言い合う場面もあったそうです。

 それから、ドラマの部「リミテッドシリーズ/テレビ映画部門」の作品賞と主演男優賞が、『アメリカンクライムストーリー:ジャンニ・ヴェルサーチの暗殺』に贈られました。これは、『glee/グリー』のライアン・マーフィが手がけた作品で、『glee/グリー』でゲイのブレインを演じていたダレン・クリスが、ヴェルサーチを殺したアンドリュー・クナナンの役を演じました。
 この作品の受賞スピーチで最も熱く語ったのは、エグゼクティブ・プロデューサーのブラッド・シンプソンでした。「私たちのショーは限られた期間のものです。しかし、ホモフォビアの悪影響は一過性のものではありません。それはここにあります。私たちのそばにあります。私たちはずっと闘わなければならないのです」

 バイセクシュアルであることを公にしている(それ以前に世界中のLGBTを励ましてきた)レディ・ガガは、『スター誕生』の初代ヒロインであるジュディ・ガーランドへのオマージュとして、ジュディが劇中で着ていたようなゴージャスなドレスでレッドカーペットに登場しました。『アリー/ スター誕生』で主演女優賞にノミネートされていましたが、残念ながらグレン・クローズに譲り、主題歌賞(「Shallow」)の受賞のみとなりました。ガガは同曲を共作したマーク・ロンソンらと共にトロフィーを受け取りました。
 
 そして、司会をつとめたサンドラ・オー(『グレイズ・アナトミー』に出演しているアジア系女優)も今シーズン、ドラマ『Killing EVE』の中でEve Polastriというクィアなキャラクターを演じて、テレビの部「ドラマ部門」主演女優賞に輝いています。
 彼女はたくさんのクィアな物語がハリウッドで最も大きな一夜のセンターステージに登った記念碑的な今回の授賞式のことを「変化の瞬間です」と語りました。

 ほかにも、昨年パンセクシュアルであることをカミングアウトしたジャネル・モネイがプレゼンターとして登場したり、レズビアンであることをカミングアウトしているプロデューサーのリナ・ウェイスがハル・ベリーと手をつないで登場したり、という場面もあったそうです。
 
 
 
参考記事:
The 2019 Golden Globes Were the Queerest Yet(ADVOCATE)
ゴールデングローブ賞、「ボヘミアン・ラプソディ」に栄冠(朝日新聞)
『ボヘミアン・ラプソディ』がゴールデングローブ賞作品賞&主演男優賞(CINRA.NET)
第76回ゴールデン・グローブ賞、『ボヘミアン・ラプソディ』が作品賞&主演男優賞に(cinemacafe.net)

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