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東京都がLGBT差別解消とヘイトスピーチ抑止を目指す条例案を発表しました

 今年5月、東京都がLGBT差別解消を目指す条例の骨子案を発表しました。このときは、性的マイノリティ(LGBT等)への差別のない東京の実現のために、理解促進を図り、当事者からの相談に対応する窓口を設けるという内容でしたが、LGBT法連合会が実効性が不明瞭であるとの声明を発表し、一般社団法人fairも「差別してはならない」という一文を入れること、審議会+苦情処理委員会の設置、SOGIに関する相談窓口にすることなどを提案し(詳しくはこちら)、当事者団体から意見が上がりました。パブリックコメント募集のかたちで広く一般からも意見を受け付けていて、都は、こうした意見を受けて、骨子案の見直しを行い、この9月12日、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」の文案を発表しました。
 以下、条例案の中から、LGBTに関する部分を抜粋してご紹介します。(全文はこちら。PDFです)


 東京は、首都として日本を牽引するとともに、国の内外から多くの人々が集まる国際都市として日々発展を続けている。また、一人一人に着目し、誰もが明日に夢をもって活躍できる都市、多様性が尊重され、暖かく、優しさにあふれる都市の実現を目指し、不断の努力を積み重ねてきた。
 東京都は、人権尊重に関して、日本国憲法その他の法令等を遵守し、これまでも東京都人権施策推進指針に基づき、総合的に施策を実施してきた。今後さらに、国内外の趨勢を見据えることはもとより、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機として、いかなる種類の差別も許されることのないというオリンピック憲章にうたわれる理念が、広く都民に浸透した都市を実現しなければならない。
 東京に集う多様な人々の人権が、誰一人取り残されることなく尊重され、東京が、持続可能なより良い未来のために人権尊重の理念が実現した都市であり続けることは、都民全ての願いである。
 東京都は、このような認識の下、誰もが認め合う共生社会を実現し、多様性を尊重する都市をつくりあげるとともに、様々な人権に関する不当な差別を許さないことを改めてここに明らかにする。そして、人権が尊重された都市であることを世界に向けて発信していくことを決意し、この条例を制定する。

第一章 オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現
(目的)
第一条 この条例は、東京都が、啓発、教育等の施策を総合的に実施していくことにより、いかなる種類の差別も許されないという、オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となることを目的とする。
(都の責務等)
第二条 都は、人権尊重の理念を東京の隅々にまで浸透させ、多様性を尊重する都市をつくりあげていくため、必要な取組を推進するものとする。
2 都は、国及び市区町村が実施する人権尊重のための取組について協力するものとする。
3 都民は、人権尊重の理念について理解を深めるとともに、都がこの条例に基づき実施する人権尊重のための取組の推進に協力するよう努めるものとする。
4 事業者は、人権尊重の理念について理解を深め、その事業活動に関し、人権尊重のための取組を推進するとともに、都がこのじょうれいに基づき実施する人権のための取組の推進に協力するよう努めるものとする。

第二章 多様な性の理解の推進
(趣旨)
第三条
 都は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別の解消ならびに、性自認及び性的指向に関する啓発等の推進を図るものとする。
(性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いの禁止)
第四条
 都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない。
(都の責務)
第五条 都は、第三条に規定する差別解消並びに性自認及び性的指向に関する啓発等の推進を図るため、基本計画を定めるとともに、必要な取組を推進するものとする。
2 都は、前項の基本計画を定めるに当たっては、都民等から意見を聴くものとする。
3 都は、国民及び区市町村が実施する差別解消並びに性自認及び性的指向に関する啓発等の取組について協力するものとする。
(都民の責務)
第六条 都民は、都がこの条例に基づき実施する差別解消の取組の推進に協力するよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第七条 事業者は、その事業活動に関し、差別解消の取組を推進するとともに、都がこのじょうれいに基づき実施する差別解消の取組の推進に協力するよう努めるものとする。

(中略)

(表現の自由等への配慮)
第十八条 この章の規定の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保証する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。


 

「性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない」という差別禁止規定の一文が入ったことは、大きな一歩だと言えるでしょう。「LGBTへの差別」ではなく「性自認及び性的指向を理由とする差別」という言い方になっているのも評価できます(理由はLGBT法連合会が述べている通りです)
 ただ、第三章のヘイトスピーチの制限のところに書かれているような具体的な対策はLGBTに関しては見られず、「啓発等の推進」としか述べられていないので、いまひとつ実効性には乏しいのではないか、との声も上がっています。
 
 この条例案は、19日に開会する定例都議会で審議されることになっております。より実効性の高い、素晴らしい条例になるよう、議論が進むことを期待します。


 

参考記事:
LGBT 都が条例案提案へ 差別禁止盛り込み 五輪憲章理念、実現を(毎日新聞)

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