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お茶の水女子大が2020年度からMtFトランスジェンダーの学生を受け入れることを決定、日本初

 お茶の水女子大が7月2日、MtFトランスジェンダーの方の受験や入学を2020年度から認めると発表しました。MtFトランスジェンダーの入学を承認した女子大学は、お茶の水女子大が日本初です。
  
 東京都文京区にあるお茶の水女子大学は、明治時代に日本で初めての女性の高等教育機関として創設された国立大学で、現在は学部生と大学院生あわせておよそ3000人が学んでいます。
 大学はこれまで入学の条件を「戸籍上の女性」と限定していましたが、2020年度から、戸籍上の性別が男性であっても性自認が女性であれば入学できることとし、MtFトランスジェンダーの学生に門戸を開くことを決めました。
 
 文部科学省によると、国内の女子大学は国公私立あわせて77校ありますが、MtFトランスジェンダーの入学を認めるケースは聞いたことがなく、国内の女子大では初めてのケースではないか、とのことです。文科省は「在学中の学生への支援を検討することも必要」ともコメントしています。
 
 2017年3月、日本女子大がMtFトランスジェンダーの受入れを検討するという報道があり、朝日新聞が全国の女子大の学長へのアンケート(64大学が回答)を実施しましたが、お茶の水女子大はその際、性自認が女性であるMtFトランスジェンダーの学生の受入れを「検討している」と回答していました。当事者らから「受験資格はあるか」との問い合わせがあったことなどを受け、2016年度から検討を始めたそうです。このアンケートでは、ほかにも日本女子大や津田塾大、東京女子大など4大学が「検討している」と答えていました。(『「心は女性」女子大も門戸? 8校が検討前向き』朝日新聞,2016)
 この時は、戸籍上の性別変更がまだできていない場合、性自認が女性であることの証明として診断書が必要になるのではないか、国際的には非病理化が達成されつつある流れなのに診断書を必須とするのは時代遅れではないか、といった議論がネット上で見られました。

 女子大のMtFトランスジェンダー受入れに関する法的側面について作花知志弁護士は、女子大学は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」によって適法に戸籍上の性別を変更したトランス女性が入学・進学を希望した場合、これを拒否することはできない、としています。また、戸籍上の性別をまだ変更できていないMtFトランスジェンダーについても、憲法26条1項で「すべて国民は、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定められているわけですから、(たとえ私立大学であっても税金による補助金を受け取っていれば、公金を運用しているわけですから)平等性と憲法適合性が求められることになり、入学・進学を拒むことはできないのではないか、としています。(『日本女子大、性的少数者の受け入れ検討へ「女子大で学ぶ権利」憲法上の位置づけは?』弁護士ドットコムニュース,2017)
 
 きっと2020年の春には、お茶の水女子大への入学の喜びを語る学生のニュース映像が見られることでしょう。
 今まで、女性限定の学校(女子大に限らず、宝塚音楽学校など)への入学を切望しながらも、出生時(戸籍上)の性別が女性でないことを恨めしく思っていた方が少なからずいらしたはずです。そうした方たちの夢が叶う時代が、いよいよ訪れようとしています。
 
【追記】
 7月10日、お茶の水女子大の室伏きみ子学長らが記者会見し、「多様性を包摂する」として正式にトランスジェンダーの受入れを発表しました。
 学長は冒頭、このように述べました。
「学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯な夢の実現の場として存在するという国立大学法人としての本学のミッションに基づき判断した。
 今回の決定を『多様性を包摂する女子大学と社会』の創出に向けた取り組みと位置づけており、今後、固定的な性別意識にとらわれず、ひとりひとりが人間としてその個性と能力を十分に発揮し、『多様な女性』があらゆる分野に参画できる社会の実現につながっていくことを期待している。
 はるか以前の社会と比べると格段に進歩したが、それでも様々な場で女性が職業人として活躍するには困難がある。その現状を変え、女性たちが差別や偏見を受けずに幸せに暮らせる社会を作るために、大学という学びの場で、自らの価値を認識し、社会に貢献するという確信を持って前進する精神をはぐくむ必要があると考える。
 それが実現できるのは、女性が旧来の役割意識などの、無意識の偏見、そういったものから解放されて自由に活躍できる女子大学だろうと考えている。
 本学はすべての女性たちがその年齢や国籍等に関係なく、個々人の尊厳と権利を保障されて、自身の学びを進化させ、自由に自己の資質能力を開発させることを目指している。その意味からも、性自認が女性であって、真摯に女子大学で学ぶことを希望する人を受け入れるのは自然な流れだろうと思うし、多様性を包摂する社会としても当然のことと考えた」
 この件に関し、お茶の水女子大では、すでに学内で説明を尽くしてきており、教職員や同窓生などには20回ほど説明会を実施し、学生にも3回行った、学生からの反応はとても前向きな反応で、方針への反対はなかったといいます。会見では「温かく迎えることが大事」と述べられました。
 近々、学内に「受入れ委員会」を設け、性自認についての確認の方法や、入学後の具体的な対応について検討し、ガイドラインを作成する予定だそうです。
(ハフポスト「お茶の水女子大「性には多様性がある」 トランスジェンダーの女性を受け入れる理由を説明」)

参考記事:
お茶の水女子大 男性でも性自覚女性なら入学可へ(NHK)
お茶の水女子大 トランスジェンダー受け入れへ(FNN)
お茶の水女子大がトランスジェンダー学生受け入れへ(テレ朝)
お茶の水女子大「性自認が女性なら」男性受け入れ(日経新聞/共同通信)
お茶の水女子大「心は女性」の学生受け入れへ 国立で初(朝日新聞)

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