NEWS

厚労省がホルモン療法を併用する性同一性障害者について性別適合手術の保険適用外とする方針を固めました

 今年4月から性同一性障害(GID)の性別適合手術に公的医療保険が適用されることになっていましたが、これに関して厚生労働省が3月5日、ホルモン療法を実施している人は原則、保険の適用外とすることを決定しました。多くの性同一性障害者は、性別適合手術を受ける前に、自認する性別に体を近づけるためのホルモン療法を受けているため、保険が適用されず、これまでどおり100万円超の費用を全額自己負担することを余儀なくされます。
 
 厚労省は2018年度の診療報酬改定で、性別適合手術(男性器の切除や形成、子宮や卵巣の摘出など性同一性障害の手術療法全般と、乳房切除)への保険適用を決定していました。保険が適用されれば原則3割負担となります。しかし一方で、ホルモン療法については保険適用外(自由診療)のままとしていました。
 現在の日本の医療制度では、同一の疾患に対して健康保険による治療と自由診療の治療を行った場合は「混合診療」とみなされ、健康保険は適用されず、すべてが自由診療の扱いとなります。厚労省は、ホルモン療法を受けている人が性別適合手術を受けるケースが混合診療に当たるかどうか検討を行ってきましたが、今回正式に、混合診療に該当するためすべてが保険適用外になる、という判断を下したかたちです。
 
 ホルモン療法は、性ホルモン製剤を投与して自認する性に体を近づけるために行うものです。男性ホルモン剤には筋肉量を増やし、女性ホルモン剤には乳房が膨らむなどの効果があります。当事者の多くは、自認する性別でスムーズに社会生活を送るために必要だと考え、手術を受ける前にホルモン療法を受けています。
 今回の判断によって、そうした方たちは保険適用を受けることができなくなり、100万円以上とされる費用を自己負担することを余儀なくされます…多くの当事者の落胆の声が聞こえるようです。
 これまで学会や患者団体が中心となり、厚労省に性別適合手術とホルモン療法を保険対象とするよう働きかけを行ってきており、厚労省は現在、ホルモン療法についても保険適用を検討しているそうですが、適用が決まるまで早くても1年、状況によっては数年かかるとみられています。
 
 治療全般の保険適用を訴えてきた「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」前代表の山本蘭さんは、「ホルモン療法の保険適用を待つしかない。残った課題が早く解決するよう今後も取り組んでいきたい」と語りました。 

 GID学会の中塚幹也理事長(岡山大大学院教授)は、「多くの当事者にとって形式的な保険適用となるが、制度の厚い壁にようやく大きな穴を開けられた。学会としても引き続き、ホルモン療法の適用を厚労省と協議したい」と語りました。




参考記事:
ホルモン療法併用者「保険外」 厚労省方針(毎日新聞)
性別適合手術で大半が保険使えず ホルモン療法中の当事者は対象外(山陽新聞)

ジョブレインボー
レインボーグッズ