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特集:国際ノンバイナリーデー

毎年7月14日は「国際ノンバイナリーデー」です。これを機にノンバイナリーのリアリティや社会的課題について触れたり、考えたりしてみましょう

 日本ではXジェンダーという言葉も浸透していますが、世界的に典型的な男性/女性に当てはまらないジェンダーアイデンティティの方たちはノンバイナリーと言われています。(PRIDE JAPANでもたくさんノンバイナリーについてのニュースを発信してきました。「ノンバイナリー」「Xジェンダー」で検索してみてください)
 毎年7月14日は「国際ノンバイナリーデー」とされています。ノンバイナリーの認知向上や差別の解消を目的として2012年に制定されました。3月の「国際女性デー」と11月の「国際男性デー」のちょうど中間に位置することが由来となっています。
 この国際ノンバイナリーデーは5月17日のIDAHOBITや10月11日のカミングアウトデー、11月20日の国際トランスジェンダー追悼の日などに比べると、あまり認知されていないと思われますが、昨年末にXGのCOCONAさんがノンバイナリーとカミングアウトしたことや、ノンバイナリーの詩人・成清朔さんが中原中也賞を受賞したこと、大阪高裁が男/女だけに限られる戸籍記載を「憲法14条に抵触」と判断したことなどもあり、世間的にノンバイナリーへの認知が進み、関心が高まってきているように思われるなか、国際ノンバイナリーデーのことも認知され、もっとノンバイナリーのリアリティや社会的課題に関心を持ち、よりインクルーシブな社会を目指す契機になれば、と思い、この特集をお届けすることにしました。最近のトピックを中心にお伝えします。


『道端葉のいる世界』1巻が発売

 こちらでもご紹介した『フィール・ヤング』誌に連載中のコミック『道端葉のいる世界』の単行本第1巻が発売になりました。ノンバイナリーで大学の哲学科に入学した学生の道端葉を主人公とするお話です。ゲイの友人や、クィアに対して偏見のない(フラットな)学友たちや、葉に憧れの感情を抱く学生なども登場し、SOGIについての話題が豊富に描かれている画期的な作品です。ノンバイナリーを主人公とした映像作品などがほとんどない(世間が性別二元論的な情報に覆われている)なか、この作品は、ノンバイナリーのリアリティを知るためのたいへん良い手がかりになるはずです。

<あらすじ>
山の上にある大学の哲学科に入学した道端葉は、「女性」と「男性」のどちらにも固定されないノンバイナリー。幼なじみのまどかやゲイの友人・ガク、同じ哲学科の紫咲らと大学生活を送っていた葉は、落ち込んでいたときに哲学科の講師・卜部と出会う。卜部の言葉に力をもらった葉は、彼のゼミに入ることを決めて……。

「道端葉のいる世界」1巻
作:文川和海、原作:村野真朱、祥伝社



ノンバイナリーに関する多様な記事

 例えば中國新聞が7月14日の朝に「国際ノンバイナリーデー」と題したコラムを掲載したり、さまざまなメディアがノンバイナリーをフィーチャーした記事を掲載しています。

◎国際ノンバイナリーデー(中國新聞)
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/862440
 東京の私立美術館の公式サイトに会員登録した筆者が性別欄の選択肢が「男/女/その他」となっていた話から始め、男女の枠組みでしか見てもらえず、周囲からの呼称や決めつけに苦しむ人たちに思いを寄せ、大阪高裁の画期的な判決に触れ、戸籍制度の整備は国会の責任で行うべきだと結ぶ、とてもいいコラムです。

◎すべての人にSRHRを──Xジェンダー当事者が語る排除のない社会への共闘(Harper’s BAZAAR)
https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/social-issue/a71689075/interview-masayoshi-maruyama-260624-hbp/
 性的マイノリティ交流団体「lag」の代表を務めるノンバイナリー(FtX)の丸山真由さんへのインタビュー。11年前に性別移行し、パートナーもノンバイナリー(FtX)で、「今のパートナーと暮らすようになってから、はじめて家の中にいて安全だと感じられるようになったのです」と語ります。丸山さんは中学生になるお子さんもいて、(ママではなく)2、3歳の頃に丸山さんが頼んで以来、あだ名で呼ばれているそうです。ミスジェンダリングは日常にあり、婦人科を受診した際、「本人ですか?」と問われたり、周囲の目を避けるよう求められたり…。「だからこそ、日本でも、国際規格が定めたとおり、パスポートの性別はM/F/Xの3つにしてほしい。戸籍の性別も男女二元論でなく選択肢が増えてほしいです。いつまでたっても存在が不可視化されたままの状況が変わってほしい」と丸山さんは語ります。「性別を移行すればすべてが解決するわけではありません。見た目だけで判断されることでミスジェンダリングが繰り返され、自分のアイデンティティを伝えること自体を諦めてしまうこともある」

◎「子どもは動物と同じ」と主張する“元警察官”の母からの日常的な暴力…24歳が「母につけられた名前」を戸籍上から抹消するまで(SPA!)
https://nikkan-spa.jp/2172675
 ノンバイナリーの日向レマさん(24歳)は、全国模試1位になり、東大、東大院を卒業したというスゴい方です。レマさんは家庭裁判所で手続きを行ない、自らの名前を変更していますが、それはノンバイナリーだからというだけでなく、元警察官であり、各種武道の有段者である母親から受けた「虐待の記憶と結びついてしまうから」だといいます。その壮絶な半生に迫る記事です。

◎中高時代「ブサイク」と否定され続けた男性→大変身した“7年後の姿”が美しすぎる!本人を直撃すると(女子SPA!)
https://joshi-spa.jp/1410537
 北海道の田舎で育ち、小中学校の9年間、「顔がブサイク」と言われたり、ニキビ肌だったので「汚い」「顔洗ってないんじゃないか」などと言われていた岡本舵楽(だらく)さん。適応障害になって勤め先を辞めたり、いろんな職業を転々としましたが、うまくいかず、自暴自棄になっていたなか、ある人に言われてモデルを目指すようになり、「ノンバイナリーモデル」として活躍するようになりました。岡本さんは性同一性障害の診断も受けていますが、中性寄りのノンバイナリーです。今は特にユニセックスブランドのブランドモデルやアンバサダーを務めたりしていて、ファッションショーでは中性的だったり女性的な服を着ながら、ときにはがっつりメイクしたり、あまりメイクをしないみこともあったりするそうです。

◎エリオット・ペイジ、恋人と『オデュッセイア』プレミアに 2ショット披露
https://www.crank-in.net/gallery/news/187773/recommend
 『ジュノ』や『X‐MEN』、『インセプション』への出演で知られる俳優のエリオット・ペイジは2020年にトランスジェンダー(ノンバイナリー)であることをカムアウトし、俳優としてもLGBTQ活動家としても活躍してきましたが、このたび名匠クリストファー・ノーラン監督が古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスによる英雄叙事詩を映画化した話題作『オデュッセイア』に出演し、6月のプレミアにパートナーのジュリア・シプレットと登場したことがニュースになっていました。

◎オリヴィア・コールマンが語るジェンダー観──「ずっとノンバイナリーだと感じていた」(The Hollywood Reporter Japan)
https://hollywoodreporter.jp/news/176079
 映画『女王陛下のお気に入り』でアカデミー主演女優賞にも輝いたオリヴィア・コールマンが「これまでの人生、私はいつも自分がノンバイナリーに類すると感じながら、人と議論してきた。大げさな肩書きをつけたいわけではないけれど、女性として生きてきた中で、自分を女性的だと感じたことは一度もない」と語り、ノンバイナリーであるオード・メイソン=ハイドが演じるノンバイナリーの子の母親の役として出演する映画『Jimpa(原題)』の撮影を通じて大きな安心感を得たといい、「撮影を終えたとき、『ジェンダーは二元的じゃない』と感じているのは自分だけじゃないと実感できた」と語っています。「クィアのコミュニティから生まれる物語は、もっとも愛にあふれ、美しいものだと感じている。そこに迎え入れてもらえたことを、とても光栄に思っている」

◎「女の子らしくしろ」ジーパンで登校した娘を殴った父親。40年間自分を殺して生きたノンバイナリーの絶望【作者に聞く】(ウォーカープラス)
https://www.walkerplus.com/special/fandomplus/article/1330697/
 ダ・ヴィンチWebで配信中のWeb漫画『性別に振り回されたわたしの話~1981年生まれのノンバイナリー~』の作者、桜木きぬさんへのインタビュー。性別による固定観念が強かった昭和の時代を生き抜き、インターネットを通じて「ノンバイナリー」という言葉に出会い、「これはまさに自分のことだ」と確信したものの、「認めてしまったら、また差別されるのではないか」とも悩み、しかし、認めずに生きることの限界を感じ、「これ以上は危ない」というギリギリの状態で、なかば「折れた」ような形でようやく受け入れたと語ります。


性別的に中立な代名詞を表す漢字

 日本語話者にとって、英語のthey/themに当たる代名詞(プロナウン)を日本語でどう言い表せばよいか、ということはきっと悩みの種の一つだったことでしょう。香港では、この問題を解決するために新しい漢字が作られたそうです。
 香港出身のノンバイナリーの活動家、ロー・シウフン氏は2017年、インターセックスやノンバイナリーのコミュニティによって考案された非公式の代名詞が解決策になると考えました。中国語で男性形「他」、女性形「她」となっているのを踏まえたジェンダーニュートラルな代名詞は「X」に見える部首をつけた「X也」のような漢字になっています(読み方はどれも「タ」だそうです)。昨年9月、この代名詞が世界中のウェブ開発者や大手IT企業が使用する記号と文字の国際標準、ユニコードに追加されたそうです。
 日本語でもこの言葉を使うようにしたほうがいいのか、それとも、彼/彼女ではない新たな(日本語になじむような)代名詞を発明した方がよいのか…これから当事者の方たちの間で話し合われていくのではないでしょうか。

出典:
性別的に中立な代名詞示す新たな漢字、近くキーボードで入力可能になる見込み(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35242138.html



 このように、一つひとつ、前進が見られるのは喜ばしいことですが、まだまだノンバイナリー(やジェンダーノンコンフォーミングや、典型的な男性/女性の枠組みに当てはまらないすべてのジェンダークィアの人々)の生きづらさや困難は解消されておらず、日本では制度的な保障などもようやくスタート地点についたばかりです。少なくとも世間でもっと典型的な男性/女性の枠組みに当てはまらない人たちがたくさんいる、戸籍上男/女だけになっているのは当たり前じゃないと認識する方が増えていくといいですよね。アライのみなさんはぜひ、これを機に、ノンバイナリーのリアルに触れたり、思いをめぐらせたりしてみてください。

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