FEATURES
レポート:みやぎにじいろパレード2025
11月8日、仙台でみやぎにじいろパレードが開催されました。東北のパレードのラストを飾るプライドパレードとして、各地から参加者が集い、紅葉が美しい仙台の街を、誇りを掲げながら行進しました
みやぎにじいろパレードは(他の街のパレードもそうでしたが)2020年に開催予定だったのがコロナ禍で中止となる憂き目に遭い、2021年にオンライン開催され、2022年にようやく念願叶ってリアルで初開催ということになりました。第1回は開催直前まで雨が降っていて、集合場所の肴町公園は足元がぬかるんでいたりして、ちょっと悲しい感じもあったのですが、それでも初開催を祝う方たちが全国から駆けつけ、いいパレードになりました。翌年からはエル・パークでの屋内イベントも同時開催されるようになり、定番になりました。
2022年にはみやぎにじいろパレードだけでなく、やまがたカラフルパレードなども始まり、東北六県全県でプライドパレードが開催されるようになりました。2023年には庄内レインボーマーチも始まり、5月には秋田と岩手で、6月には青森で、9月に庄内で(今年は6月でした)、10〜11月に福島、山形で開催され、11月に東北のラストを飾るかたちで宮城で開催、という流れになりました。
第4回を数える今年のみやぎにじいろパレードは「Make Our Future みんないぎなしおどげでね※、んだから変えっぺし。」というテーマで、初めて錦町公園という大きな公園で開催されました。
※おどげでね…宮城の言葉で、大変だ、とんでもない、といった意味
【これまでのレポート】
みやぎにじいろパレード2022
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/features/2022/34.html
みやぎにじいろパレード2023
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/features/2023/89.html
みやぎにじいろパレード2024
https://www.outjapan.co.jp/pride_japan/features/2024/35.html
みやぎにじいろパレード2025 レポート
11月8日(土)、仙台はちょっと肌寒いけど気持ちよく晴れて、絶好のイベント日和となりました。
11時にエル・パーク仙台の「うぢらで虹かけっぺし会場」がオープン。例年よりもたくさんのブースが出展され、カラフルなにぎわいを見せていました。宮城で活動している団体やサークルの方たちだけでなく、青森、岩手、函館の方たちもブースを出していましたし、Marriage For All Japan、アライエス、irOdori、AKATALE、アムネスティ・インターナショナル、宮城県司法書士会、アクセンチュアなどさまざまでした。








みやぎにじいろパレード(MNP)は今年初めて錦町公園という大きな公園が会場となりました。何千人も入れそうな広さです。
12時半の受付開始とともに整列が始まり、実行委員や各地のパレードの人たちが1番目の隊列、企業の方たちが2番目、個人の方たちが3番目、最後が撮影禁止ブロックという感じで並んでいました。
ロバート キャンベルさんの姿もあり、メディアから盛んにインタビューを受けていました。今年度からせんだいメディアテークの館長に就任したそうでl、初めてみやぎにじいろパレードに参加したんだそうです。実はもうひと方、仙台にまつわるエグゼクティブな方が参加していました。昨年の「work with Pride」にも登壇していた山田克也さんです。山田さんは日テレの取締役でしたが「Colorful Weekend」の企画責任者を務めたことをきっかけにカミングアウトを果たしました(おそらく日本の大企業の経営層として初のカミングアウトです)。今年5月から宮城テレビの社長に就任し、仙台にいらっしゃいました。今回は個人としてパレードに参加したそうです。
13時過ぎ、諸注意事項が説明された後、メディアの人たちが自己紹介し、代表の方が挨拶し、コールの練習をして(MNPは「Happy pride」ではなく「We have pride」を推奨しています)、パレードがスタートしました。
青森、岩手、山形、庄内、函館(プライド準備室)、和歌山など各地のプライドイベントの方たちが大きなフラッグを持って先頭を歩き、「故郷を帰れる街にしたい」というのぼりを持ったダイバーシティラウンジ富山のなかがわさん、AKATALEのゆうすけさん、Marriage For All Japanの松中権さん、仙台家裁に家事審判を申し立てている小浜さん、ロバート キャンベルさん、山田克也さん、ろうLGBT東北のみなさんらが続きました。その後をアクセンチュア、司法書士会、IKEA、アルプスアルパイン、irOdori、日本LGBTサポート協会、アライエスなどのみなさんが歩いていました。
今年は集合場所が変わったので必然的に歩くコースも変わり、まず定禅寺通りに出て、一番町商店街に入り、三越を左手に見ながらアーケードの商店街を行進し、広瀬通りのディズニーストアのところで左折し、しばらく直進し、愛宕上杉通りを北上して錦町公園に戻るというコースでした。黄色い銀杏の並木が美しかったですし(銀杏もたくさん落ちてました)、紅く色づいた木々も見えました。仙台は今が紅葉のベストシーズンなんだろうなと思いました。
このパレードは商店街を歩くこともあり、フロートのトラックなどはないのですが、スピーカーから「Born This Way」やRINA SAWAYAMAの「Chosen Family」のようなアンセム(やJ-ROCK)が流れ、一体感や高揚感を演出していました(音楽は大事です)。一番町商店街や広瀬通りにはたくさんの人がいたのですが、手を振ってくれる方もいれば、怪訝そうな顔で見ている方も…という感じでした。先頭では共同代表の方たちがマイクでスピーチし、ときどき「We have pride」をみんなでコールしました。
出発とゴールのときにアクセンチュアの方たちがシャボン玉を吹いて見送り&お出迎えしてくれてて、素敵だなぁと思いました(実は1回目から、ゴールの勾当台公園でシャボン玉を吹いてお迎えするお子さんがいました。MNPの定番というか名物になりつつあるのかも)。アクセンチュアの方たちは沿道でもところどころで応援し、パレードを盛り上げてくれていました。 

























錦町公園に帰着後、集合写真を撮って、プライドミーティングが行なわれました。
初めに各地のパレードの方たちがスピーチしました。
青森レインボーパレードの方は、「思い思い手を取り合って歩いててホッとした」「東北で自分らしく生きるのは簡単じゃないけど、多様性を纏った方がこんなに来てくれたのはどんなに力になることか」「パレードは一人一人の物語を放つ場です」といった、きらりと光る素敵な言葉を語ってくれました。
庄内レインボーマーチを開催している「虹をかける会」の方は、40年前仙台に住んでいた頃、ここ(錦町公園)にトランスの“立ちんぼ”の人たちがいて、なかにはお医者にかからずホルモンを濫用していた人もいて、自ら命を絶つ人もいたし、国見台病院に連れて行かれた人もいた…という、ともすると歴史の闇に葬られてしまいそうな、けれども決して忘れてはいけないような、大切な話をしてくれました。ありがとうございます。
やまがたカラフルパレードの方は、先日、11月2日に開催し、いい気候に恵まれたことを報告し、みんなで意識を高めてアピールしていきましょう、と呼びかけていました。
秋田プライドマーチの方は、「パレードを歩いただけで制度ができるわけではありません、同性婚もまだです」「今日歩けなかった方にも思いを馳せましょう」「このパレードのことを毎日思い出しましょう」といったお話を日英2ヵ国語で語りました。
いわてレインボーマーチの方は、今日があるのは今まで差別に対抗してきた人たちのおかげ、今は差別を正当化するような人も現れてきた、声を上げ続けていこう、社会を変えていくためにはアライとの連帯も重要だ、といったお話をしていました。来年のIRMは4月末開催予定だそうです(桜が見頃ですね!)
ろうLGBT東北の方がスピーチ(手話を翻訳するかたちでした)。手話の当事者とアライが集うグループです。手話のLGBTQ差別語を使用しないよう、勉強会や集会を行なっています。LGBTQの聴覚障害者はダブルマイノリティ。パンフを作りたいと思っています。というお話でした。
ロバート キャンベルさんがスピーチ。今年からせんだいメディアテークの館長になりました。今日はパレードを歩いて市民のみなさんからあたたかい親近感を感じられました。各県の声が聞かれる、こういう集まりこそがとても大切だと感じます。世界的にDEIへのバックラッシュが起こっていて、NY Timesでは最高裁が同性婚審議することがニュースになり、もし覆れば80万人の結婚が無効とされます。日本も「結婚の自由をすべての人に」訴訟が行なわれていて、高裁で違憲判決が出ていますが、政治が動かない。どういうふうにイシューとして可視化するか、一票を投じるかというやり方で政治の場に聞かせることがますます大事になっています。各地のパレードは大切な種を蒔いていると思います。といったお話でした。
みやぎにじいろパレードを共催する「にじいろCANVAS」の共同代表・ままあひるさん。保育士をしているアライの方です。保育所で、ハロウィンのときにドレスを着たいという男の子がいて、でもサイズが合わなくて、魔女宅のキキのコスプレをして、うれしそうだったといった素敵なお話をしてくれました。ままあひるさんの娘さんは秋田プライドマーチのスタッフもしてくださっています。
同じく小野寺真さん。みんなで手話を覚えましょう、と言って、ろうLGBT東北のエイトさんを呼び、みんなで「また来年会いましょう」という手話を練習しました。
(それから、今回、前に出てお話はしなかったのですが、小浜耕治さんのメッセージも「にじいろCANVAS」の公式サイトに掲載されています)
パレード共同代表のしゅんしゅんさん。来年5周年です、2014年に青森から始まった東北のパレード、私たちはよりよい明日へと向かって、時には休みながら、悲しみや怒りとともに歩いて行こう、といったお話をされました。
同じく共同代表のほまれさん。陰キャだった私でさえ、昨今の「おどげでねえ(大変だ、とんでもない、という意味)」ことを身近なことに感じ、社会を変える、そのための土壌を耕すことを、との思いで、パンフレットは闇を抱えながら彩りある日々をイメーしたデザインにしました。みんなの笑顔が生きる原動力です、といったお話でした。
同じく共同代表のこぐまさん。不平等があり、危険や不安を感じながら暮らしている当事者がいます。私たちは教材じゃない。マジョリティに筋の通った説明をする必要はない、といったお話をされました。
(御三方の思いはパンフレットにもメッセージとして掲載されていますので、ぜひご覧ください)
(なお、山田克也さんに、パレードに参加しての感想をお伺いしてみたところ、「小野寺真さんに勧められて参加いたしました。友人である松中権さんやロバート キャンベルさんとご一緒できて、楽しく歩くことができました。来年はさらに多くの方が参加できる環境が整うといいですね」とのコメントをいただけました)
プライドミーティングの最後に、もう一度みんなで「We have pride!」のコールをしてお開きとなりました。
歩いて体も暖かくなってるはずなのに、気温が急に下がったのか、集会が終わる頃にはブルブル震えるくらい寒くなっていました。
公園から数分歩き、エル・パークの「うぢらで虹かけっぺし会場」会場に向かいました。irOdoriさんのバレエ講座が行なわれたり、午前中とはまた違う活気があり、あちこちのブースを見て回る方がたくさんいらっしゃいました。そうして17時まで、会が続けられました。
みやぎにじいろパレードを振り返って
私は青森出身で、青森で翔子さんたちがたった3人からパレードを歩きはじめたということに感動し、「故郷を帰れる街に」というスローガンにも共感し、2018年に青森のパレードに参加したときは、本当に青森が「帰れる街」になるかもしれない…と思えましたし、やがて岩手、秋田、山形、福島、そして宮城と東北全県でパレードが開催されるようになったことにも深い感慨を覚えました。今年はいろいろあってあまり東北のパレードには参加できていなかったので、せめて仙台だけは、という気持ちで参加してきた次第です。
今回参加していた他地域のパレードの主催者の方が「東北のパレードのみなさんは仲がよくてうらやましい」と語っていましたが、確かに、それぞれの県のパレードの方たちが互いに他県のパレードに参加し合い、集会でスピーチし合い、「東北プライドネットワーク」とも呼べるような相互支援を続けてきて、仲のよさが感じられます。細かい考え方や方向性の違いなどはあるかもしれませんが、同じ東北で、パレードを開催することの大変さを身にしみてわかっている同志だからこその、そして、素朴というか、人の良さ、自然な温かさを持ち合わせた人たちだからこその連帯が実現しているように感じます。(昨年もそうでしたが、秋田の方が、プライドマーチで使ってるキャスター付きのスピーカーを持って来て、音楽が流れるようにしてくださっていました。素晴らしいです)
ブースで野菜を売って居場所づくりの活動資金に、とか、東北ならではの光景も見られて、素敵です。
個人的には、仙台のゲイコミュニティとのつながりもあって、友達に会いに行くという意味もあります。特にやろっこのふとしさん、ゲンさんなどは25年以上のおつきあいで、一緒にクラブイベントも開催したりした仲です。パレード後にコミュニティセンター「ZEL」にもお伺いして、ゲンさんと近況を語り合いました(お元気そうでよかったです。70歳を過ぎても現役でコミュニティセンターで働いてる方ってゲンさんくらいじゃないでしょうか)
パレード前夜にはゲイバー(一昨年、協賛してくれたお店)にもおじゃまして、まさかの松中権さんにお会いしたり、二丁目でお会いしたことがある方と再会したり、今日がゲイバーデビューですという22歳のお客さんもいたりして(眩しかったです)、いろいろ楽しかったです。(ただ、パレードのパンフレットが届いてなくて、お客さんが誰もパレードがあることを知らなかったようです…運営スタッフの方たちもいろいろ大変で手が回らないのだろうなという事情は想像できますので、なんとか来年、人手が増えてコミュニティと連携が図れるようになったらいいなと思いました)
今年からロバート キャンベルさんと山田克也さんという頼もしいPOWER GAYの方たちが仙台に縁ができ、パレードも歩いてくれました。そのことが来年の5周年の開催にいい影響を与えるような気がします。たくさんの当事者の方たちが参加しやすいようなイベントになるといいな、と思います。
(後藤純一)
- INDEX



