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レポート:岡山レインボーフェスタ2025

11月1日・2日の2日間、岡山市の下石井公園で岡山レインボーフェスタ2025が開催されました。今年も晴れやかで温かい、懐の深いイベントになりました。レポートをお届けします。

11月1日(土)・2日(日)の2日間にわたって岡山市の下石井公園で岡山レインボーフェスタ2025が開催されました。「Let's Take Action!~知ることから動くことへ あなたの一歩が未来を変える~」をテーマに、歌あり、ショーあり、トークあり、そしてパレードも盛り上がり、という充実したイベントになりました。その模様のレポートをお届けします。


前夜祭「レインボーな夜会」

 昨年は岡山のシンボルの一つである由緒ある岡山城の中で前夜祭「レインボーキャッスル」が開催され、エポックメイキングな出来事となりました。
 今年はフェスタ会場と同じ下石井公園で前夜祭「レインボーな夜会」が開催されることが発表されていました。直前に発表されたタイムテーブルで、開場・ブース出展は15時から、ステージイベントは16時にスタートということがわかりました。午前中に東京を出て、14時半頃岡山に着いて、15時過ぎに下石井公園に行こうとしたところ、まさかの雨が降ってきて(「晴れの国」岡山で雨に降られたのって初めてかも)、しばし避難。16時頃、雨が止んだのを見計らって会場に向かいました。

 下石井公園には「虹トラ」の荷台を使ったステージが設けられ、芝生エリアにはテーブルと椅子が並べられていました(ディナーショーとかのように)。その周りに、あったかいコーヒーや軽食を売るブースやキッチンカーなどが出ていて、すでにテーブル席について歓談している方たちがいました。岡山で長年HIV予防啓発の活動をしてきた方にお声かけいただいて、テーブル席に混ぜてもらい、いろいろお話していると、ステージでイベントが始まりました。
 代表の市川さん、副代表のYOUさんによる開会宣言の後、今年3月のえひめプライド フェスタ&パレードでも活躍していたゲイとストレート男子のデュオ「もげへい」によるライブが披露されました。爽やかな歌声を聴かせつつ、初めはカムアウトしていなかったもげさく彗太さんが、泰平さんとの信頼関係や、世の中がLGBTQフレンドリーに変わってきたことをきっかけにカムアウトし、泰平さんも自然に受け容れたというお話もしてくれて、素敵でした。


 続いて「つなぐ愛、広がる家族 -子育てを終えた私たちから今の世代へ」と題したトークショーが行なわれました。この頃にはお日様も傾いてきて、ステージには照明が当たり、夕暮れ時のトワイライトな雰囲気になってきました。撮影NGでしたのでお伝えできないのですが、「レマザー関西」のみなさんや市川さん、ステージ上に子育てを終えた何人もの女性たちが並んでいる様は、神々しくもありました。市川さんが、女性カップルで子育てをしてきて、そのことを子どもたちがどう感じてきたかということについて、息子さんが、他の異性婚夫婦の家庭でも会話がなかったりあまり仲が良くなかったりする家庭があるけれども、そういう家庭よりうちのほうがずっといい、と語っていたと教えてくれました(胸が熱くなりました)(※撮影NGでしたので、写真はありません)

 それから、地元岡山で音楽活動をしているまっつんさんがライブを披露しました。みなさんどの曲が聴きたいですか〜?と言って3曲くらい挙げて会場の反応を聞いて、ドリカムの『うれしい!楽しい!大好き!』を弾き語りしてくれたり、とてもポップでフレンドリーで楽しいステージでした。その中で、副代表のYOUさんが登場し(歌の活動もしているそうです)、今年の話題曲であるback numberの『ブルーアンバー』を歌ってくれる場面もありました(素敵でした)

 再び椅子が並べられ、「レインボーな里親の話」というトークショーが始まりました。2017年に大阪市が初めて同性カップルを養育里親に認定して以降、全国で同性カップルが里親になっていますが、こうしてプライドイベントで里親をテーマにトークショーが行なわれるのは初めてだそう。埼玉で実際に里親になって小学生を育てているゲイの方が登壇し、行政や児童相談所なども支援的だし、学校の保護者などからも一度も嫌な思いをしたことがない、子どもも男性2人の親のことを自然に受け容れてくれている、といったお話をしてくれたり、岡山市の児童相談所の担当の方が、市も同性カップルの里親を歓迎していると話したり、素晴らしい内容でした。会場のみなさんも真剣に聞き入っていました。(※撮影NGでしたので、写真はありません)

 すっかり夜の帷が降りてまさに「夜会」な雰囲気になってきたなか、岡山のドラァグクイーンによるショーが披露されました。
 Vovoka Biche(ヴォヴォカ ビシェー)さんはレディ・ガガの「Applause」に乗ってゴージャスなショーで魅了しました。

 マチコ・ミラーさんは、椎名林檎さんの名曲「人生は夢だらけ」を使って素敵なショーを見せてくれました。

 大トリは第1回のときからこのイベントのテーマソングを提供してくれているPINKNOTEさんのライブ。実力派6名のJazz soundが、岡山の秋の夜を彩り、最高に素敵な時間となりました。




岡山レインボーフェスタ2025

 2日(日)は朝からよく晴れて、暖かな陽気のなか、10時に岡山レインボーフェスタがスタートしました。
 昨夜よりもたくさんのブースが広場に並び、にぎやかでした。まずはブースからご紹介します。(これ以外にも、チェリオさんがライフガードを配ってくださったり、いろんな飲食のブースなども出ていました)










 ステージでは10時半からイベントが始まりました。
 代表の市川さん、副代表のYOUさんのご挨拶のあと、岡山東商業高校のブラスバンドが演奏を披露。「HSG48」と名付けられた選抜メンバーが前に出て踊る楽しいパフォーマンスで、「マツケンサンバ」から始まり(最高に景気のいいスタートでした)、「ヘビーローテーション」などの人気曲を次々に演奏し、盛り上げてくれました。男子がクラリネットを吹いてたり女子がトロンボーンを吹いてたりするのもいいな、と思いました。


 京都レインボープライドなど関西のあちこちのプライドで歌ってくれているキズキシルシさんが登場。MISIAさんの「アイノカタチ」を歌ってくれたのはとても素敵でした。

 もげへいのお二人は、昨夜よりも明るく元気に爽やかに、会場に歌声を響かせていました。

 続いてトークショー「マイノリティとして生きること」。地元のトランスジェンダーの方やエスムラルダさん(こんな早い時間からメイクを…おつかれさまです)が登壇し、性的マイノリティとして生きることについてご自身の体験などを語ってくれました。「自分だけは自分の味方でいてほしい」という言葉が印象的でした。(※撮影NGでしたので、写真はありません)

 地元のダンスクラブのみなさんによるパフォーマンス、ハイレベルでスゴいと思いました(曲もHANAの「ROSE」だったりして、イマドキでした)。この中から将来、有名になる方が現れるかもしれないし、もしかしたらメンバーの中に性的マイノリティの方もいらっしゃるかもしれないな、とも思ったり。


 みなさんお待ちかねの、ドラァグクイーンによるショーケースの時間がやってきました。
 大阪のCECIL・K・Carlotta(セシル・ケー・カルロッタ)さんは、花魁を彷彿させるゴージャスな和の装いで登場。「吉原ラメント ver.96 猫」という曲に合わせて華麗な舞を披露してくれました。

 ヴォヴォカさんはダンサーを従え、マドンナの「Vogue」などのメドレーで盛り上げてくれました(昨夜はガガでしたね)


 岡山レインボーフェスタは初登場となるゲストのエスムラルダさん。「魔法少女」を歌った後、ザ・ピーナッツ(ジャグリング)とドレミの歌(観客参加型)のショーを披露し、最後に、レインボーフェスタ!でも歌っていた(いまプライドイベントで必ず歌っているそうです)「あの鐘の鳴らすのはあなた」をしっとりと歌い上げました。



 それから、トークセッション「LGBTQと医療~HIV/エイズ医療と予防、女性の性の健康、トランスジェンダーの医療~」が行なわれました。ウィメンズクリニックかみむらの上村院長は、性自認にかかわらず診ている(トランスジェンダーの方も受け入れている)ことなどを、岡山大学病院ジェンダーセンターの松本さんは、GID学会からGI(性別不合)学会に変わったことや、未成年の方も含めて性別不合の方の診察をしてきたことなどを、カラフルドットライフの新山さんは、HaaTえひめの時代からの中四国でのMSM向け予防啓発のことなどをお話していました。来年、岡山で日本エイズ学会が開催されるそうです。(※撮影NGでしたので、写真はありません)
 
 ステージ前半のトリをつとめたのは、昨年も盛り上げてくれたちくわフィルムのみなさん(ゲイの映像&音楽集団です)。今回は「SEVEN☆STAR」というユニットのメンバー全員が岡山の地に集結し(全員揃うのはなかなかないことだそう)、スペシャルメドレーを披露してくれました。



 その後、大急ぎで整列し、パレードとなりました。
 今回は公園を出て西川緑道に沿って移動し、桃太郎大通りまで出てからフロートが合流し、パレードがスタートするかたちでした。先頭は実行委員会のみなさんで、東商業高校のマーチングバンドのみなさん、JPN(各地のプライドの主催者)の方たちなどが続き、その後エスムラルダさんやセシルさんが乗ったDJフロートとヴォヴォカさんやマチコ・ミラーさん、GOGO GIRL(今回初登場)の方たちが乗ったDJフロートが盛り上げて、最後尾が撮影禁止ブロックとなっていました(昨年、素晴らしいフロートで盛り上げたちくわフィルムのみなさんは、今回、撮影禁止ブロックでの参加でした。それでも大勢で歌ったりしながら歩いていました)
 桃太郎大通りを岡山駅へと進み、駅のところで左折すると、今年も髙島屋に大きなレインボーフラッグが掲げられ、社員の方が見送ってくださったりしていました。市役所にもレインボーフラッグがあるかな?と思ったのですが、ちょっと見えなかったです(確認不足かも…すみません)
 結構な長い距離でしたが、みなさん元気に歩いていました。やっぱりDJフロートがあると盛り上がりますね。


















 
 帰着後、しばらく休んでから後半のステージイベントが再開されました。
 JPNのみなさんからプライドイベントのアナウンスがありました。

 PINK NOTEのライブで岡山レインボーフェスタの公式テーマソングが歌われている間、ドラァグクイーンやもげへいさんがステージ前に出て、みんなでシャボン玉を飛ばし、フィナーレを迎えました。



 最後に集合写真を撮って、終了となりました。
 あとで今回の参加人数をお聞きしたところ、パレード参加者は350人、来場者数は1000人だったと教えていただきました(1000人は控えめすぎるかも…2日間でのべ数千人は来場しているのでは?と思いました)



岡山レインボーフェスタを振り返って

 「この場だけは安心して過ごせる」という声も聞かれたそうですが、誰もが祝福され、受け容れられ、自分らしくいられる場所だと感じました。誰もが、というのはトランスジェンダーやノンバイナリーの方であっても、同性カップルのファミリーであっても、人種や民族のマイノリティであっても、ご高齢の方であっても、HIVなどの病気や障がいとともに生きている方であっても、といった、本当にどんなマイノリティであっても、ということです。そう感じるほど、本当に多様な方たちが会場に来られていました。特に、他の地域ではあまり見られない中高年のゲイ・バイセクシュアル男性がたくさん来られていて(ちくわフィルムのおかげです)、それが個人的にはうれしかったです。地方だとなかなかパレード会場に行けない方も多いですよね。
 来場者の方たちだけでなく、ブースを出している方にしても、明るくておおらかな方が本当に多いと思いました。代表の市川さんやスタッフの方たちの「包容力」というか人間性が、岡山レインボーフェスタのあの温かな空気感の源なのだろうなと、今回強く感じました。
 
 岡山は本当にのんびりしててあったかくて、いい街だと思います。
 前夜祭の後に飲みに行って、とても楽しかったのですが、そこでお会いした方とフェスタの会場で会って、友達のように話してくださったり。そういうところがいいなぁ、素敵だなぁと思います。市内の全てのゲイバーが協賛しているところもスゴいし(本当にスゴいです。なかなかないことです)、素晴らしいです。
 
 「おかえり〜」と言ってくれそうな人がたくさんいる岡山に、また来年も行きたいと思いました。
  
(後藤純一)

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