FEATURES

レポート:ひろしまプライドパレード2025

10月11日に広島市で開催された「ひろしまプライドパレード2025」の模様をVENさんがレポートしてくれました。

  2025年10月11日(土)、ひろしまプライドパレードが開催されました。広島市では過去2回、広島フラワーフェスティバルの「花の総合パレード」に参加する形でパレードが開催されていますが(レポートはこちら)、単独での開催は今回が初となりました。
 テーマは「今日はわたしを歩いてみたい」。誰もがそれぞれの思いを胸に、自分らしく歩ける一日になりますように、という思いが込められています。心にしみるテーマです。
 事前エントリーが定員に達して参加が締め切られるほど、熱い注目を浴びていました。
 
 パレードの当日、心配された台風の影響もなく、快晴の青空が広がり、気温は30度まで上がりました。
 メイン会場は、市内中心部のアリスガーデン。市電「八丁堀」駅からすぐの場所でした。
 ステージイベントが始まる頃には会場にたくさんの人が集まっていました。
 
 まずはブースを紹介します。









 
 11時にステージでオープニングイベントがスタートしました。MCを務めたのは広島を中心に活躍しているタレントの松本裕見子さんと、地元の大学生の青木さんでした。

 共同実行委員長であり発起人でもあるイチさんが開会宣言をして、ひろしまプライドパレードを開催した経緯などをお話しました。一度は離れた広島でしたが、東京や他県のパレードに参加し、地元広島でも開催したいと思ったそうです。広島でかつてのイチさんのようにセクシュアリティで悩んでいる人に、パレードを歩いている人の姿が見えるだけで勇気づけられることがあるのではないかという期待があったそうです。イチさんの写真は掲載していません。お顔出しができないという状況は、今の広島を、そして日本の地方の現状を映し出していると思います。でも、たとえ顔は出せなくてもこうしてパレードを主催し、声を上げるというのは素晴らしいことだと思いました。
 続いて、メインサポーターである「HATAful」の木下麻子さん(ひろぎんホールディングス・サステナビリティ統括部長)が登場。木下さんはアライとして「もしかしたら、大切な人が悩んでいるかもしれない」と想像してほしいと呼びかけていました。

 続いてはArco Ilis Ensemble、タナベさん、ミウラさんによる音楽パフォーマンス。迫力ある歌声と演奏でした。

 それから、遠藤まめたさん(一般社団法人にじーず代表)と當山敦己さん(一般社団法人ここいろhiroshima共同代表)、河口和也さん(ひろしまプライドパレード共同実行委員長・広島修道大学教授)が登壇し、「ユース支援について」というテーマでトークセッションが行なわれました。若い世代で学校でも家庭でも自分を出せない状況はまだまだある、教師の中には研修を受けても自分の生徒にはLGBTQ+の生徒はいないという人がいる、など、地方の現実の厳しさが話し合われました。遠藤まめたさんは「今回こそ学習指導要領にLGBTを」と書いたプラカードを持っていました(遠藤さんは以前から性の多様性を無視した学習指導要領を変えるための運動を展開してきました)

 続くトークセッションは「HIV陽性者とHIV陰性者カップルの暮らし」がテーマ。広島出身の福正大輔さんさん&ぽんつくさんのカップルと、ひろしまプライドパレード事務局長の木谷さんが登壇しました。あまり聞けない陽性者と陰性者のカップルの生活。ぽんつくさんは薬を飲み忘れないように大輔さんに声をかけたりしているそうです。ほかにもU=UのことやPrEPのこと、映画『カミングアウトジャーニー』のことなども話されました。

 続いて「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟原告のまさひろさん&こうすけさんカップルと鈴木弁護士、河口和也さんによる「結婚の平等にYES!」のトークが始まりました。お二人が原告になった経緯や福岡地裁、福岡高裁の判決の振り返り、全国の訴訟の状況などについて話されました。河口さんが打ち合わせになかった質問をお二人に振ったりして、ぶっちゃけた楽しいお話もありました。

 パレードがスタートする時間が近づいてきました。ステージ前で整列が始まり、MCのお二人が並ぶよう呼びかけていました。


 14時、いよいよパレード出発です。アリスガーデン→金座街商店街→中央通り→本通り→広島本通商店街→アリスガーデンというコースでした。
 先頭には横断幕を持った河口さん、木谷さん、木下さん。その後ろに福正さん、ぽんつくさん、ご家族の方が続きます。えひめプライドのさとしぃさん、香川レインボーパレードの藤田さん、MARRIAGE FOR ALL JAPANのみなさんも歩いていました。レインボーのハートのバルーンやいろんなセクシュアリティのフラッグ、「一緒に法律を変えよう」「みんなが選べるように、私たちも選びたい」と同性婚実現を訴えるプラカードを持った方もいました。呉市の団体「いろいろくれし」のみなさん、山口レインボープライドのみなさん、Transgender Japanの村田さん、エクシオグループ、資生堂、NTTグループ、明治の社内LGBTQ+アライネットワーク「Marble」、司法書士会、日本LGBTサポート協会の方々などはグループで参加していました。大阪から産婦人科医の藤田さん、姫路からそらにじひめじのダイスケさん、全国のパレードに参加しているアライのあきおさん、のもとさん、木谷さんのお姉様も参加していました。お名前はわかりませんが、レインボーカラーの豪華なドレスを着たドラァグクイーンの方も参加していました。金座商店街では、沿道からたくさんの方がフラッグを持ってパレードを待っていてくれました。








 強い日差しの下、パレードは中央通りから路面電車が走る大きな通りへと進んで行きます。沿道にはたくさんの人が歩いていました。街の方たちの反応はとてもよく、市電の駅や沿道から手を振ってくれる人が多かったです。カラフルなフラッグが青空になびき、とてもきれいでした。
 広島本通り商店街もたくさんの人出でした。パレードは警察の誘導で商店街の真ん中を進んでいきます。両サイドからフラッグを持った人が応援してくれました。アーケードの下は日差しも遮られ、暑さも落ち着きました。それでもみなさん汗を流しながら歩いていました。
 そして、アリスガーデンにゴール。ステージから先頭を歩いていた木谷さんが「おかえりなさい」と出迎えていました。
 300人全員がゴールしたあと、みんなで記念撮影をしました。ステージ下に集まり、ハイチーズ。みなさん、素敵な笑顔でした。









 
★パレードのフォトアルバムはこちら

 最後にステージでクロージングイベントが行なわれました。
 団体紹介として、ブース出展している団体やパレードに参加した団体など、たくさんの方々がステージに上がり、ひとことずつお話しました。
 そして閉会のあいさつです。最初はイチさんから参加者の方たちへのお礼のスピーチ。パレードが無事に終わった「今」の感慨を語り、感極まっている様子でした。そして、実行委員長の河口さん、事務局長の木谷さんからごあいさつがあり、初開催のひろしまプライドパレードは閉幕しました。












 広島は、若者の他都道府県への流出が多いそうです。その中にはLGBTQ+も少なからずいるでしょう。そんな人たちが帰ってこれる街にしたい、本当は離れたくないのに、離れていく人を少なくしたい、そんな思いが込められたパレードでした。テーマの通り、「今日はわたしを歩」いた方が、きっとたくさんいたことでしょう。
 次回の開催は未定だそうですが、また広島でみなさんとお会いしたいです。
 お疲れさまでした。素敵なパレードをありがとうございました。

(取材・文:VEN)


VEN
岐阜県在住のゲイ(50代)で、1994年の日本初のプライドパレードから現在に至るまで、全国で開催されるプライドパレードのほとんどに参加し、自身のPRIDEを示しながら地方のパレードも応援してきた方で、その参加回数は100を超えています(おそらく日本一)。2006年の第10回レインボーマーチ札幌のステージでは、全10回に参加したとして「皆勤賞」を授与されています。「愛知・岐阜にパートナーシップ制度を求める会」や「性別や性的指向・性自認に基づく差別を根絶する愛知アクション」にも参加しています。2023年6月21日の朝日新聞「ひと」にも登場しました。

ジョブレインボー
レインボーグッズ