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レポート:いわてレインボーマーチ2022

5月21日、盛岡市で4年ぶりにいわてレインボーマーチがリアル開催されました。駅前では「LUSH」にレインボーフラッグが掲げられ、岩手のシンボル「アイーナ」もレインボーカラーに輝くなど、素敵な光景も見られました。

 2022年5月21日(土)、岩手県盛岡市で4年ぶりにいわてレインボーマーチ(IRM)がリアル開催されました。いわてレインボーマーチは2018年に初開催され、初回にして160人もの方が参加して盛り上がりを見せましたが(レポートはこちら)、翌2019年には過去最高クラスと見られる大型の台風19号の接近に伴い、やむなく中止となり(なんと不運な…)、2020年はコロナ禍の影響で延期となり、2021年はオンライン開催となりました。今年ようやく、念願叶ってリアル開催できることになり、本当によかったと思います。
 そんなIRMの開催を祝うかのように、盛岡駅では「LUSH」にレインボーフラッグが掲げられ、「アイーナ・いわて県民情報交流センター」もレインボーカラーに輝いていました。4年前には見られなかったことで、盛岡の街が着実にLGBTQフレンドリーに変わってきてるんだなぁと思えて、感慨深かったです。
 IRMの当日はちょっと汗ばむくらいの陽気で、かと言って日差しが強すぎるわけでもなく、とても過ごしやすい気候のなか、パレードが開催され、約120名の方々が盛岡市内を行進しました。
 レポートをお届けします。
(後藤純一)


アイーナがレインボーカラーに

 2018年の第1回いわてレインボーマーチの時は日帰りで行ったのですが(「はやぶさ」だと東京〜盛岡間は最短で2時間17分とかなので、日帰りも十分可能です)、今回は、アイーナが夜間にレインボーカラーにライトアップされるということもあり、前夜から1泊で行くことにしました。
 
 5月20日(金)夜に新幹線を降りて、改札を出ると、なんと、目の前の盛岡駅ビル「FES'AN(フェザン)」の入り口にある「LUSH」にレインボーフラッグが掲げられていました。レインボーカラーの商品もさりげなく並べられていて、素敵だなぁと思いました。ストーンウォール50周年のニューヨークに行った時に空港にレインボーカラーがあふれていて歓迎されているなぁと感じたのを思い出しました。(秋田のLUSHでもプライドに合わせた企画を展開したそうです。さすがはLUSHさん。拍手!です)

 それから、東西自由通路を通って西口出てすぐのところにある「アイーナ・いわて県民情報交流センター」に向かいます。IDAHOBITに合わせ、男女共同参画センターでパネル展示、図書展示、アイーナのライトアップが行なわれていたからです。行ってみてわかったのですが、アイーナってホールやギャラリー、イベント広場、図書館、パスポートセンターをはじめとする様々なセンターが入っている、とても立派な建物で(入ってすぐのところに奈良美智さんの作品が飾られていました)、そんな岩手県のシンボル的な建物がレインボーカラーにライトアップされ、夜空に美しく浮かび上がっている様は、壮観でしたし、感動的でもありました。
 6Fの男女共同参画センターに行くと(オープンスペースになっています。それもおしゃれ)いわてレインボーマーチとコラボしたパネル展示が行なわれていました。LGBTQやプライドパレードの説明だけじゃなく、結婚の平等やジェンダーに関するいろいろや、ちょっと踏み込んだ社会的なメッセージもあって、とてもよかったです。LGBTQ関連の図書を展示するコーナーもありました。





4年ぶりに開催されたいわてレインボーマーチ

 5月21日(土)は最高気温24度、ちょっと汗ばむくらいの陽気になりました。
 ホテルをチェックアウトした後、集合時間までどうしようかな…と検索したら、会場のすぐ近くに「もりおか啄木・賢治青春館」という(小学校で宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を暗唱させられた)青森県民には気になるスポットがあったので行ってみることに。すると、その隣の隣くらいに「プラザおでって(盛岡市観光文化交流センター)」という県産品を直売してたりレストランが入ってたりする建物があって、ふらっと入ったところ、またしてもレインボーを発見。ここに入っている「もりおか女性センター」がLGBTQ関連のイベントをいろいろ企画していたのがわかりました。岩手すごいなぁと感心しました。
 朝到着したVENさんと待ち合わせて5Fのレストランでランチをいただいたあと(手作りでヘルシーで美味しかったです)、中津川を渡って盛岡城跡公園(岩手公園)へ。13時過ぎにはもりおか歴史文化館前広場に各地のパレードの旗を持ったり、レインボーカラーのアイテムに身を包んだ方々が集まって来ていました。


 13時半にいわてレインボーマーチ(IRM)のオープニングイベントが始まりました。手話通訳だけでなく英語通訳も入っているのがIRMの特徴です。
 今年の実行委員のメンバーの方々がご挨拶した後、加藤まいさんが昨年、退任したこと、これまでの感謝を語りました(逆に、加藤さんが抜けても、新しい方たちがそれを受け継いで開催してくれたことに希望が持てました)。それからゲストとして、翌週に開催を控えたAkita Pride Marchの真木柾鷹さんと、トランスマーチの畑野とまとさんがスピーチしました。畑野とまとさんはPRIDEの起源について語り(ストーンウォール1周年記念のパレードを行なうにあたり、平和活動家でもあったブレンダ・ハワードが公民権運動のBLACK PRIDE(白人の奴らは俺たちのことを蔑んで見るが、ここにいるみんなはダイヤモンドのように黒く輝いてるじゃないか。我々はアフリカの血を誇りに思おうというスローガン)にインスパイアされて「GAY PRIDE」を掲げるようになった)、プライドパレードのスタートにふさわしい、重みのあるお話になりました。




 
 14時にパレードがスタート。東京とあまり変わらない24度くらいの気温で、でも日差しはそれほど強くなく、パレードにはちょうどいい天気でした。
 風船などで飾りつけされ、レディ・ガガの『Born This Way』やダイアナ・ロスの『I'm coming out』などのアンセムを流しているトラック(フロート)が先頭を行き、その後を歩く実行委員の方々が、「私がIRMに参加する理由」について寄せられたメッセージを読み上げながら歩きました。地元の当事者の方やアライの方、LUSHさんのコメントもありました。
 Akita Pride Marchの真木さんのほか、青森レインボーパレードの方、みやぎにじいろパレードを主催するみやぎにじいろCANVASの方、埼玉レインボーパレードを主催するレインボーさいたまの会の方、東京トランスマーチを主催するTransGenderJapanの方なども参加していて、カラフルなフラッグが翻っていました。
 LUSHのみなさん、男女共同参画センターの方たちも歩いてましたし、石川大我さんや、弘前市や山形市の市会議員さん、TGJスタッフで夏の参院選全国比例区に立候補する村田しゅんいちさんなどの姿もありました(同じく参院選全国比例区に立候補するトランスジェンダーのよだかれんさんも出発地点でご挨拶していました)
 それから、第1回から参加しているアライのお坊さん(なんと、2019年のニューヨークのパレードにも参加していました)にも3年ぶりにお会いできました。
 パレードの一行は、アーケードの盛岡大通商店街を進み、開運橋通へと曲がって、百貨店「パルクアベニュー・カワトク」の前を通り、盛岡城跡公園にゴールしました。商店街では(だいたいどの街でも女性のほうが手を振ってくれる方が多いのですが)若いイマドキの男の子たちが手を振ってくれていたのが印象的でした。


















 15時からクロージングイベントが行なわれました。
 実行委員の方が「こんなにたくさん来てくださってありがとうございます」とご挨拶し、声を上げていくことの大切さを語り、真っ直ぐな気持ちが伝わってきました。
 日本でも同性婚を!という本気を感じさせる「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンを展開しているLUSHの小山さんもご挨拶し、今年は参議院選挙があります、結婚の平等の実現のためにも、正しい候補者に票を投じましょうとスピーチしました。
 それから、前代表の加藤まいさんが、テレビの企画で2019年のニューヨークのパレードに参加する様子のドキュメンタリー番組を撮っていただいたそうで、70代の女性カップルに会って、「あなたは若いし、きれいだし、未来がある」と励ましてもらって、その放送を観た方からメールが来て、それが今のパートナーです、と紹介し、「やっと生きてていいんだと思えました」と涙ぐみながら語りました。「まだまだ岩手には生きづらさを抱えた人が多いです。今年の3月にも自殺未遂した人がいます。その人たちのためにもIRMが続いていくことに意味があります」とのスピーチに、温かな拍手が起こりました。




 最後に、みんなで集合写真を撮って、お開きとなりました。今回は約120名の方が参加したそうです。

 
 ブース出展もないし、ショーなどもない、(青森レインボーパレードと同様)プライドパレードの原点である「歩く」ということを真っ直ぐに実践していたいわてレインボーマーチでした。
 見たところ、地元の当事者の方の参加はとても少なかったような気がします。でも、青森の翔子さんが言っていたように、「歩けない人もいるから、歩ける人がその人の分まで(代わりに)歩く」ということなんだと思います。私もそういう気持ちで参加しています。いつか、一人でも多くの当事者の方が歩ける日が来るように…と願いながら、歩き続けたいと思います(お金と体力がある限り)
 まだまだ生きづらさを抱えた方が多い、カミングアウトできる人が少ない東北のパレードこそ、多くの人たちの応援が必要だと感じました。でも、1回目から4年が経って、アイーナのような立派な建物がレインボーカラーに輝いたことに象徴されるように、着実に、アライの方たちの支援の輪は大きくなっています。これからも、希望を捨てず、一歩ずつ、歩んで行けたらいいですね。

ジョブレインボー
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