COLUMN

改正ハラスメント防止法等が10月に施行、SOGIハラ関連のポイントは?

2026年10月に改正ハラスメント防止法等が施行されます。SOGIハラ関連のポイントを解説するとともに、LGBT法連合会のキャンペーンをご案内します

 コラム「改正パワハラ防止法のポイント:公表の自由、顧客対応、就活生」でお伝えしたように、2025年6月に改正労働施策総合推進法(ハラスメント防止法)※が成立し、カミングアウトの禁止・強制もパワハラに該当しうる、SOGIハラがカスハラに該当しうる、求職者に対するSOGIハラの防止も必要である、といった規定が加わることになりました。この改正ハラスメント防止法が2026年10月に施行されます。併せて、男女雇用機会均等法・指針も改正され、求職者へのセクハラを防ぐための対策を講じることも義務化されることになりました(厚労省の特設ページに法改正の内容がまとめられています)
 LGBT法連合会は7月3日、記者会見を開き、今般の法改正におけるSOGIハラ関連のポイントを説明しながら、全ての事業者(いわゆる会社の職場だけでなく学校や福祉現場なども含まれます)に防止措置義務が課されているにもかかわらず、まだまだSOGIハラ防止のための対策が講じられていない現状に鑑み、【それ、SOGIハラって知ってますか?】SOGIハラスメント防止・啓発キャンペーンを開始した旨をアナウンスしました。 
 以下、10月から何が変わるのか?というSOGIハラ関連の改正点のポイントと、LGBT法連合会のキャンペーンの概要をお伝えします。

※これまで労働施策総合推進法のことをわかりやすくパワハラ防止法と表記してきましたが、今回、パワハラだけでなくカスタマーハラスメント対策も盛り込まれることになったため、以降は「ハラスメント防止法」と表記することとします。


SOGIハラやアウティングにかかわる法律の整理

 2017年、人事院規則が改正され、国家公務員についてはLGBT差別がセクハラとみなされることになった一方、民間企業・団体についてはセクハラ指針の改正でLGBTに対する性的な言動もセクハラと明記されることになっただけでLGBT差別がハラスメントとみなされるまでに至らなかった(極めて限定的な法改正にとどまった)ということがありました。

 2019年、SOGIハラとアウティングの防止も盛り込んだハラスメント防止法が成立し、2020年から大企業が、2022年からは中小企業にもSOGIハラとアウティングの防止策を講じることが義務づけられました(職場においては実質的にLGBTQ差別とアウティングが禁じられるという、エポックメイキングにして歴史的な出来事でした)
 
 2023年にはいわゆるLGBT理解増進法が制定・施行され、職場にとどまらず学校や地域社会などで広く国民にLGBTQへの理解を求め、国や自治体が取り組んでいくことになりました(つい先日、基本計画が策定されました)
※同法は理念法であり、罰則などはありません。職場でのSOGIハラやアウティングの防止についてはハラスメント防止法を参照し、取組みを進めましょう。
 
 2024年11月にフリーランス法が施行され、個人に業務委託を行なっている場合についても、ハラスメント防止法と同様、SOGIハラとアウティングの防止が義務づけられました。
 
 2025年6月にハラスメント防止法や求職者に関するセクハラ防止指針が改正、2026年10月から施行。

 といったように、職場でのSOGIハラ(LGBTQ差別)やアウティングの防止をめぐっては、男女雇用機会均等法セクハラ指針、ハラスメント防止法、フリーランス法といった複数の法律にまたがるかたちで順次、法整備がなされてきました。これらは全国のLGBTQ団体が連携したLGBT法連合会の粘り強い政策提言活動の成果であり、その長年の活動に敬意を表するものです。


今般の法改正のポイント

◎カミングアウトの強要・禁止を禁止
 2016年に性同一性障害であることを職場に公表するよう強要されたとして愛知ヤクルト社員が提訴したり、2025年には長野県辰野町で「子どもの前でLGBTの話はするな」などと叱責され退職した学童支援員がハラスメントだと訴え、同町の教育長が陳謝するという出来事がありました。こうした事例は「カミングアウトの強要」「カミングアウトの禁止」であり、カミングアウトしたくない当事者や、カミングアウトしたい当事者の自由を奪い、尊厳を傷つける行為として問題視されました。
 2018年に国立市が制定した条例で「性的指向・性自認等を公表するかしないかの選択は個人の権利だ」として「公表の自由」が謳われていたのは実に先進的な取組みでしたが、今回の法改正により、「アウティングの禁止」に加えて「カミングアウトの強要」「カミングアウトの禁止」もハラスメントと見なされ、防止措置が義務づけられることになりました。
 
◎SOGIハラがカスハラに該当しうる
 カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会問題となったことを受けて、今般の法改正でカスハラ防止指針が策定され、10月から施行されることになりました。(厚労省の定義によると、職場におけるカスタマーハラスメントとは、①顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の事業主の行う事業に関係を有する者が行う、②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものです)
 このカスハラに、SOGIに関する侮辱や執拗な質問、ジェンダーの決めつけ、アウティングなども含まれ、これらの行為によって労働者の就業環境が害される場合、カスハラに該当しうるとして事業主が防止措置を求められることになりました。いわゆるお客様だけでなく、取引先であったり、福祉施設の利用者であったりしても該当します。
 カスハラへの対応策としては、これまでのハラスメント防止法で示されてきた4つの防止策に加えて、新たに「実効性を担保するために必要な抑止のための措置」が加わりました(後述します)

◎求職者へのハラスメント
 就活生などの求職者は、法的には労働者に該当しないため、男女雇用機会均等法セクハラ防止指針やハラスメント防止法で守られずにきましたが、就活生やインターンの方がセクハラに遭うケースが問題視されるようになり、今般の法改正につながりました。
 1つはハラスメント防止法の改正で、求職者に対するSOGIハラやアウティング、カミングアウトの強要や禁止についても防止策を講じることが義務付けられました。
 もう1つは男女雇用機会均等法の改正で、求職者セクハラ防止指針が新たに設けられ、求職者に対する性的な言動(相手のジェンダーにかかわらず)について事業主が防止策を講じることが義務付けられました。
 以前からトランスジェンダーの方が内定後にカムアウトしたら取り消されたり、面接の際に性別について根掘り葉掘り聞かれてしんどい思いをするなど、求職に困難を感じることが多く、当事者団体の働きかけによって履歴書の性別記載は任意とされるようになりましたし、性別を不問とする「ブラインド採用」も増えてきてはいましたが、今回、ようやく法整備が実現することになりました。


事業主に求められる取組み

 LGBT法連合会によると、今回の改正で事業主に義務付けられる措置は大まかに以下の通りです。
1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3. 職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
4. 実効性を担保するために必要な抑止のための措置 ※カスタマーハラスメント対策のみ
5. 併せて講ずべき措置(プライバシー保護措置等)
 これらに関して、より詳細な取組みが法に基づく指針に沿って義務付けられています。今回の改正を機に職場の各種規定や取組みを再点検し、啓発や対策を強化していくことが求められます。また、カスタマーハラスメントを防止する観点から、SOGIハラに関する啓発を職場の外、顧客や取引先をはじめとする社会全体に向けて展開することも重要になります。
 
 SOGIハラについてのコラムでもお伝えしていたように、2019年成立のハラスメント防止法でも、1、2、3、5の防止措置が義務付けられてきましたが、今回、ハラスメント防止法にカスハラの防止も盛り込まれたことで、新たに「実効性を担保するために必要な抑止のための措置」が追加されているところに注目しましょう。お客様など、企業側が懲戒措置をとれないような人がLGBTQへの差別的な言動やアウティングを行なった際にどう対応するか、という点について、事前に社内で話し合い、対応策を考えておきましょう。
 例えば2017年、“同性愛者が気持ち悪い”から入店できないような対策を取ってほしいと投書した利用客に対し、お店側が「お客さまを侮辱する方を、当社はお客さまとしてお迎えすることができません」と回答し、このことをこのお店で働いているゲイの方がTwitterで紹介したところ「すばらしい」との称賛が広がった(詳細はこちら)という素敵な出来事がありました。当店では従業員に対しても他のお客様に対しても差別的な言動は認めません、と毅然とした態度を示すことは、とても重要です。
 
 なお、ここまで述べてきた、法改正のポイントや、事業主に求められる取組みについては、LGBT法連合会が作成した「SOGIハラスメントおよびアウティング対策ガイドライン第3版」に詳しくまとめられています。ぜひお求めください。


「それ、SOGIハラって知ってますか?」LGBT法連合会主催・SOGIハラスメント防止・啓発キャンペーン

 7月3日の記者会見では、こちらの資料(注:PDFです)にあるように、SOGIハラ防止の取組みの状況(71.8%が何らかの取組みを実施している)は、パワハラ防止のそれ(95.2%)に比べて20ポイントも低いこと、取組みの内容別に見ると、アウティングがハラスメントであることの周知・啓発への取組みはたったの7%しか実施されていないことなどが示されました。全ての事業主に課された措置義務であるにもかかわらず、また、施行からすでに5、6年が経過しているにもかかわらず、まだまだSOGIハラに関する取組みが進んでいない状況…これを100%に近づけよう!との趣旨で、今回のキャンペーンがスタートしました。
 キャンペーンの概要は、以下のような内容です。
・キャンペーン特設サイトの開設
・SOGIハラ啓発ポスター・チラシの配布
・「SOGIハラスメントおよびアウティング対策ガイドライン第3版」の頒布
・SOGIハラ対策セミナーの開催
・労働局への申入れ行動

 例えばポスターをダウンロードし、職場に貼っておいたり、チラシを職場で配ったりということだけでも、従業員の皆さんへの啓発につながります。労務部や人事部、ダイバーシティ関連部署の方などはぜひ、「SOGIハラスメントおよびアウティング対策ガイドライン第3版」を読み込み、社内規程の改正や社内研修の見直し、相談窓口の担当者への周知などの取組みに役立ててください。








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