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「死ぬまでに愛する人と結婚したい」との願いが叶わなかった原告の佐藤さんへの思いを胸に2月24日、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告や弁護団、支援者の方たちが東京地裁での口頭弁論に臨みました

記事日付:2021/02/25

 2月24日、東京地裁で「結婚の自由をすべての人に」訴訟の口頭弁論(田中寛明裁判長)が開かれました。裁判所に足を運んだ原告や弁護団、支援者の方たちの多くが、亡くなった原告の佐藤郁夫さんへの思いを胸にこの日を迎えました。佐藤さんは2019年4月の第1回口頭弁論で意見陳述した際、「私はHIV以外にも病気を抱えており、寿命はあと10年あるかどうかだろうと覚悟しています。死ぬまでの間に、パートナーと法律的にきちんと結婚し、本当の意味での夫夫(ふうふ)になれれば、これに過ぎる喜びはありません」と語っていましたが、その願いが叶うことはありませんでした…。永野弁護士は陳述の最後に「愛する人と結婚したい、そんな当たり前の願いが実現できなかったのです。憲法はそれを許すのでしょうか。佐藤さんはそれを問うています」と訴えました。


 1月4日、佐藤さんは帰宅途中に倒れ、脳出血との診断を受けて入院、18日に容体が急変し、息を引き取りました。
 パートナーのよしさんは病院から「血縁者にしか病状は説明できない」と言われ、容体が急変した時も佐藤さんの肉親にしか連絡が行かなかったといいます。入院した病院はHIV診療の拠点病院で、多くのゲイの方が受診してきた病院です。入院時の連絡票に「パートナー」という記述欄もあり、同性パートナーに一定の理解を示していました。それでも、このような対応だったそうです。
 結婚によって法的に親族と認められなければ、命に関わる重要な局面で医療機関に家族として扱ってもらえないケースも少なくありません。よしさんも、佐藤さんの妹さんが連絡していなければ、人生を共に歩んできたパートナーの最期の瞬間に立ち会うことすらできなかったかもしれません。
 ぷれいす東京代表の生島嗣さんは、「佐藤さんは人前結婚式を挙げ、家族にもパートナーを紹介して、つながりを築いていた。彼はあらゆる手を尽くしていたんです」と語ります。「でも、もしそのつながりがなかったら…。やはり社会が変わって、制度が変わらないと、守られない人権があると実感しました。だからこそ、この裁判が道を切り開くと切に願っています」
 同じ原告の一人であるただしさんは、「これから先も一緒に乗り越えていって、若い世代に選択肢を勝ち取ろうという話をしていたので、いまだにちょっと信じられない」と、佐藤さんへの思いを語りました。「自分たちでも同じことが起こりうると思いました。そして日本中にそういう人たちがたくさんいて、ものすごく不安な気持ちで毎日暮らしているんだなと想像しました」
 やはり原告の一人である小野春さんは、「パートナーを亡くすという体験だけでも悲しいのに、その悲しい真っ最中に、家族として認められていないということで尊厳がさらに傷ついてしまう。しかもそのことに耐えなきゃいけない。すごく理不尽だと感じます」と、小野さんのパートナーの西川麻実さんも「これがふうふじゃなかったら何がふうふなんだろうと思う」「今こうやって話している間にも、無念の思いを抱え、もしかしたら亡くなる人もいるかも入れない。一刻も早く婚姻の自由を国が保障してほしい」と語りました。
 弁護団の中川重徳弁護士は、「改めて、私たちはみな限りある人生を、本当に一瞬一瞬が大切なはずの人生を生きていて、それがどんどん過ぎているということを思い知らされた」と語ります。「国会では、首相が『(同性婚は)我が国の家族のあり方の根幹に関わることなので、極めて慎重な検討をする必要がある』と言っていました。でも、本当に一瞬一瞬の大切な時間が過ぎているんだということを、考えていただきたいと強く思っています」
 
 口頭弁論で意見陳述した永野弁護士は、佐藤さんと同年代のゲイとして、亡くなった佐藤さんの思いを代弁するかのように、裁判長に訴えました。
 世間が同性愛を「異常」「変態」と見なしていた時代を過ごしてきた佐藤さんは、2019年4月の第1回口頭弁論で「同性どうしの婚姻が認められることは、私が若い頃に持っていた、自分自身に対する否定的な気持ちを、これからの世代の人が感じなくてもよい社会にすることなのです」と語りました。
 2019年1月に婚姻届を提出した際、区役所職員から「おそらく不受理になると思います」と言われる一方で、結婚記念カードを発行していただき、佐藤さんは「まるで結婚が認められたような気持ちになり、とても幸せを感じました。いつか本当に婚姻届が受理されたら、きっと感動して泣いてしまうだろうと思います」とうれしそうにしていたそうです。
 そして、病院で親族として認められなかったことについて「佐藤さんの入院先はHIV診療の拠点病院であり、多数のゲイ当事者を受け入れている病院です。その病院ですら、愛するパートナーの病状の説明を受けることもできない。こんな理不尽なことが繰り返されているのです。もはや医師の善意に頼ることはできません。法制度が必要なのです」と永野さんは述べました。
 佐藤さんは第1回口頭弁論で「私はHIV以外にも病気を抱えており、寿命はあと10年あるかどうかだろうと覚悟しています。死ぬまでの間に、パートナーと法律的にきちんと結婚し、本当の意味での夫夫(ふうふ)になれれば、これに過ぎる喜びはありません。天国に逝くのは私のほうが先だろうと思っていますが、最期の時は、夫夫(ふうふ)となったパートナーの手を握って「『ありがとう。幸せだった』と感謝をして天国に向かいたいのです」と語りましたが、残念ながらその願いが叶うことはありませんでした。「愛する人と結婚したい、そんな当たり前の願いが実現できなかったのです。憲法はそれを許すのでしょうか。佐藤さんはそれを問うています」
「私たちは、本件審理に関わるすべての関係者が、この佐藤さんの無念の思いと問いかけを一時も忘れることなく、個人の尊重をうたう憲法の理念に深く思いを致し、自らの良心に従って、本事件に向き合っていくことを切に願うものです」
(意見陳述の全文はこちら
(口頭弁論が終わった後のオンライン報告会で永野弁護士は、「佐藤さんの思いを必ず実現し、天国にいる佐藤さんに届けたい」と語っています)
 

 東京地裁は以前から、原告の思いを直接法廷で聞く「本人尋問」を行なう必要はないとの方針を示し、抗議の署名が集められていました。2月24日の口頭弁論に先立ち、「原告が直接語る機会を奪わないでください」と訴える1万8029筆の署名と、65名の支援者から34通の(連名もある)手紙が裁判長宛てに提出されたそうです。
 弁護団の上杉崇子弁護士は、「このように大きな社会の注目を集めている裁判で当事者尋問をしないのはかなり異例」と語ります。「このように注目されている裁判で、当事者がどのような言葉を語るかは重要であり、本人尋問は裁判所の責務だと思っています」
 原告のただしさんも、「当事者ひとりひとりがどんな思いで生きているかを本人尋問を通して、聞いてほしい」と訴えます。「意見陳述では書ききれないことがたくさんあります。人生の中でいろいろな不平等に直面したり、嫌な思いをしたり、二流市民のように扱われたりしたことがたくさんありました。そういったリアルな現状を裁判官に本人尋問で聞いていただきたいんです。それで良心に従ってきちんと考えていただきたいです」
 
 

参考記事:
死ぬまでに愛する人と「夫夫」になりたい。法廷で語ったその願いは、叶わなかった。(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/marriageforall-210224
同性婚裁判の尋問を求める署名に1万8000人以上が賛同。「どうか原告の声を聞いて。不要だと言わないで」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/same-sex-marriage-petition_jp_6035de04c5b62daa0bff2004
同性婚裁判の原告が死去。パートナーは医師から病状説明を拒まれた(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/same-sex-marriage-tokyo-lawsuit_jp_60361899c5b6c0f82b495c6c

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