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フィリピンの国会に同性パートナーシップ法案が提出されます

 フィリピンの国会議員が同性パートナーシップ法案を国会に提出することが明らかになりました。
 
 GAY STAR NEWSによると、ダバオ・デル・ノルテ選出のパンテレオン・アルバレス議員は、2017年8月にも同性パートナーシップ法案を提出していました。同性カップルの配偶者としての権利と義務、養子をとる権利なども認めるものです。しかし、この法案は、国会を通過しませんでした。
 フィリピンの国会は今年に入って、オンラインで国民に「下院で同性パートナーシップを承認する法案が提出されることに賛成ですか?」と尋ねる調査を行い、多数の承認を得ました。
 アルバレス議員はFacebookで「政府が同性カップルを認める時が来た。国民がそう望んでいる。法の下に彼らの尊厳と平等、パートナーシップとをリスペクトする十分な道具立てが整った」「この国全体に、彼らのカラーを輝かせたい」「毎日が愛のセレブレーションだ」と述べ、再びシビルユニオン法案を提出する意向を明らかにしました。
 一方、このシビルユニオン法案に対して、LGBT権利擁護団体は、2017年時点から批判しています。LAGABLABという団体は、「この法律は、結婚しているカップルとシビルユニオンのカップルの間の差別を生み出すものであり、いかなる意味でも結婚の平等にはならない」とFacebookで述べています。「これは、LGBTQIのカップルを二級市民に貶めさえする。性的指向や性自認、性表現に基づいて法的な差別を合法化する危険な結果をもたらすものだ」。国会によるオンライン調査についても「誤解を招き、不十分な情報しか与えられておらず、選択肢が狭すぎるため、細かい意見を聞くことができていない」と、「国会は、我々の権利を、単純に個人の意見やオンライン投票で決めるべきではない」と批判しています。
 
 フィリピンでは1990年代からゲイ解放運動が盛んになり、首都マニラでは、アジアで初めて1994年の6月にプライドパレードが開催されました。以降、毎年6月末にパレードが開催され続け(アジアでの最長記録を更新中です)、今年の参加者は7万人に達し、東南アジア最大規模となっています。
 社会的に見ると、タイのように寛大で、LGBTはオープンにのびのび暮らしている一方で、政財界などではなかなかカミングアウトが難しいという実情もあるようです。ゲイシーンもかなり発展しています。GALLUP社の調査では、自国が同性愛者にとって住みやすいと回答した人の割合は、アジアでダントツの1位です。
 しかし、LGBTの権利を認める法制度は未だに何もありません(19年前に起草されたLGBT差別禁止法案は、繰り返し国会に提出されてきましたが、成立を見ていません。この7月にも上院で却下されています)
 2010年には、Ang Ladlad(カミングアウトという意味)というLGBTの政党が結成されたものの、不道徳だとして選管が選挙への出馬を認めず、最高裁まで争ってようやく出馬が認められたという出来事もありました。
 2016年にはジェラルディン・ロマンがトランスジェンダーとして初の国会議員に選ばれています。
 
 政治情勢に関して現在、最もLGBTの頭を悩ませているのは、ドゥテルテ大統領の態度です。
 選挙キャンペーン中は、「結婚はアダムとイブ、そしてゲイのためのものだ」などと述べて、同性婚を支持する意向を示していましたが、大統領に就任するやいなや、180度、態度を変えました。
 2016年には演説の中でゴールドバーグ駐フィリピン米大使を「同性愛者で、ろくでなしだ」などと中傷し、大使の(ひいては米国の)怒りを買いました。
 2017年には「男にも女にもなれるからジェンダーはないというのはあちら(米国)の文化だ。私たちには当てはまらない」などと発言。「われわれはカトリックで、(男である)自分が結婚できるのは女性のみ、女性は男と結婚すると定めた民法がある。これぞフィリピンの法律で、なぜ(多様な)ジェンダーを受け入れなければならないのか」
 2018年6月、彼は再びスタンスを変え、同性パートナーシップを支持すると述べました。ころころと態度を変える大統領に、LGBTコミュニティは不信感を抱いているようです。
 今年1月には、同性愛のカトリック司教と児童虐待の問題に関して「司教どもはろくでなしだ。実のところ、連中の大半はゲイだ」と述べました。「連中はカミングアウトして独身の誓いを捨て、男の恋人を持っても構わないことにするべきだ」
 そして今年5月、来日中に「昔ゲイだったが、それを自分で治した」などと語り、物議を醸しました。政敵であるアントニオ・トリリャネス上院議員について、体の動きが見るからに同性愛者だと揶揄する一方、元妻のエリザベス・ジマーマンに出会う以前は自分もゲイだったと「告白した」のです。「つまりトリリャネスと私は似た者同士だが、私は自分で(同性愛を)治した。元妻に出会って、再び男になったんだ」「美しい女性が私を治してくれた」
 この発言について、BahaghariというLGBT団体は「危険で時代に逆行するものだ」と批判しています。「無知、偏見、憎しみといった、より深刻な症状を呈している」
 
 政治的に様々な問題を抱え、先行き不透明なフィリピン。同性カップルの権利を認める法律が成立を見るのは、まだ先の話かもしれません。
  
 

参考記事:
Philippines Congress to consider same-sex civil unions (again)(GAY STAR NEWS)
https://www.gaystarnews.com/article/philippines-congress-to-consider-same-sex-civil-unions-again/#gs.r92lv0
Philippines congress sees new push for same-sex unions(PINK NEWS)
https://www.pinknews.co.uk/2019/07/24/philippines-same-sex-civil-partnerships/
フィリピンで初のトランスジェンダー議員誕生、保守的な社会に変化(ウォール・ストリート・ジャーナル)
https://jp.wsj.com/articles/SB10359106571790804599004582061314292116278
フィリピンのドゥテルテ大統領、「かつてはゲイだった」が「治った」(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35137888.html
フィリピン大統領「私も同性愛者だったが『治した』」(ニューズウィーク)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/post-12251.php
ドゥテルテ比大統領、同性愛が「治った」と発言し物議(AFP)
https://www.afpbb.com/articles/-/3228367

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