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LGBTQの完全な平等の達成を目指し、雇用や教育機会などにおけるLGBTQ差別を禁止する連邦法案が米国会に提出されました

 3月12日(現地時間)、アメリカの国会(下院議会)にLGBTQへの差別を禁じる連邦法案「イクオリティ・アクト」が提出されました。
 
 フロリダ州、テキサス州、アラバマ州など全米の30もの州で、LGBTQ差別禁止法がなく(逆に宗教自由法によって差別が正当化されたりしている)、連邦法としても明確なLGBTQ差別禁止法が存在していないため、実際にLGBTQが職場から追放されるケースが多々起こっているという現状があります。
 性的指向・性自認による職場での差別の禁止を国レベルで実現しようとする動きは、当事者団体とオバマ前大統領が何年も取り組んできた課題ですが、道半ばとなっていました(連邦議会で多数を占める共和党の反対にあったためです)
 トランプ政権になって以降、状況はにわかに厳しくなっています。トランプ政権は差別禁止どころか、トランスジェンダーの従軍を禁止する措置を発表し、3月13日には国防総省が、トランスジェンダーの新規入隊を禁止し、すでに従軍している兵士の性別変更も禁止という方針を発表するに至りました。
 2017年4月の「ドナルド・ザルダ裁判」(スカイダイビングのインストラクターとして働いていたドナルド・ザルダ氏が、顧客にゲイであることを話した結果、解雇されたとして訴えた裁判)では、同性愛者に対する差別は公民権法上の性差別には当たらないとして訴えが棄却され、法律でも守られないし、司法でも守られないという厳しい現実が浮き彫りになりました。これを受けてグーグルやマイクロソフトなど50社が連邦裁判所に意見書を提出し、LGBTQ差別を禁止する連邦法によって従業員を擁護すべきだと訴えました。
 司法が頼りにならないとすれば、立法しかない、幸い中間選挙で下院は民主党が過半数を回復した、何より国民の支持がある(世論調査で71%がLGBTQへの差別を禁じる連邦法に賛成しています)、ということで「イクオリティ・アクト」が提出されるに至ったのでした。
 法案は1964年の公民権法をもとに作成され、現時点で禁止されている人種、性別、宗教、国籍での差別に性的指向と性自認が加えられています。
 
 先日の中間選挙での多様性の勝利を象徴し、合衆国史上初の女性下院議長となったナンシー・ペロシ下院議員と、イクオリティ・アクトの起草に中心的に携わったデヴィッド・シシリーニ下院議員(オープンリー・ゲイの方です)は、『Advocate』誌上でこのように訴えています。
「本日、下院の多くの議員たちが、LGBTQコミュニティとアメリカに完全な平等の恵みを授けることへの記念碑的な一歩を踏み出しました。
 先日の中間選挙で史上最も多様性に富んだ下院議員たちが誕生しましたが、彼らのビジョンや価値観に導かれて、そしてあなた方の勇気のおかげで、私たちは「イクオリティ・アクト」の導入によって完全にLGBTQのアメリカ人の平等を達成することができるでしょう。
 1964年の公民権法のように「イクオリティ・アクト」はシンプルなものです。法の下の平等、性的指向や性自認によって差別されないことを保証します。職場、教育、家を買うとき、クレジット、司法、公共の住まいにおける差別を取り除きます。人種や宗教においてすでに保護されているのと同様に。
 LGBTQに完全な公民権を保証することは、誰かにとっては「考えられないこと」かもしれませんが、それは可能です。この法制化が「避けられないこと」と「考えられないこと」の間の距離を縮めるのです。私たちがイクオリティ・アクトを下院の議場にもたらす時、きっとそれは通過することでしょう。私たちは超党派の支持を得られ、企業の間でも強い支持を得ています。最も重要なことは、私たちはアメリカ国民の支持を得ているということです。71%がこの法案に賛成しているのです。
 いったんこの法が通ればーー私たちはきっと通しますーーそれを止められません。
 私たちは、このLGBTQの完全な平等が達成されるまでは、休息できません。
 私たちは、トランプ政権の差別、アンチLGBTQの議題、トランスジェンダーへの憎しみに満ちた攻撃を打ち負かそうとする活動において、決して気を緩めません。大統領のトランスジェンダー従軍禁止措置は、残酷で身勝手な決断です。自由、公正、平等こそはアメリカ人の基本的な価値観です。偏見と差別ではありません。
 この6月、私たちは、野蛮な差別に反抗して路上に飛び出し、ハラスメントや逮捕や憎悪の終了を要求してから(ストーンウォール暴動から)50年を迎えます。その後の半世紀でLGBTQは、不満や痛みを疲れ知らずの活動に変え、自由、公正、平等を求める闘いにおいて素晴らしい勝利をおさめてきました。
 しかし、たくさんの闘いで成功し、イクオリティ・アクトを通すために、私たちはさらに草の根の組織化を続けていかなくてはいけません。この何十年の間、憎悪犯罪取締法の成立、同性愛者従軍禁止方針の撤廃、結婚防衛法の撤廃、そしてアメリカ全土での同性婚の達成という、輝かしい、歴史的な前進を勝ち取ってきた私たちのコミュニティのパワーを、継続しなくてはなりません。トランスジェンダーへの憎悪に満ちた攻撃を終わらせるためにも。
 自由、公正、平等への行進は、決して否定されないでしょう。憎悪は決してプライドを打ち負かすことはないでしょう。私たちが前進し続ければ、ハーベイ・ミルクの「声を上げ、声を届けようと努力すれば、きっと権利は与えられる」という言葉を思い出させてくれるはずです」
 
 2012年の選挙で同性愛者であることをカミングアウトして初めて上院議員に当選し、再選も果たしているタミー・ボールドウィン上院議員(ウィスコンシン州、民主党)は、「現政権では教育、司法、防衛の分野でLGBTQに対する法的な保護が失われています」と指摘します。
「みんなが夢を追いかける機会、成功するチャンスを同等に持つ権利があります。ですからこの平等法を提出しました」
「この平等法はそのための闘いの答えです」
 彼女は、この法案が(民主党が多数を占めた)下院を通過することは間違いないだろうとしたうえで、上院でも採択されることを望みます、と語ります。「もし上院で否決されたとしたら、2020年の大統領選挙はとても重要なものになると国民に示すことになるでしょう」
 
 
参考記事:
成立なるか? アメリカでLGBTQの権利を守る法案が提出される(ELLE Japan)
The Equality Act Is Just the Beginning(Advocate)

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