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航空会社が機内エンタメの映画の同性愛シーンをカットしていることが発覚、監督が憤慨

記事日付:2019/11/05

 レズビアンの高校生が主人公の映画『Booksmart(ブックスマート)』の中の同性のラブシーンが、エティハド航空の機内放映で全カットされていることが明らかになり、監督が怒りを表明しました。 
 
 今年製作されたアメリカ映画『Booksmart(ブックスマート)』は、主人公のエイミーとモリーを中心に、高校生たちの苦悩や恋愛を描く青春映画。エイミーはレズビアンで、女性どうしのキスシーンやラブシーンも描かれています。しかし、映画評論家ミカエラ・バートンによると、エティハド航空の機内ではこうしたシーンがカットされているそうで、大きな議論を呼んでいます。
「『Booksmart』を飛行機で見たんだけど、レズビアンのラブシーンが全カットされてた。キスシーンさえもね! ところで、男女のキスシーンはカットされてないから心配しないでいいよ」
 
 この投稿を見た『Booksmart』の監督オリヴィア・ワイルドは、SNSで以下のようにコメントしました。
「これって最悪。ヌードシーンがあるわけでもないのに。飛行機での鑑賞に何の問題があるっていうの? その航空会社どこ?」
 このオリヴィアのツイートには、多くの反応がありました。ある人は、デルタ航空ではレズビアンという言葉もカットされていたと明かし、オリヴィアは「レズビアンって単語を検閲するだなんて、理解できないくらい狂気の沙汰だよ。何が起こってるの」と混乱した様子でコメントしました。ほかのネットユーザーは、ゲイであるエルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』でもラブシーンがカットされている(男女の過激な性描写で知られる『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は特に変更なしに上映されていたのに)と指摘しました。
 
 そもそも、飛行機で視聴できる機内エンタメとしての映画作品は、それぞれの航空会社の規定に従って選ばれており、その内容によっては編集されたものが流されることもあるようです。
 しかし、男女のラブシーンなら(R18だろうが)認められ、同性のラブシーンは(たとえキスだけでも)認められないというのは不平等で、これまでもたびたび問題になっています。
 女性どうしの愛の素晴らしさとホモフォビアゆえの困難を描いた世紀の名作として名高い2015年の『キャロル』も、一部の航空会社で女性どうしのラブシーンがカットされたことが明らかになり、ツイッターで#freecarol(キャロルを解放しろ)というハッシュタグが作られるほどの騒動となりました。
 また、クイーンのフレディ・マーキュリーのセクシュアリティを正面から描いた『ボヘミアン・ラプソディ』も、エミレーツ航空で、ゲイ的なシーンはおろか「ゲイ」という言葉そのものがまるごとカットされていたことが明らかになりました(このバージョンを観た方は、フレディがなぜ彼女にフラれたのかも意味不明なまま「ただイジイジ苦悩し続ける映画になってる」と報告しています)
 オリヴィア・ワイルドは「私たちのセクシュアリティはたびたび、性倒錯であるとか、悪霊のせいであると言われてきて、私たちのアイデンティティを示す単語は、呪いの言葉だとみなされている。2019年には、そういったものがもっと受け入れられるようにしよう」「すべての航空会社、特に自分たちのインクルーシブネス(多様な性を包括的に受け入れる姿勢)にプライドを持つ航空会社に要請します。(映画の編集をした)第三機関との提携を止めて、視聴者自身が見るかどうかを選択できる(ように視聴前に表示される)未成年者の視聴に対する忠告を信用してください」とコメントしています。
 
 この騒動の数日後、名指しで批判を受けたデルタ航空が、「機内で見られるすべての映画は、配給会社からのオリジナル版か、あらかじめ編集されたものが提供される」「『Booksmart』と『ロケットマン』で同性のラブシーンがカットされていたことは不必要な編集だった、カットされていないオリジナルバージョンを手配し直した」との声明を発表しました。
「配給会社に、デルタ航空用にLGBTQ+のラブシーンを含む『Booksmart』と『ロケットマン』の特別バーションを提供することに同意してもらった」
 また、デルタ航空ではすでに、19世紀の英国に実在したクィア女性を描いたドラマ『ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ』や、アカデミー作品賞受賞映画『ムーンライト』など多数の同性愛作品を提供しており、同性のラブシーンがカットされたのはデルタ航空の意思ではないと断言しました。
 なお、デルタ航空は(アメリカン航空などと同様)多くのプライドイベントに協賛しているアライ企業です。
 
 『Booksmart』のレズビアンシーンをカットしたのはエティハド航空で、『ボヘミアン・ラプソディ』からゲイに関する要素をカットしたのはエミレーツ航空ですが、両社とも、同性愛が違法である(逮捕される可能性がある)アラブ首長国連邦の航空会社です。しかし、世界中の多様なお客様に日々サービスを提供している国際的な航空会社が、このような(『ボヘミアン・ラプソディ』のストーリーが意味不明になるほどの)改ざんを行い、同性愛嫌悪をあらわにすることは、企業としてどうなのでしょう。少なくとも国際旅行の1割を占めるゲイ&レズビアン旅行客は、そのような航空会社を利用したがらないでしょうし(きっと自分たちは歓迎されないんだろうな、と思ってしまいますよね)、アライの方々の中にも同様に感じる方が多いはずです。政治の影響が比較的小さく、自由や効率性が重視される航空業界において、両社が同性愛コンテンツへの「検閲」を見直す日が遠からず訪れるのではないでしょうか。
 
 それはそうと、『Booksmart』、とても面白そうな映画ですね。日本で公開されるのを楽しみに待ちましょう。
  
 
 
参考記事:
機内の映画で「同性愛者のキスシーン」だけ『全カット』、監督が怒り(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17314907
LGBTラブシーン“だけ”全カットした航空会社、批判受け『ロケットマン』等の編集を無効に(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17316199
米デルタ航空、機内映画から同性愛ラブシーンカットに対し弁明(Rolling Stone Japan)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/32389

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