アウト・ジャパン通信Vol.6
OUT JAPANからの案内
◎はじめに
こんにちは!
『アウト・ジャパン通信』第6号をお送りします。
『アウト・ジャパン通信』では、アウト・ジャパンのメンバーが行っている日々の活動を
Youtubeの動画で発信すると共に、毎回さまざまなゲストにコラムを寄稿いただいて、
多様な視点からLGBTにまつわる情報を発信しております。
ゲストコラム
「今を生きるゲイとしての自分」
僕が子どものころは、テレビなどで同性愛者は偏って描かれることが多かった。
僕は友だちや兄弟と、それを面白がって見ていた。
また、近所に住む少し青髭の濃い人を、ずっと「ホモ」だと ばかにして笑っていた。
自分の持っていた感覚は そういうもので、自分とつなげて考えることなど毛頭なかった。
だが、ある日、本屋で見つけたゲイ雑誌に衝撃を受けてから、自分がゲイであることを自覚せざるを得なくなった。
自分が、幼少期から散々ばかにしていたものであったという「隠すべき気づき」。
それは僕の生き方を否定し、今に続いている。
多くの被差別的マイノリティー性を持つ人にとって、その「隠す」ということの自傷性、暴力性は理解できるのではないだろうか……?
・自己紹介/最初にお伝えしたいこと
僕の名前は、ゆうすけ。今年 43歳で、小学校の教員をしている。
今回コラムを書く機会を得て、「ゲイである」ことによる自分の生き方を振り返ることになった。
これは、あくまで僕個人の経験や考えである。
特にマイノリティー性を持つ人々は大きな主語で語られることが多いので、この前提は必須だ。
そのため、決して「ゲイはこうである」などという大きく括った目線で捉えないでほしい。
・“自覚後”の煩わしさ
さて、僕がゲイであることを自覚したのは、上述の雑誌がきっかけだ。
しかしながら衝撃を受けたとはいえ、そこから自分の生き方や生活がガラっと変わったかというと、そんなことはない。
「誰にもバレないように生きていくという辛さ」は確かにあるが、ほとんどの日常生活に変化はないし、多くの場面で僕は それを意識せずに過ごすことができていた(だから何の進展もなかったともいえるが…)。
しかし、僕の体をこわばらせ、顔を引きつらせる場面が要所要所に訪れるのは確かだった。
そして、それは「あるある」から「思いもよらない」ものまで、僕をときどき突き刺すのだ。
男友だちと女の人の話をするとき、ゲイを取り上げた番組を家族と観てしまうとき、ずっと文通していた「彼女」と体の関係を持つとき、「彼女は?」「結婚しないの?」という無神経な質問を浴びせられるとき、保険の加入時に「将来設計」の話をされるとき、LGBTQ+について取り上げた研修を受けるとき……。
これらは大人になって隠していればいるほど、自分の周囲に増殖していった。
ついには、「隠している自分」がデフォルトの状態になり、それが自分の生き方となってしまっていたのだ。
・身に付いた習性
僕にとって「隠している自分」を持つということは、人との関係性に踏み込まなくなるということだった。そして、それは「ウソをつく自分」でもあった。
深入りすれば気づかれる危険性があるため、見事に僕は、浅い人間関係を求めるようになっていた。平気でウソをついた。
教員仲間から、「君は大体 蚊帳の外にいる感じやな」と言われたことを忘れられない。
「それ以上踏み込んではいけない」と、オートマティックにブレーキが掛かるようになっていた。
反射的に言葉をつぐみ、ニアリーな言葉を発していた。
ハンター×ハンターでキルアが兄のイルミに刺されていた(釘ならぬ)棘のごとく、僕は僕自身に規定範囲から抜け出せない棘をさしていたのだ。
・最愛の母の死──。そして、迷走の20代
同時に、22歳で最愛の母を亡くした僕は、こじらせていく。
自室のゲイ雑誌を隠している引き出しを母に勝手に開けられそうになったときに、僕は母をひどく拒絶した。
食事の際、母が弟に「〇〇(弟)は まともにしてね」と言ったとき、勘付かれていることを悟るとともに大きく傷ついた。
そして、マザコンだった僕は、母の死を自分を都合よく縛る鎖にしてしまった。
「自分は、まだ好きになれる女性に出会っていないだけかもしれない」この考え方で、20代を過ごすことになる……。
数人の女性ともお付き合いをした。
だが、性的欲求は満たされないので、ゲイ雑誌やビデオは購入したり、掲示板で男の人と並行して会ったりもしていた。
同じような思いをしているゲイは少なくないようだ。
もちろん僕自身も そんな無理が続くはずもなく、限界がきた。
・振り切れはじめた30代
と同時に、30代になったころ、スマホとともに出会い系のアプリが登場。
さらに、ゲイコミュニティも増えており、「僕は やっぱりゲイだ」という二度目の自覚を後押しした。
とはいえ、ゲイ界隈(笑)に本格的に乗り出すような冒険はせず、細々と出会いなどを探していた。
幸い仕事上、さまざまな人権課題について学ぶ機会があり、多くの人と出会う。
そのことによって、徐々にではあるが僕の「隠している自分」のメッキが はがれていくことになる。
信用できそうな人にすら ごまかして付き合うことの後ろめたさと煩わしさに辟易し、次第に職場で仲良くなった「女性」には打ち明けていった。
(男性に打ち明けにくいという自分の中のハードルは今でもある)
そうすると、他の人との関係でも わざわざ隠すことがアホらしくなった……。
というよりも、「なぜ僕が遠慮しないといけない、隠しもせんけど、自分から打ち明けもせん!」というマインドが強くなり、今に至る。
SNS上でもバレることを気にせずに投稿するようになった。
「あぁ、これでいいのか!」という気持ちが僕を支えている。
結局、散々躊躇して、今年の正月に家族全員にも打ち明けることができた。
(言おう言おう……と思い続けて、10年かかった)。
・世の中は変わったか? 改めて俯瞰すると──
僕は生まれ変わり、「隠している自分」に今生の別れを告げた……。
とは実際はならず、新たな人間関係を作る際、ふとした人との関わりの中では まだまだ「隠している自分」が顔を出す。
イルミの棘は随分抜けたが、まだ刺さっている。
しかし、それは学んできた人権課題と関わって考えると、「刺されている」というのが僕の認識だ。
そういう意味で、僕は現状の社会にすら怒りを持っている。
被差別の立場にあるということは、「隠すこと」や「ウソをつくこと」に無駄な労力や時間をさくということだ。
それを奪われてきたということは、つまり尊厳を奪われている、とも言える(僕が奪っている側にもいることを忘れてはいけない)。
最近、ゲイ界隈(笑)のキラキラした世界にも足を踏み入れつつある。
SNSも含めて そこに住まう人たちは、まるで我々ゲイが差別的まなざしで見られていることを忘れているかのようだ(もしくは忘れさせてくれる)。
確かに、社会の捉え方は変化した。しかし、あくまで社会を形成するのはマジョリティー側である。
ひとたび余裕が失われれば、マイノリティーは排除のまなざしを向けられる。これは歴史が語る。
先日映画『94歳のゲイ』の長谷 忠さんがお亡くなりになった。
ゲイであることを隠し、誰とも付き合うことなく生きたこの方の人生は、誰が何を封じ、誰がイルミの棘を刺したのかを考える筋道を示してくれる。
最近の小泉の活動
怒涛(どとう)のIGLTA総会、小泉 奮闘記!
●最近の小泉について
・IGLTA総会レポート/2つのNo.1を記録した大阪開催!
前回のアウト・ジャパン通信Vol.5でも告知をさせていただいた通り、10月23日(水)~26日(土)にIGLTA総会が開催されましたので、報告をさせてください。
もう、本当に あっという間で!
怒涛(どとう)の勢いで時間が過ぎていきました!!
最終的に、51カ国から 575人の皆さまに ご来場いただきました。
この 575人という数字は、IGLTA史上、“アメリカ以外の開催地でNo.1” という記録的な数字なんです!
さらにさらに(!!)、過去のIGLTA総会開催 41回において 51カ国の方が参加くださったというのも、最多の国数となります。
2つのNo.1を記録したという意味で、凄いイベントとなりました!
皆さまのおかげで、ここまで来ることができたのだと思います。
この場をお借りしまして、感謝申し上げます。ありがとうございました。
・慌ただしいながらも、本当に充実した、幸せな時間!!
とにかく忙しい日々ながら、パーティーや商談会など とても充実した時間でした。
お客さまからの評判が すこぶる良くて、(海外のお客さまから)「また日本へ帰ってきたい!」「日本の総会がNO.1だったよ」という ありがたいお声を、たくさんいただきました。
また、開催中は、難波の街が とにかくレインボーカラー一色となり、会場となったスイスホテル南海大阪はもちろんのこと、なんばパークスや関西国際および伊丹の両空港など「どこもかしこもレインボー」でした!
初日の10月23日にはオープニングイベントとして、大阪城がキレイに見えるオープンエアの素敵なレストランにて、ウエルカムパーティーが開催されました。
このパーティーは大阪観光局が主催したもので、鏡開きを行ったり、女装したDJさんをお招きして場を盛り上げていただくなど、良い雰囲気の場となりました。
さらに、翌 24日にはLGBTQ+の当事者、ドラッグクイーンやの方などもお招きして、”日本らしい” 盛大なパーティーを住吉大社で行いました。
日本で初めて開催させていただくIGLTA総会だからこそ「大阪を代表するパーティーにしなくてはいけない!」という思いが とても強くて、実は緊張もしていました。
あ、ちなみに、(最初の)プランニングからさせていただいたんですよ!(笑)
当日は先述の通り とにかく怒涛の勢いで、バスが 8台とか 10台とか入ってきたり お客さまも大勢ご来場くださる中、複数のパーティーを進行しなくてはいけない。
そんなプレッシャーを感じながらも楽しんでいる自分もいまして、そういう意味でも、時間の流れを あっという間と感じられたんだと思いますね。本当、何も覚えていません(笑)。
26日のレインボーフェスタも非常に盛り上がりましたし、(2025年に開催予定の)万博にちなんでIGLTAパビリオンと銘打った展示館、15ブースほど借りたんですけど、ここにコントロールセンターのような役目を持たせました。
これが大きかったのか、外国からいらっしゃった お客さまにも分かりやすかったようで、目印にもなっていたようです。たくさんの方が写真を撮ったりもしていましたね。
食べることも飲むことも全くできない状況でしたが、皆さまの楽しそうな姿を拝見できて本当に幸せでした!!
●小泉へ質問
【質問1】2日目のカンファレンスで「パイオニアアワード」という賞を受賞されたそうですが、どんな賞なのでしょうか?
今回、アジアで初めての本コンベンションを開催するにあたり、ICTAに参加させていただいた 2011年より ずっと、私・小泉が布教活動をさせていただいてきました(笑)。
日本は こんなところですよ!、大阪は こんな場所ですよ……といった具合に。そして今回、おかげさまで無事に総会開催を実現することができたわけですが、そのことをご評価いただき今回の受賞に至ったようです。
このカンファレンスでは、私の他にもGoogleの日本人スタッフの方が英語でスピーチやプレゼンテーションをされていたり、また、「日本に続きたい!」と言ってくださったネパールやブータンの方にお声掛けいただいたりもしました。
LGBTQツーリズムのアジアの扉の鍵を開けることができたかな……とも思っています。
いろんな意味で長年の積み重ねが実った素敵なイベントとなったと思いますし、上記のようなお声をいただき、本当に ありがたかったです。
改めまして、ありがとうございます!
最近の屋成の活動
年末年始もイベント目白押し! レインボーフェスタや文京SOGIにじいろ映画会のレポートから、“あの映画” の現状報告も!
●最近の屋成について
・まずはレインボーフェスタのご報告から!
年間で走らせている Ally プロジェクト。
日頃から ご協力くださっている皆さま、本当に ありがとうございます!
その活動の一環として、例年通り、大阪・福岡のレインボーフェスタにも「Ally プロジェクトブース」を出展をさせていただきました。
そして、東京のパレードでも掲げさせていただいた各参画企業さまのロゴの入った大きな幕やパネル、これが非常に好評でして。
「Ally企業の存在を知ってもらう」というのが本プロジェクトの重要なミッションの一つだと思っているので、たくさんの方に「こんな企業も参加しているんだ!」と知っていただいたり、写真を撮ってSNSなどで拡散してくれたりということなどもあって、自然と認知向上の流れが醸成されている。このことは、とても ありがたいことだと感じています。
また、この流れから、今回の大阪・福岡 各参加時においても先述の幕・パネルを前面に出させていただいたわけです(運営の方に無理を言って、トラスで特別ブースを制作させていただきました)。
参加者さんの中にはロゴを見て「あ! あれ、俺の会社だよ!」と話してくださっている方もいらっしゃり、ご自身の会社が本取り組みに参画されていることが “純粋に うれしい” ということもあるのだと思うと、なんだかコチラまで うれしくなってしまいました。
かつて「うちの会社、Ally プロジェクトに参画すると言っているけど、(ゲイであることが)バレてしまったら どうしよう……」とゲイバーなどで話していた方たちが、本プロジェクトを長年継続することによって、心の中で、実際に声を出してくださったりと各々(おのおの)で形は さまざまではありますが、応援してくれるようになってきている。
そういう空気・環境を作ることができたのは大きいし、やってきた甲斐もあったなと思っています。
それから、福岡では今回、「JAL×ANA」で共同ブースを出されていました!
そのため両方の制服を着用できる! といった企画もあって好評だったんです。
さらにパレードでは、JAL、ANA両社の “のぼり” が並ぶという素敵な光景も。
「LGBTQ+が垣根を取り払い、(航空業界の)二社をつなぐ!」といった感じで、これも うれしい出来事でした。
皆さまによる “Allyの力” を改めて実感させていただいた、貴重な時間となりました!
・Allyといえば研修!? 最近のAllyに関する研修についてのご報告
Allyを含め、11月は毎年、研修開催のご依頼が多い時期ではあるのですが、特に最近ではAllyにフォーカスした研修実施のご依頼が増えてきていると感じています。
その理由・傾向としては……
●基礎知識を習得してステップアップしたい
●今後、社内でLGBTQ+の相談窓口設置の対応をしていく必要性を感じている
……といったことが挙げられます。
私・屋成自身のAllyとしての経験もフルに活用させていただき、皆さまからの さまざまなご要望にお応えしたいと思っています。
ぜひ、お気軽にご相談ください!
・「文京SOGIにじいろ映画会」開催レポート
去る11月1日(金)に、文京区役所シビックセンター・小ホールで「文京SOGIにじいろ映画会」を開催させていただきました。
本イベントは毎年開催させていただいているもので、ご協力いただいている皆さまには本当に感謝しております。
また、ご来場いただいた皆さま、誠に ありがとうございます。
今回、上映させていただいた作品は「世界は僕らに気づかない」。
フィリピン人の母親を持つ主人公・純悟は、父親との接点も毎月振り込まれる養育費のみ。
そんなミックスルーツを持つ彼はゲイでもあり、さまざまなマイノリティ要素を持っている。しかも、彼が住むのは地方都市……。
あまりにもネガティブな状況を生きる主人公について、会場でディスカッションを行いました。
映画のイベントは本イベントも含めて本当に たくさんさせていただいているんですけど、改めて(こういうイベントって)良いな! と思いましたね。
・「LGBT-Allyプロジェクト2025 説明会」、来年も開催します!
今年も早いもので年の瀬。
そこで、来年 2025年の「LGBT-Allyプロジェクト2025 説明会」開催の告知をさせてください。
本説明会は、2025年 1月 9日(木)15:00~16:00 に開催いたします。
オンライン形式で気軽にご参加いただくことができ、また、参加料も無料ですので、ご興味をお持ちいただいた企業さまは、ぜひ こちら より お申し込みをいただければと思います。
よろしくお願いいたします!
●屋成に質問
【質問1】前回のアウト・ジャパン通信Vol.5で話してくれた “れいの映画”、進捗は いかがですか?
前回、驚愕の(笑)発表をさせていただいた私・屋成プロデュースのショートムービー。
その制作は、絶賛 進行中です!
プロットが大分かたまりまして、シナリオの制作も順調に進行しています。
ただ、予想をしていたより、若干スケジュールが押し気味ではありますが。
(お気に掛けてくださっている皆さま、申し訳ありません)
本作を依頼させていただいている川野邉 修一監督ともコミュニケーションを取り続けていて、また、文京区さんご協力のもと、川野邉監督とトークセッションをさせていただくことも決まったんです!
「アウティング」をテーマにした作品のため、企業さんの研修で上映いただくにも良い作品だと思います。
年明けの本コーナーでは、もう少し進行した状態についてご報告できるかと思います。
こう ご期待ください!
【質問2】前回の本コーナーで告知されていた、今年の企業交流会の詳細を教えてください
2023年も おかげさまで好評だった「LGBT-Allyプロジェクト 企業交流会」。今年も開催します(拍手)。
しかもしかも(!!)今回の開催地の一つは、あの、ユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)さんです。
パークはお金を払えば いつでも行くことができますが、バックヤードへ行ける機会は なかなかありませんよ(笑)
また、USJさんといえば、今年のレインボーフェスタで、社長(CEO)を務めるジャン・ルイ・ボニエ氏にもお越しいただきました。改めまして、ありがとうございました。
そのUSJさんでは “誰でも更衣室” などLGBTQ+を意識した取り組みを いろいろとされていますが、その取り組みについて、次回のアウト・ジャパン通信でご紹介させていただくことができるかと思っています。
それから、本交流会の出席メンバーの皆さまは既に参画されている企業さまメインではあるのですが、「興味がある」「これから参加してみたい」という企業さまの枠も、まだ若干の空きがございます。
この動画をご覧いただき ご興味をお持ちいただけた企業さま・ご担当者さまは、ぜひ、お問い合わせいただけますと幸いです。
2024年の開催スケジュールは、以下の通りです。
・12/9(月) USJ開催
・12/17(火)Ridgelinez株式会社(千代田区丸の内)開催
ちなみに、Ridgelinezさんでの開催では、今年も小泉さんがケータリングで活躍してくれますよ!(笑)
(皆さまに おいしい食事とお酒を提供できるよう、頑張ります! by 小泉)