REVIEW

差別的だった男性がアライに変わっていく様を描いたドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』

今年1月から放送されている『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』というドラマが、実はジェンダー・セクシュアリティをめぐる優れた啓発ドラマだったりします。楽しみながらぜひ、ご覧ください

 主人公の沖田誠51歳は古いジェンダー観に凝り固まった差別的なストレート男性です。家族にも職場の部下にも嫌われ、孤立気味…しかし、たまたま引きこもっている息子・翔(かける)の友達になってくれたゲイの大地のおかげで、少しずつジェンダーやセクシュアリティについての見方・価値観をアップデートしていくのです。典型的なホモフォーブ(同性愛嫌悪者)だった人が、アライへと生まれ変わっていく過程をコミカルかつ感動的に描いた物語は『キンキー・ブーツ』や『パレードへようこそ』にも通じるものがありますし、漫画だと『弟の夫』などもそうです。誠が悪戦苦闘しながら自分の考えの古さを反省し、少しずつアップデートしていく姿にだんだん、好感を持ったり、応援したくなったりすると思います。我が事のように感じられる方も多いことでしょう。



<第1話あらすじ>
「お茶は女性が淹れてくれた方がおいしいだろう」昭和生まれの51才・沖田誠はそのデリカシーのない言動のせいで家族や会社の部下たち、さらには愛犬のカルロスにまで嫌われていた。そんなある日、誠は妻・美香の友人の息子・五十嵐大地がゲイであることを知る。そしてその大地が、学校で何かあって引きこもっている息子・翔(かける)の部屋に入り込んでいることを……「なんでそんなのが翔の部屋に!」思わず大地を否定してしまう誠。そんな誠に翔が冷たく言う。「僕は……お父さんみたいな人には絶対なりたくない!」家族のために頑張ってきたつもりの誠。なのに、家族からは嫌われ、会社でも疎まれ、でも何をどうすればいいのかすらわからない。苦悩の誠に大地が声をかけ――。

 第1話はこんな感じです。大地は、たまたま家の近所の階段のところで誠が転びそうになったのを助けたあげた好青年で、引きこもりの翔の大切な友人でもあり、だからこそ誠も素直に話を聞き、自身を省みることができました。現実社会では、会社で部長とか役職に就いているおっさんをたしなめられる人もそうそういないでしょうし、なかなか変われるチャンスってないでしょうが、だからこそ漫画/ドラマというフィクションの面白さが活きてくるのかな、と。誠にひどいことを言われながらも、怒らず、腐らず、誠とじっくり話し合い、友達になろうとする大地の人間力にも感心させられます。

 回が進むと、大地くんは大学の先輩とつきあっていることがわかり、また、翔が「女の子になりたいわけじゃない」ということもわかり、大地のお母さんがすごく理解があって、悩める息子を支えてきた人だということなどもわかっていきます。
 誠は大地に話を聞いたり、本屋でLGBTQ関連の本を買って読んだり、頑張って自分自身をアップデートしようと努力していきます。しかし、第5話の終盤、沖田家の庭でみんなでBBQをやることになるのですが、誠はその場で大地とその彼氏さんが付き合っていることをみんなの前で言ってしまい、彼氏さんを怒らせてしまいます。アウティングで自殺した人までいるんだと強く抗議され、周囲のみんなも、なんてことをしたんだ…と。アウティングは絶対に許されないというメッセージが伝わってきました。
 続く第6話は、女性であるがゆえに会社勤めをあきらめざるを得なかったお母さんの心の叫びが描かれていました。富田靖子さんの、ふだんはニコニコしているとてもいいお母さんが、この時だけは悔しさをにじませながら「テーブルにつけば美味しいごはんが当たり前に出てくるなんて思わないで」と言ったセリフが、本当に沁みました。嫁に行くことが幸せ、どうせ会社に入っても活躍できない、などと言われてきた女性たちの「働く自由がない」つらさが、本当にリアルに、見事に描かれていて、身につまされました。

 このように、LGBTQのことに限らず、広く、ジェンダーやセクシュアリティにまつわる様々な問題が描かれていて、おそらく誰もが、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)であるとか、ふだんあまり強く意識していなかったようなことも、自分事として考えるようなきっかけになると思います(「エンパシー」の機会になるのではないでしょうか)。特に、誠と同世代のストレート男性の方々に観ていただきたい作品です。

 日本の会社では、まだまだ誠のようなタイプの男性が役職に就いていたり、現場を仕切っていたりということがたくさんあると思いますが、ただそれを古い!差別的だ!ハラスメントだ!と容赦なく追及するのではなく(えてして厳しく批判するあまり、追い詰めてしまうようなケースもあると思うのですが)、主人公の誠もまた、家族のためにがむしゃらに、身を粉にして働く企業戦士であり、根は家族思いのいいパパなんですよという描き方をしているおかげで、自分も誠みたいな「おっさん」だと思う方もまた、このドラマを拒絶せずに観て、誠に感情移入しながら追体験し、変わっていける余地を与えていると思います。言い換えると、「おっさん」への愛があるんですよね。そこもいいと思います。
 
 すでに半分くらい回が進んでしまっているのですが、TVerで1〜3話と最新の6話が配信されていますので、よろしければご覧ください。今週末の土曜には7話が放送されます。


おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!(全11話)
東海テレビ・フジテレビ系全国ネット
1月6日(土)23:40-
出演:原田泰造、城桧吏、中島颯太、大原梓、松下由樹、富田靖子ほか

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