GLOSSARY

LGBTQ用語解説

ジェンダー・フルイド

 ジェンダー・フルイド(gender fluid)とは、性自認が「男性である」または「女性である」と固定しているのではなく、状況や心理状態に応じて男性であったり女性であったりノンバイナリーであったり、あるいはジェンダーが無い(アジェンダー)であったり、流動的に変化するありようを指します。(fluid=流動的な、という意味です)

 多くの方はジェンダー・アイデンティティは固定的な、揺るぎないものであるというイメージを抱いているかと思います。生まれつき自分は男性である、女性である、ノンバイナリーである、というように。
 しかし、ジェンダー・フルイドの方は、自身が男性であると感じてそのように表現する時期もあれば、女性であると感じてそのように表現する時もある、というようにジェンダー・アイデンティティ(性自認)や性表現が流動的に変化します。複数のジェンダーの様相が同時に表現されることもあります。

 ジェンダー・フルイドの方の多くは自身をトランスジェンダーやノンバイナリーである(あるいはジェンダー・クィアである)と自認しています。性自認や性表現が出生時に割り当てられた(戸籍上の)性別と異なる時は、多くのトランスジェンダー(やノンバイナリー)の方と同様の経験をし、同様の困難に直面しているということ、さらに加えて、(シスジェンダーであってもトランスジェンダーであっても)性自認や性表現は固定的であると思っている方の偏見や差別に直面する可能性もあります。
 世間の多くの人々は、この人は男性、あの人は女性、というように見た目や仕草でその人のジェンダーを固定的に見て、そのように取り扱おうとしますが、ジェンダー・フルイドの方は性表現が変動するため、タイミングによっては「以前はノンバイナリーだと自分で言ってたのに今日はずいぶん女性的だね」などと訝しげに言われることもあるでしょう。また、トランスジェンダーのコミュニティ内でも「どっちつかず」だと思われたりして、居場所を失う可能性もあります。

 ジェンダーの流動性も、人間の性の多様性のうちの一つなのだと認識することが大切です。
 
 性自認がクエスチョニングな方のなかには、まだ自分がトランスジェンダーなのかどうか確信が持てず、迷っている、定まっていない(今後定まると期待される)といった状態の方がいらっしゃると思いますが、ジェンダー・フルイドの方は「揺れ動き、定まっていない」というジェンダー・アイデンティティですので、クエスチョニングとは異なります。
 また、出生時に割り当てられた性別が女性で、思春期の頃まで自身を男性だと感じており、大人になってノンバイナリーだと自認し、また男性に戻ったというようなトランスジェンダーの方とも異なります。かと言って、変動が2回までならトランスジェンダー、3回以上ならジェンダー・フルイドだなどといった決めつけを他者がすることはできず、あくまでも自身のアイデンティティの問題です。究極的には、ジェンダー・フルイドとは「自身をジェンダー・フルイドだと自認している人」のことです。

 2014年、Facebookはユーザーが選択できる性別表記として50以上の選択肢を設け、その中にジェンダー・フルイドも盛り込まれました。
  

 2015年、歌手のマイリー・サイラスがジェンダー・フルイドであるとカムアウトしました。2018年にはトップモデルのカーラ・デルビーニュもジェンダー・フルイドであるとカムアウトしています。

 
 なお、こちらこちらの記事にあるように、ジェンダー・フルイドという「概念」は2015年頃からファッションの世界でも注目されはじめ、トレンドの一つになりましたが、それがジェンダー・フルイドの当事者の方々の経験や声や思いを反映したものなのか、生きづらさの解消につながっているかというと、疑問が残ります。
 

参考記事:
gender-fluid(GENDER & SEXUALITY DICTIONARY)
https://www.dictionary.com/e/gender-sexuality/gender-fluid/
Harvard Health Publishing「Gender fluidity: What it means and why support matters」
https://www.health.harvard.edu/blog/gender-fluidity-what-it-means-and-why-support-matters-2020120321544

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