GLOSSARY

LGBTQ用語解説

ピンクウォッシュ

 LGBTQを支援している姿勢を積極的に打ち出すことでイスラエル政府がパレスチナ人への人権侵害を行っている事実を覆い隠し、同性愛者に厳しいイスラム文化圏に比べてイスラエルが人権先進国であるとして正当化するイメージ戦略のこと。「ピンクウォッシング」とも言います。
 2010年にニューヨーク市立大学教授であり小説家のサラ・シュルマンが提言しました。

 例えば映画で白人以外の役を白人が演じること(や大坂なおみさんを白人のように描いたCMなど)が「ホワイトウォッシュ」と言って批判されてきたり、企業などが消費者への訴求効果を狙ってあたかも環境に配慮しているかのように見せかけることが「グリーンウォッシュ」だと批判されてきたように、「〜ウォッシュ」とは表面を取り繕う、上辺だけ、という意味で用いられる言葉です。そこに同性愛者のシンボルカラーである「ピンク」を合体させて「ピンクウォッシュ」としたのです。

 ハフポスト日本版の「ピンクウォッシュとは何か。日本にもある?「LGBTQ当事者が、イスラエルの虐殺に声を上げるのは自然なこと」と専門家【解説】」でフェミニズム・クィア理論を研究する同志社大学研究員の保井啓志さんは、「LGBTの人権を侵害するパレスチナを擁護してLGBTフレンドリーなイスラエルを批判するのはおかしい」といった趣旨の主張に対し、「イスラエルはイスラム=テロリスト(ハマスなど)=パレスチナ(ガザ)などの言葉を意図的に混同させて使っている」としたうえで、3つの問題点を指摘しています。
 1つめは、イスラエルがパレスチナを占領している現状があるのにも関わらず、「イスラエルはLGBTフレンドリーでパレスチナはLGBTに抑圧的だ」という「二項対立」が強調されている点。 
 2つめは、そもそもLGBTQ当事者の権利を国家単位で語ること自体がおかしいということ。
 3つめは、もし仮に本当にイスラエルがLGBTQフレンドリーで、パレスチナがLGBTQに抑圧的であったとしても、それを戦争の正当化や国のプロパガンダに用いてよいのか疑問だということ。


 なお、『GQ』の「プライド月間に考えたい「ピンクウォッシング」とは?」という記事で松岡宗嗣さんは、プライド月間に企業が自社のロゴをレインボーにするなどのキャンペーンを打ち出すことに対し、「性的マイノリティを自社のアピールのために利用しているだけでは」といった批判がなされ、その際、しばしば「ピンクウォッシング」という言葉が用いられることについて掘り下げています。
 「IDEAS FOR GOOD」の「ピンクウォッシュとは・意味」という記事では、LGBTQフレンドリーであることを全面的に打ち出している自治体が「ピンクウォッシュ」として批判されている事例を紹介しています。
 このように、現在は、企業や自治体が、何か自らに不都合な事柄を隠すためにLGBTQフレンドリー(アライ)であると打ち出し、表面を取り繕うようなケース、LGBTQを支援するフリをして実はお金儲けに利用している(LGBTQを食い物にしている)ような場合についても「ピンクウォッシュ」だと批判されることがあります。

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