OUT JAPAN Co,.Ltd.

CONTACT US

LGBT関連ニュース

WHOの「国際疾病分類」が改訂され、性同一性障害が「精神疾患」から外れることになりました

記事日付:2018/06/21

 6月18日、世界保健機関(WHO)が「国際疾病分類」最新版(ICD-11)を発表し、性同一性障害が「精神疾患」から外れることになりました。

 国際疾病分類=ICDは、病気やけが、死因など5万5000項目をまとめた分類で、日本をはじめ多くの国が死因や患者の統計、医療保険の支払いなどに使うために参照しているものです。1900年に第1版が作成されて以降、改定が重ねられてきました。ICD-10は1990年のもので、今回は約30年ぶりの全面的な改定となりました。
 
 今回の改定で性同一性障害(Gender Identity Disorder)は「精神疾患」から外れ、「性の健康に関連する状態」という分類の中のGender Incongruenceという項目となりました。ICD-11におけるGender Incongruenceの定義は、以下の通りです。
「個人の経験する性(gender)と割り当てられた性別(sex)の顕著かつ持続的な不一致によって特徴づけられる。ジェンダーの多様な振る舞いや好みだけでは、このグループとして診断名を割り当てる根拠にはならない」
  
※Gender Incongruenceの日本語訳として厚生労働省は、「性別不合」との仮訳を示しました。3年ほどかけて正式な和訳を検討するそうです。

 WHO生殖保健・研究部のラレ・サイ調整官は19日、分類の見直しによって「こうした個人の社会的受容に向け、スティグマ(社会的に付与された汚名、不名誉、烙印)を減らすことができる」と語りました。疾病分類は医師や保険会社によるサービス提供範囲の判断に使われているため、精神疾患から外されたことで医療を受けやすくなる可能性もあると語りました。 
 ICDは、国連加盟国が来年5月にスイス・ジュネーブで開く世界保健総会で採択されれば、2022年1月1日から効力を発することになります。サイ調整官は、性同一性障害は世界の多くの地域で受け入れられていないが、今回の分類は専門家たちが長年議論を重ねた結果であり、容易に採択されるとの見解を示しています。性同一性障害については、フランスやデンマークなど複数の国がすでに分類を見直し、精神疾患から外しています。

 ニューヨーク市・コロンビア大学精神科臨床学教授で、アメリカ精神医学会終身名誉フェローであるジャック・ドレシャー氏は、「トランスジェンダーの人々は高度にスティグマ化された患者集団です。これはスティグマを減少させる一つの方法です。実際は、私たちは何がトランスジェンダー的な表現の原因なのかを知りません。それが精神医学的なものなのか、医学的なものなのかを知りませんし、それは私たちがなぜ人々がシスジェンダーであるかを知らないのとまったく同じことなのです。この変更は一つの新しい診断カテゴリーを提示するものです。それがgender incongruenceなのです」と語っています。
 
 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「この大きな変化は、WHOの定めるグローバルな診断基準の改訂を求めてきた、世界各地のトランスジェンダーの活動家による粘り強いアドボカシーのたまものです」と評価しています。
 トランスジェンダーになすりつけられてきたスティグマや差別の大半は、精神病と見なす医療制度のあり方に由来するもので、トランスジェンダーのメンタルヘルスの悪化をも引き起こしてきた、名前や公的文書上の性別を変更する条件として「性同一性障害(GID)」の診断を義務づける政府が多いことは、労働や教育、移動など基本的権利の享受の妨げになってきた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘します。
「マルタ、ノルウェー、アルゼンチン、ネパールなどでは状況は改善しましたが、世界各地の政府は未だにトランスジェンダーを「精神疾患」と見なしており、スペイン、トルコ、日本などでは、氏名や性別を法的に変更するには、精神科医の診断を受けなければならないのです」
「新たなWHOの疾病分類は、思春期と成人のトランスジェンダーの人びとにとって大きな前進です。近いうちに「精神疾患」と見なされずに医療ケアを求めることができるようになる可能性が出てきたからです」
 なお、同団体は、性別不合の下位カテゴリーに、思春期前の子どもに適用される「Gender Incongruence of Childhood(子どもの性別不合)」という項目があり、これが問題含みの診断項目であると批判しています。自らの性自認や性表現を探究する幼い子どもたちに、第二次性徴抑制薬や、性別変更用のホルモン投与、性別適合手術などの治療は必要がない、GICという診断も必要ないという主張です。
 
 今回のICDの改定によって、国際的には「性同一性障害」という概念が消滅し、脱病理化への大きなステップを踏み出しました(障害でも病気でもないと宣言されました)
 日本では現状、戸籍上の性別を変更することを望むトランスジェンダーの方は、法律上、精神科を受診して「性同一性障害」という診断名をもらい、性別適合手術を行うことが必須の要件となっていますが、長崎大の中根秀之教授(社会精神医学)は、「手術を要件とすべきかどうか、今後議論が高まるのではないか」と語っています(厚労省の担当者は、「将来的な影響はあるかもしれないが、保険制度や治療方法の変更などへすぐにつながるものではない」と述べているそうです)
 日本では今年から性別適合手術への保険の適用が始まりましたが、将来的には、アルゼンチンやノルウェーのように、診断や手術なしに性別変更できる方向に進んで行くのでしょうか。当事者の方々から上がってくる声にも耳を傾けながら、この問題を見守っていきましょう。
 
 

 
参考記事:
性同一性障害、精神疾患から除外 WHOが分類見直し(時事通信/AFP)
性同一性障害 精神疾患対象外 WHO(毎日新聞)
ゲーム依存は精神疾患 性同一性障害は除外 WHO認定(朝日新聞)
国際疾病分類が改訂、トランスジェンダーの人びとにとっての勝利(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)