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性的マイノリティは全人口の10%という調査結果が発表されました

 LGBT総合研究所が今年実施し、全国の20〜69歳の男女、約34万8千人が回答したインターネット調査(スクリーニング調査)で、性自認※に関するマイノリティ(シスジェンダーではない方)が6.1%、性的指向に関するマイノリティ(ストレートではない方)が7.0%、性的マイノリティに該当する方(シスジェンダー・ストレート以外の方)が10.0%という結果が出たことが明らかになりました。
 LGBT総合研究所は「当事者が10人に1人いることが数字で示された。社会としてきちんと向き合う必要がある」としています。

※LGBT総合研究所は「Gender Identity」の訳語として、「性同一性障害特例法」などで国が用いている「性同一性」を使用していますが、g-lad xxでは、当事者の方たちをはじめ世間一般で浸透している「性自認」で統一させていただきます。
 
 詳述すると、性自認については、シスジェンダー93.9%、トランスジェンダー1.8%、Xジェンダー2.5%、クエスチョニング1.2%、その他0.6%(シスジェンダー以外の合計が6.1%)という結果になり、性的指向については、異性愛93.0%、同性愛0.9%、両性愛2.8%、無性愛0.9%、クエスチョニング1.4%、その他1.0%(異性愛以外の合計が7.0%)という結果になりました。
 セクシュアルマイノリティとは、性自認についてのマイノリティ6.1%と性的指向についてのマイノリティ7.0%との単純合計ではなく(双方でカウントされている方たちも一定数いらっしゃいます。例えばMtFゲイやFtMレズビアン、Xジェンダーかつパンセクシュアルなど)、シスジェンダー・ストレート以外の人たちです。今回の調査ではシスジェンダー・ストレートは全体の89.4%、無回答が0.6%でしたので、100-(89.4+0.6)=10.0%ということになりました。
 
 今回のLGBT総合研究所の調査は、LGBT人口の算出自体が目的なのではなく、LGBTの認知率やカミングアウトの実態などを調査する「LGBT意識行動調査2019」のための事前調査を行なったところ、上記のような結果が出てきたのだそうです。本調査である「LGBT意識行動調査2019」は、約34万8千人の回答者の中からシスジェンダー、トランスジェンダー、異性愛、同性愛、両性愛に該当する約500人ずつをサンプルとして別に質問を行い、得られた結果です。
・LGBTという言葉の認知率は91.0%(2016年の調査では54.4%)と高くなっていますが、LGBTに関する内容の理解率は57.1%(2016年は32.7%)に留まったそうです。
・誰にもカミングアウトしていない当事者は78.8%で、大半を占めました。カミングアウトする気持ちがある方は25.7%、カミングアウトは必要ないという方は40.1%という結果になりました。 
・周囲にLGBTがいないと回答した人は83.9%で、大半を占めました。また、非当事者(シスジェンダー・ストレート)の29.4%が「どう接していいかわからない」と回答したそうです。
・誤解や偏見が多いと感じる当事者は52.8%、理解が促進されるべきと回答した当事者は53.4%でした。また、国や自治体の対応を望む当事者は52.3%、企業の対応を望む当事者は51.4%という結果になりました。
(詳細はこちら。PDFです)
 
 LGBTという言葉は聞いたことがあるけどちゃんと理解してない人が多いそうですが、LGBTを何だと思っていたのだろう…と気になりますね。
 それから、誰にもカミングアウトしていない人が8割近くに上り、その半数くらいの方がカミングアウトは必要ないとしている、というリアリティが明らかになりました。
 誤解や偏見が多いと感じ、国や自治体、企業の対応を望む方が過半数を占めましたが、いずれも半数を少し上回るくらいの割合でした。
 いろいろと興味深い調査結果でした。

 
 これまで、LGBT人口について、電通やLGBT総研、連合などが調査結果を発表してきており、年々、その数(全人口に占める性的マイノリティの割合)が少しずつ増えていますが、10%という調査結果は、今年初めに公表された電通の調査結果(LGBT人口は全体の8.9%)をさらに上回る、過去最高の数値です。
 一方、昨年末に名古屋市が行なった無作為抽出調査では、自身を性的マイノリティだと答えた方は1.6%でした(性別が「男性」と「女性」しか選べなかったことなど、調査方法の問題点も指摘されています。詳しくはこちら)。それから、今年、大阪市で行われた大規模な無作為抽出調査では、自身を性的マイノリティだと答えた方は約3%でした(詳しくはこちら
 これほど大きく数字に差が出ることをめぐっては、いろんな意見があります。
 電通やLGBT総研、連合などはインターネットで調査しており、名古屋市や大阪市は、自宅に調査票を郵送して回収するものです。ネットのほうが匿名性が高く、本当のことを答えやすいということは言えるでしょう(自宅に調査票が送られてきた場合、家族が見るかもしれないと思うと、なかなか書きづらいですよね…)
 一方、社会学者の方の中には、広告代理店によるインターネット調査の統計学的な問題点を指摘している方もいらっしゃいます。
 8%とか10%という数字のほうが「盛ってる」のではないかと、3%という数字のほうが実感に近い、リアルじゃないかと言う声もあります。
 本当のところはどうなのでしょう…なかなか難しい問題です。統計の方法については、当事者が安心して回答できるような環境(匿名性)を保証しつつ、今後もっと正確に調査できるような、ベストな方法が見つかることを期待します。
 一つ言えるのは、世界的にもそうですが、世の中がより寛容になればなるほど、自身が性的マイノリティだと申告できる人が増えていくということです。たとえば同性婚のような制度が認められたり、権威ある人たちがLGBT支援を表明したり、著名人がカムアウトしたりして、寛容さが明らかに感じられるようになればなるほど、自分自身の本当のジェンダーやセクシュアリティに蓋をしたり抑圧したり否認したりせず、そうだと認めることができる方も多くなり、また、「絶対に他人に悟られてはならない」という恐怖心がゆるんでいく、カミングアウトしても大丈夫だと思えるはずです。インターネット調査はこれまでも何度か実施されてきて、2012年には5.2%だったのか、7.8%、8%、8.9%…と増えてきていますが、2019年の今、ついに10%にまで達したのです(倍増です)。このことは、とりもなおさず、着実に世の中がLGBTフレンドリーで支援的な方向に変わってきている、そうだと申告できる当事者が増えているということを物語っているのではないでしょうか。
 
 

 

LGBTに該当「10人に1人」 34万人超アンケートで(共同通信)
https://this.kiji.is/577275901243294817

LGBT・性的少数者に該当する人は10% 当事者の半数が企業の対応を求める(AdverTimes)
https://www.advertimes.com/20191129/article303064/

10人に1人がLGBTも8割カミングアウトせず…研究所が調査(日刊ゲンダイ)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/266063

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