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先日のスーパーボウルに出場した49ersのコーチの1人が、オープンリー・レズビアンの方でした

 2月2日に開催された第54回スーパー・ボウル(サンフランシスコ・49ers対カンザスシティ・チーフスのNFL優勝決定戦)で、サンフランシスコ・49ersのオフェンシブアシスタントコーチであるケイティ・ソワーズが、女性として、LGBTとして初めてスーパーボウルに出場するコーチとなり、歴史の1ページを塗り替えました。
  
 スーパー・ボウルが全米を熱狂させるビッグ・イベントであるように、アメフト選手は大勢の人たちの憧れの的ですが、アメフトの世界で成功するのは大変なことで、それは、選手もコーチも同じことです。
 しかし、ケイティ・ソワーズは、わずか4年目で成功をつかみ、スーパーボウルに出場しました。
 
 49ers(フォーティナイナーズ)の選手たちは、ソワーズに厚い信頼を寄せています。
 クォーターバックのジミー・ガロポロは、「ソワーズは素晴らしいコーチだ」と絶賛しています。
「コーチとしての仕事ぶり、選手の配置スキル、チームとのコミュニケーションの仕方、どれをとっても彼女は特別です。とても骨がある。素晴らしい仕事をしているし、選手たちにやる気を出させる。彼女と一緒のチームにいるのはとても楽しい」
 ワイドレシーバーのダンテ・ペティスも、「プレーのことで質問するといつも助けてくれる」「うまくいかない試合の後は『あなたはチームにとって大切な存在だということを忘れないでほしい』と声をかけてくれる」と、ソワーズが技術面でも精神的な面でも大きな支えになっていると語っています。

 49ersのスーパーボウルの進出を支えた女性コーチ、そしてNFL(だけでなく男性プロスポーツ)で初めてのオープンリーLGBTのコーチとして注目を集めるソワーズですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかったといいます。
 カンザス出身のソワーズは幼い頃からアメフトが大好きでしたが、進学したインディアナ州ゴーシェン大学では、サッカーやバスケットボールをしていました。この頃、両親にカミングアウト。両親は「愛情を持って受け入れてくれた」そうです。
 大学卒業時に、バスケットボール部のボランティアコーチとして残らないかと声をかけられました。しかし、コーチになりたいという願いは、思わぬ反対によって阻まれました。選手の親たちの多くが、娘たちをレズビアンであるソワーズに任せるのを嫌がったのです。そのことを伝えられて「泣きそうになった」とソワーズは振り返ります。
「コーチが私をハグして、君が悪いわけではないと言ってくれましたが、ハグをしながら怒りがこみ上げてきたのを覚えています。しばらくは落ち込んでいました。でも前に進まなければと決めたんです」

 失意のどん底から立ち上がったソワーズは、子どもの頃から大好きだったアメフトのキャリアを追うことを決意しました。女性アメリカンフットボール・リーグ「ウーマンズ・フットボール・アライアンス」のチームに入り、8年間プレー。その間、アメリカ代表チームのメンバーとして女子W杯での優勝も経験しています。
 ソワーズがNFLでのキャリアをスタートさせたのは2016年。アトランタ・ファルコンズで、マイノリティの人たちを対象にしたコーチングプログラムを受け、その後9ヵ月、インターンとしてコーチを経験しました。この時に出会ったのが、当時アトランタ・ファルコンズのオフェンスコーディネーターをしていたカイル・シャナハンで、シャナハンは2017年にヘッドコーチとして49ersに移籍し、ソワーズも彼のチームに雇われました。
 1年後の2018年、ソワーズはフルタイムのオフェンシブアシスタントコーチになりました。女性がNFLでフルタイムコーチになったのは、ソワーズが2人目だそうです。そして、このタイミングで彼女は、大きな決断をします。同性愛者であることを公表したのです。
 NFLでは2014年、マイケル・サム選手がゲイであることをカミングアウトしてドラフト入りを果たすも、一部の人たちからホモフォビックな中傷を受け、メンタルの不調に陥り、姿を消してしまいました。そうした状況を見ていたソワーズは、公表できないだけでNFLにもLGBTQの選手はたくさんいると確信し、肩身の狭い思いをしている仲間を苦しみから救うため、勇気ある行動に出たのです。
 OUT SPORTSのインタビューで、彼女はこう語っています。
「人生で最も大切なことの一つは、自分に対して正直であること。NFLだけでなくどんな世界でもLGBTとしてのアイデンティティを持つことができない人がたくさんいます。彼らは本当の性的指向を公表できずに苦しんでいます。私たちが人種、性別、性的指向、宗教などの多様性を受け入れる環境を作れれば、多くの人を抱えている苦しみと重荷から解放できます」

 性的指向が彼女自身を苦しめた時期もあったといいますが、ソワーズは自分を信じ、周囲を信じることで、男性優位なスポーツの世界で女性が輝ける場所を作った先駆者となり、今回のスーパーボウルで歴史を作り、多くの人々に勇気を与えています。
 
 スーパーボウル前に配信されたマイクロソフト社のCMで、彼女は子ども時代の自分へ宛てた手紙を読んでいます。
「私はいつか本当のフットボールの一員になると願っています。お飾りでここにいるわけではありません。チームの勝利のためにここにいます。私はこの少女に、自分を持ち続けるように言いたいです。あなたの夢は叶います――」

 残念ながら、スーパーボウルで勝利し、アメリカNo.1のチームになるという夢は、来年以降に持ち越されましたが、いずれ彼女は、スーパーボウルを制する女性(LGBT)初のコーチ、NFL初の女性(LGBT)ヘッドコーチとなり、そして初の女性(LGBT)GMとなる日も遠くはないのかもしれません。

 
 
参考記事:
「拝啓 私。あなたの夢は叶います」同性愛を公表したNFL女性コーチがスーパーボウルに(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/32732
スーパーボウルに初の同性愛者の女性コーチ。拒絶された過去を乗り越え、歴史を作る(ハフィントンポスト)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/katie-sowers-super-bowl_jp_5e353f04c5b6f2623329b5b7

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