REVIEW

Elton John and Years & Years "It’s a Sin" (BRIT Awards 2021 Performance)

エイズ禍に翻弄されるゲイの若者を描いて英国で社会現象を巻き起こしたドラマ『It’s a Sin』の主題歌を、エルトン・ジョンとオリー・アレクサンダーが演奏、完璧にゲイで素晴らしく感動的なパフォーマンスでした。

 80年代のエイズ禍に翻弄されるゲイの若者を描いて英国で社会現象を巻き起こしたドラマ『It’s a Sin』の主題歌を、ブリット・アワードでエルトン・ジョンとオリー・アレクサンダーがサプライズで披露しました。完璧にゲイで、パワフルで、素晴らしく感動的なパフォーマンスでした。
 

 5月11日にロンドンのO2アリーナでブリット・アワード(英国の最も名誉ある音楽の祭典)がリアル開催され、テイラー・スウィフトが英国出身以外のアーティストとして初めてグローバルアイコン賞を受賞するなどして話題になっています(日本人であるがゆえに一時は受賞対象から外されていたリナ・サワヤマも無事に出演、レッドカーペットに素敵な衣装で登場していました)
 
 ステージで繰り広げられたパフォーマンスのなかで、LGBTQにとって「記念碑的」と言うべき素晴らしいものになったのは、80年代のロンドンを舞台にHIV/エイズに翻弄されるゲイたちを描き、社会現象を巻き起こしたドラマ『It’s a Sin』の主題歌であるペットショップ・ボーイズの名曲『It’s a Sin』を、伝説的なゲイのアーティストであるエルトン・ジョンと、ドラマに主演したオリー・アレクサンダー(Years & Years)がサプライズで披露したことでした。
 Sinとは、キリスト教における道徳的な罪悪という意味で、『It’s a Sin』は、ペットショップ・ボーイズのボーカルを担当するニール・テナント(彼はゲイであることをカムアウトしています)がカトリック学校で体験してきた、厳格さへの不満や怒りが反映された歌です(はっきりとは明示されていませんが、同性愛を認めないカトリックへの反発と読むこともできます)
 
 この二人を紹介したのは、エルトンのパートナーのデヴィッド・ファーニッシュでした。デヴィッドは、U=Uについて説明し、HIV陽性者がずっと健康に生きていけることを伝えました。
「共に闘うことを通じ、私たちは世界を変えてきました。今日、HIV/エイズはもはや死に至る病ではありません」
「HIV/エイズをめぐるスティグマ、無関心、恐れがなくなるまで、私たちは闘い続けます」
 
 オリーはピアノに横たわった状態で登場し、エルトンの伴奏で『It’s a Sin』をバラードとして歌いはじめますが、やがて、曲は聴きなれたシンセのアップテンポなダンスミュージックに変わります。O2アリーナの巨大ステージに張り巡らされた迷路にたくさんのダンサーたちが登場し、その迷路の壁を乗り越え、ステージで輝きを見せ、最後には愛する人と抱き合うという、これまでゲイやHIV陽性者が経験しがちだった人生を象徴するかのような演出、最高にパワフルでクィアなパフォーマンスでした。
 途中、オリーを見守るように、ドラァグクイーン(たぶんUK版『ルポールのドラァグレース』の出演者)も登場しています。

 宗教的に罪悪だと見なされ、学校でいじめられ、家を追い出され、まともな職に就くことができず、エイズ禍の時代は社会から見捨てられ…ゲイピープルが直面してきた理不尽な現実への怒りや、その怒りを愛によって昇華させていこうとする思いが表現されたステージは、本当に感動的です(泣けます…)。大御所中の大御所であるエルトンが、若手のゲイ・タレントの代表とも言うべきオリーにバトンを渡したようにも思えて、いろんな意味で素晴らしかったです。これが英国最高峰の大舞台で全国に(というか全世界に)向けて放送されたなんて…スゴいことです。



 なお、エルトン・ジョンとオリー・アレクサンダー(Years & Years)のコラボ曲『It’s a Sin』は、シングルとしてリリースされており、純収益の100%がエルトン・ジョン・エイズ基金に寄付されるそうです。

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