REVIEW

映画『最も危険な年』

米国のトランスの子を持つ親たちの闘いを描いたドキュメンタリー映画です。日本でも広まりつつあるトランスヘイトの問題を考えるうえで必見と言える作品です。

 米国のドキュメンタリー映画『最も危険な年』は、2015年に米国全土で同性婚が実現した後、アンチLGBTQ(宗教保守)の人たちがトランスジェンダーに攻撃の矛先を変え、その結果、どのように米国社会が揺れ動き、トランスの子どもたちとその親たちが苦境に陥り、新たに闘いを始めたかということが克明に描かれた作品です。

 トランスジェンダーという数百人に一人のマイノリティへの無知――たとえワシントン州のようなリベラルな州であっても、人々の無知が偏見や不安を増大させ、トランスジェンダーのトイレ利用制限によって当事者の子どもたちを苦境に追い込む(「生まれて来なければよかった」などと言わせてしまう)ことの罪深さを描いたこの作品は、日本の現在のバックラッシュと驚くほどシンクロし、今の状況を考えるヒントになるはずです。また、トランスの子を持つ親やきょうだいたちが、かけがえのない家族を守るために立ち上がり、差別主義者と闘い始める様に胸を打たれ、勇気をもらえるという声もたくさん聞かれます。トランスジェンダーのことに限らず、社会の中で不当に肩身の狭い思いをさせられ、権利を奪われ、声さえ上げられずにいる脆弱なマイノリティの人たちが、どのように平等や公正、生きていく権利を取り戻すのか、支援者がいかに大切か、誤解や偏見にまみれていた自分を反省して考えを改める姿の勇敢さと美しさなど、本当にたくさんのことが描かれています。



<あらすじ>
2016年、米ワシントン州では、「トランスジェンダーは出生時の性別のトイレを使うべきだ」としてトランスジェンダーのトイレ利用を制限する法案が議論されていました。トランスジェンダーの子を持つ親たちは、州法案の撤廃のために立ち上がり、自分たちの物語を語ることでトランスフォビアと闘います。親たちが闘う相手は「不安」と「偏見」でした…
 
『最も危険な年』
原題:The Most Dangerous Year
2018年/米国/90分/日本語字幕付き/監督:Vlada Knowlton 

※日本での上映は基本的にオンライン上映となります。次回は2023年8月25日〜28日のアンコール上映会です


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