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神奈川県がLGBT支援事業を本格化、相談員の派遣も実施

 神奈川県はLGBT(性的マイノリティ)の支援策を本格的に始めることを発表しました。私生活や職場などで悩みを抱える当事者のもとへ専門相談員を派遣するほか、中小企業などでLGBTへの理解を深める研修会を開きます。多様性を柔軟に受け入れ、性的指向や性自認にかかわらず暮らしやすい環境を整える意向です。

 「Stay As You Are!~あなたのままで、あなたらしく~」というキャッチコピーが掲げられた神奈川県の記者発表資料によると、「本県では、LGBT等の性的マイノリティの方々が「自分らしく」生きることができる社会の実現に向けて、本庁舎レインボーライトアップや九都県市が連携した配慮促進キャンペーンなど、広く県民の方々を対象とした啓発事業に取り組んできました。このたび、性的マイノリティの当事者や関係機関などへの直接的な支援として、性的マイノリティに関する派遣型個別専門相談事業をはじめとした次の事業を実施し、性的マイノリティの方々が抱える悩みや問題の解消を目指します。今後については、ニーズや効果などを見極めながら事業の展開を検討していきます」として、4つの事業が挙げられています。
1. 性的マイノリティに関する派遣型個別専門相談
性的マイノリティ当事者またはその家族、当事者から相談を受けている支援者(教員、相談機関職員等)からの要望に応じ、臨床心理士など専門相談員を当事者や支援者などのもとに派遣することで、相談者の悩みの解決や緩和を図っていきます。
2. 性的マイノリティ交流会「かながわ にじいろトーク」
学校現場でのいじめや就職差別などの悩みを抱える10代、20代の性的マイノリティの方々を対象とし、お互いの気持ちや体験を共有し、支えあい、励まし合う中から、問題の解決や克服を図ることができる場所を提供するモデル事業を実施し、併せて市町村での同様の取組みを推進していきます。
3. 中小企業の人事担当者等に対する研修会
中小企業の人事担当者などを対象に、性的マイノリティの当事者の方を講師に迎え、講義とワークショップによる研修会を県内2会場で実施します。
4. 児童養護施設の職員に対する研修会
児童養護施設の職員などを対象に、性的マイノリティの当事者の方を講師に迎えて研修会を実施し、性的マイノリティの子どもたちを受け入れる際の対応や、性的マイノリティの子どもたちが「自分らしく」成長できる環境づくりへの支援を行います。

 これまで、LGBTの方も相談できる窓口(電話相談などを含む)を設ける自治体はありましたが、LGBTのための派遣型の個別相談(「かながわSOGI派遣相談」)は全国でも初めての取組みです。協働するNPO法人SHIPに所属する臨床心理士らが、近くの公民館などに出向くかたちで、相談料は無料、本人だけでなく学校や家族、職場などの要請にも対応します。窓口を訪れることをためらう人でも気軽に相談できるようにするものです。
 また、県とSHIPによる性的マイノリティの若者の交流会「かながわ にじいろトーク」は、5月に開催し、以降、1ヶ月に1度のペースで定期的に開催するそうです。
 このほか、大企業に比べてLGBTへの理解が進んでいない中小企業などに向けた研修を実施し、LGBTの採用を促していきます。
 4.については、昨年、児童養護施設での性の多様性に関する職員の意識が全体的に低いことが明らかになり、厚労省が全国の児童養護施設に「性的マイノリティの子どもに対するきめ細かな対応の実施」を通知したという流れを受けての施策と考えられます。

 黒岩祐治知事は10日の定例記者会見で「誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を目指していく」と取組みの意義を訴えました。

 今回、県と協働するNPO法人SHIPの活動について簡単にお伝えします。SHIPの代表である星野慎二さんは2002年から「横浜 Cruise ネットワーク」という団体としてゲイ・バイセクシュアル向けのHIV予防啓発活動を開始し、その着実な活動が評価され、2007年に神奈川県保健福祉局健康危機管理課との協働事業として「かながわレインボーセンター SHIP」を設立することになり、ここを拠点にHIV検査の実施や、性的マイノリティのための交流会の開催、臨床心理士による個別相談などの活動を行ってきました(自治体からの予算でLGBTのコミュニティセンターができたのは全国で初めてです)。2012年にはNPO法人化し、「かながわレインボーセンター SHIP」に代わって「SHIPにじいろキャビン」を開設、また、啓発資材として「思春期の恋バナ」というDVDを製作し、県立学校への配布が実施されました。2015年からは、横浜市からの委託事業で戸塚に交流スペース「FriendSHIPよこはま」も開設されています。さらに、2014年には横須賀市が性的マイノリティ支援事業としてNPO法人SHIPに補助金を交付し、10代・20代の性的マイノリティのための交流会「cafeSHIPポートよこすか」もスタートしています。こちらの記事によると、星野さんは、資金難のため、交流スペースを閉じようかと考えることもあるそうですが、悩みを抱えた高校生らが次第に笑顔になっていく様に勇気づけられ、活動を続けてきた、と語っています。

 神奈川県では、県の公式サイトに「性的マイノリティ(LGBT等)に関する正しい理解を」と題したページを設けて県民のみなさんに理解を促しているほか、啓発資料や啓発グッズを作成・配布し、相談窓口も設けてきました。昨年12月1日(世界エイズデー)には本庁舎をレインボーにライトアップしたことも話題になりました。
 
 

 

参考記事:
神奈川県、LGBT支援に本腰 派遣型個別相談など (日経新聞)

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