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東京都が2020年に向けてLGBT担当部署を立ち上げる意向を表明、2018年度内に条例も制定

 東京都が2020東京大会に向けて、五輪憲章の理念に沿ってあらゆる差別をなくしていくため、LGBT(性的マイノリティ)を担当する部署を立ち上げることを明らかにしました。職員の理解促進を図り、各部署が連携して啓発に取り組むなど、支援を強化していく意向です。

 3月2日の東京都議会本会議で一般質問が行われ、都民ファーストの会の龍円愛梨都議が「性的マイノリティの皆さんは、行政においては、多岐にわたる分野で困りごとがあるため、総合的な窓口を設けるなどの体制を作っていく必要があるのでは?」と質問し、これに対し、多羅尾光睦総務局長は「都も庁内の様々な部署で対応が求められている。総合的な調整を行う担当組織を設け、情報を共有して施策を推進する体制の整備をはかる」と回答し、LGBT担当部署の設置を明らかにしました。トランスジェンダーの方のトイレや更衣室の利用など、LGBTが直面しがちな問題についての調査も実施するそうです。担当課長は4月から人権部企画課に置かれるとのことです。
 東京都人権部は、実はこれまでLGBTのプライドイベントに後援したことがありませんが(東京都の後援の有無は代々木公園の使用にかかわる重大事項なのですが、これまでほとんどが東京都福祉保健局による後援でした)、LGBT担当課ができ、支援を強化していくのであれば、ぜひこれを機に東京レインボープライドにも後援していただけたら、と願う当事者の方も少なくないことでしょう。
 
 なお、こちらでお伝えしたように、東京都は昨年12月、2018年度内にLGBTを含めたあらゆる差別に反対する五輪憲章の理念に沿った条例の制定を目指しています。
 東京都は1990年代の「府中青年の家事件」※を経て、2000年、全国で初めて「人権施策推進のための指針」の中で性同一性障害とともに同性愛という文言を盛り込みました(「近年、同性愛者をめぐって、さまざまな問題が提起されています」という甚だ曖昧な一文ではありましたが)。そして、2015年に同指針の改訂が行われ、3章「人権課題ごとの現状と東京都の施策の方向性」の中に「性同一性障害者」「性的指向」という項目が設けられました(全文はこちら)。一方、都の男女平等参画基本条例の中には性的マイノリティについての記述はなく、LGBT差別を禁止する条例は存在していませんでした。
 まだこの「五輪憲章の理念に沿った差別禁止条例」の内容は定かではありませんが、都内の企業や学校、都民に対して啓発・理解の浸透に努めるとともに、例えば文京区がすでに実施しているように都と取引のある事業者に対して差別禁止を明示したり、同性パートナーシップ証明を東京都全体に広げたり、大阪市のように同性カップルを養育里親に認定できるようにしたり(注:現状、全国の自治体の中で東京都だけが同性カップルを里親認定から排除しています)といった内容であれば、意義が感じられるものになるのではないでしょうか。
 
※東京都の施設である「府中青年の家」で差別的待遇を受けた同性愛者団体・動くゲイとレズビアンの会(アカー)が1991年に東京都を提訴し、1997年に原告団体の全面勝訴となりました。都に対して「少数者である同性愛者をも視野に入れたきめの細やかな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されるものと言うべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使にあたるものとして許されないことである」と求める画期的な判決が下りました。



参考記事:
都がLGBTで担当部署を立ち上げへ 東京五輪に向け(テレビ朝日)
<論戦 都議会>LGBT担当課長新設 一般質問啓発など支援強化(東京新聞)


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