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LGBT関連ニュース

新広辞苑の「LGBT」の説明が誤まっていたため、岩波書店が修正を検討

記事日付:2018/01/16

 昨年、「広辞苑」第7版に「LGBT」の項目が追加されることになりましたというニュースでお伝えしていた通り、1月12日に広辞苑第7版が発売され、「LGBT」という項目が追加されました。
 
 しかし、蓋を開けてみると、「エル・ジー・ビー・ティー(LGBT)」の説明文はこのようなものでした。

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字。多数派とは異なる性的指向を持つ人々。GLBT

 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルは性的指向に関するマイノリティですが、トランスジェンダーは性自認に関するマイノリティであり、トランスジェンダーかどうかということは性的指向には関係ありませんので、この説明は明らかに間違っています(「LGBTとは」をご参照ください)。当事者だけでなく、LGBTの基礎知識を学んだ方なら気づくような、初歩的な誤りです。
(さらに申し上げると、ここでは「多数派」ではなく「多数者」と書くほうが望ましいでしょう。主義主張ではありませんので。また、ジェンダー・セクシュアリティ関連の学術研究では英語的に「バイセクシャル」ではなく「バイセクシュアル」と表記されています。文末の「GLBT」も、海外では使用例もありますが、日本では「LGBT」で統一されているため、載せる必要があるのかどうか、疑問です)
 
 先のニュースでもお伝えしたように、岩波書店は、これまで多くのLGBT関連の良書を刊行してきたほか、『世界』2017年5月号では「〈LGBT〉ブームの光と影」と題した特集を掲載しています。数多ある出版社の中でも、最も先進的に、知的にLGBTを捉え、論じてきたところの一つです。
 編集者の方はさぞかしLGBTについて豊富な知見を持っていらっしゃるのだろう、広辞苑のLGBTの説明に関しても、まさか間違うことはないだろう、と誰もが思っていたことでしょう。万が一、原稿の内容に誤りがあったとしても、校正・校閲の段階で指摘されてしかるべきです(岩波書店は社内に校正部がありますが、今回の場合、1.外部の専門家にチェックを依頼する、2.社内のLGBTに詳しい編集者にチェックを依頼する、3.ググって調べる、といった作業ですぐに誤りに気づけたはずです…確認しなかったのでしょうか?)
 
 トランスジェンダーの遠藤まめたさんは「広辞苑にLGBTが登場。しかし、内容がおかしい。」という記事で、いち早くこの誤りを指摘しました。
「岩波書店がなにをどう引用して、このようにあからさまなミスを載せてしまったのかには、やはり興味がある。再発防止策は、どう講じたらよいのだろう。フツーまちがえないだろうとLGBTコミュニティの中にいると思うのだけど、我々のフツーは、まだまだ社会全体のフツーではない、ということか」
「国語辞書が時代をうつす鏡だとすれば、「LGBTへの理解は進んでいるようにみえて、実はそこまで深くはない」ということを、はからずも「広辞苑」は浮き彫りにしてしまっているようだ。気持ちはありがたいからこそ、もう少し担当者はがんばってほしい」
 この指摘は、すぐにSNS上でも拡散され、批判が相次ぎました。
 
 1月15日の各紙報道によると、岩波書店辞典編集部の担当者は、記述の不正確さを認めたうえで「ご指摘を受け止め、修正を含め対応を検討している」としているそうです。
 
 性的マイノリティの人権問題に詳しい金沢大人文学類の岩本健良准教授(ジェンダー論)は「教訓が生かされていない。広辞苑は特に影響力が大きく、専門家の意見を踏まえて慎重に記載してほしい」と語っています。

 ちなみに、広辞苑の「レズビアン」という項目の説明文は、未だに「女性の同性愛者。レズ。エーゲ海のレスボス島の女性が同性愛に耽ったという伝説による語。」となっているそうです。なぜ多くの当事者が侮辱的と感じる表現を、エクスキューズなしにそのまま載せているのでしょうか? そして「同性愛に耽った」という表現は適切なのでしょうか?
 
 ほかにも、これはNHKでも取り上げられ、SNS上でも批判の声が上がっていますが、「恋愛」の項目の説明文が「男女が互いに相手をこいしたうこと。また、その感情。こい。」となっており、同性愛を存在しないものとしてしまっています。今回、岩本健良・金沢大准教授らの指摘を受けて、「恋」「愛」は改定され、それぞれ「(男女間の)相手を慕う情」「(特に男女間の)思慕の情」というようにカッコ書きになったそうですが(三省堂国語辞典では、すでに「男女の間で」という文言がなくなっています)、「恋愛」の項目は古い記述のままになっているようです。

 10年ぶりの改定となる広辞苑第7版では「ブラック企業」などと並んで「LGBT」が追加されるということが鳴り物入りで喧伝され、発売されたわけですが、当の「LGBT」に関する初歩的な誤りがノーチェックで世に出てしまったことは、もはや「事故」レベルの大失態であり、ジェンダーやセクシュアリティに関する他の項目に関する見直しも徹底されていないとなると…「辞典の最高峰」が聞いて呆れる、岩波書店の知的権威も地に堕ちたものだ、との謗りを免れません。
 「LGBT」の項目の修正は必須でしょうが、これを機に、もう一度ジェンダーやセクシュアリティに関する項目をすべて洗い出し、見直しをかけたほうがよいのではないでしょうか。
 
 
【追記】
 岩波書店は1月25日、公式サイト上で広辞苑 第七版の「LGBT」の説明に誤りがあったとして、謝罪のうえ、正しい解説文として以下のように発表しました。

エル‐ジー‐ビー‐ティー【LGBT】
①レズビアン・ゲイ・バイセクシャルおよびトランスジェンダーを指す語。GLBT
②広く、性的指向が異性愛でない人々や、性自認が誕生時に付与された性別と異なる人々。



 

参考記事:
10年ぶり改訂の広辞苑、「LGBT」説明に誤り指摘(TBS)
岩波書店、新広辞苑の修正検討(共同通信)
新広辞苑、「LGBT」の説明に誤り 岩波、修正を検討(朝日新聞)
「LGBT」の説明、修正検討 岩波書店の広辞苑第7版(産経新聞)
新広辞苑、「LGBT」説明に誤り…指摘受ける(読売新聞)
岩波書店 広辞苑「LGBT」説明誤る 指摘受け修正検討(毎日新聞)