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LGBT自治体議連が発足、文京区議の前田さんがカミングアウトしました

 7月6日、都庁記者クラブでLGBT自治体議員連盟発足についての記者会見が行われ、世田谷区議の上川あやさん(MtFトランスジェンダー)、豊島区議の石川大我さん(ゲイ)、中野区議の石坂わたるさん(ゲイ)、入間市議の細田智也さん(FtMトランスジェンダー)と並んで、5期にわたって文京区議を務めてきた前田邦博さんが登壇し、ゲイであることをカミングアウトしました。

 前田邦博さんはカミングアウトを決意した経緯について、このように語りました。
「私は以前、8年間共に暮らしたパートナーと死別した経験があります。自宅で倒れていて、病院に緊急搬送されましたが、私は法的に親族と認められないため、集中治療室に入れてもらえず、安否を聞くこともできませんでした。幸い、パートナーのご両親が「この人も家族です」と言ってくれたため、中に入れましたが、同居人では面会できないのだという社会の現実を突きつけられました。葬儀に際しても、パートナーの祖父母が理解できないからと、喪主にもなれず、親族席にも座れませんでした。ただ、ご両親のご厚意で、彼の遺品を譲り受けることはできました。一緒に住んでいた賃貸住宅も彼の名義でしたので、追い出される可能せもありました。日頃からご両親とお付き合いするなど、どれだけ個人的に努力をしていても、ふだん関わりのない第三者に「あなたは家族ではない」と言われたら、抵抗できません。社会制度がないため、法的に保障されていないためです。
 これは30代の時の話ですが、私は今、母がアルツハイマー病を発症した時と同じ、52歳という年になり、老いや死というものをリアルに感じるようになっています。偽装結婚せずにゲイとして生きていくことを選んだ最初の世代が、高齢化し、病気や介護の問題に直面するようになっています。このままだと、自殺や介護離職といったリスクを抱える人も増えていくことになります。国が示している地域包括システムはLGBTもその一員となりますが、差別や偏見があれば、そこに馴染むことができず、地域の支え合いから孤立していく可能性もあります。今変えなければ、これからどんどん大変になる、という危機感を覚えています。
 当事者はなかなか声を上げることができません。私が今まで公表できなかったのも、怖かったからです。文京区議に初当選した時、議会事務局にゲイについてのいやがらせの手紙が届きました。信頼してカミングアウトした方が周りの人に話してしまったということもありました。議員であるがゆえの危険性があるのです。しかし、私は、社会に一定の影響力を持つ立場、世代の人が発信していくこと、制度をつくっていく役割があると思いますし、疎外されている人たちの支援にあたり、自らのマイノリティ性を示した方が支援は深くなる、人知れず悩んでいるような人も声を出しやすくなると思い、カミングアウトを決意しました。LGBTを支える仕組みや制度ができ、違いを認め合い、多様性や相互扶助が実現するような社会をつくっていきたいです。誰もが自分らしく、大切な人といっしょに暮らしていけるような社会に、と思っています。
 ともするとLGBTは若い人たちのことと捉えられがちですが、どの世代にもいます。50代となった私のカミングアウトが、今後の勇気ある一歩へとつながることを期待します」
 涙で声を詰まらせながらの、感動的なお話でした。

 LGBT自治体議連は、以下の3つの事柄を目的として発足しました。
1.性的指向と性自認に関する人権擁護のための条例制定や施策の推進
2.同性パートナー制度の創設や、LGBT当事者の自己肯定感向上のための施策推進等により、いじめ・自殺・貧困・感染症・依存症等の予防をそれぞれの地域に合わせて進める
3.会員相互の親睦と情報交換
 上記の5名の当事者議員を世話役とし、すでに北海道から沖縄まで78名のアライ自治体議員(県議会議員8名、市区町議員が70名)が趣旨に賛同し、名を連ねています。これから公式サイトが立ち上げられ、賛同する議員の方の一覧もおそらく掲載されることになるそうです。全国の当事者の方たちが、議会に働きかけたいというときに、どなたに相談したらよいのかということの指標にもなりそうです。
 今回、LGBT自治体議連が発足した背景には、国の方でLGBT差別を禁止するような法制度の実現が停滞している一方で、渋谷区・世田谷区から同性パートナーシップ証明制度がスタートして全国的に広がりを見せており、地方でも変えていけるという実績ができたことがあります。すでに同性婚を認めているような国でも、まず地方自治体から変わっていき、国レベルへと進んだという歴史もあり、地方自治体の当事者議員が主体となり、志高く、地方から変えていこうと謳うものです。

 LGBT自治体議連の最初の活動として、2017年7月27日〜28日の2日間、豊島区役所で「夏の研修会」を開催するそうです。LGBTについての最前線の知見も得られ、実際に二丁目や渋谷区で活動する当事者の方たちとふれあう機会も設けられ、実のある内容になっています。ぜひ参加をご検討ください。

LGBT自治体議員連盟2017夏の研修会
日時:2017年7月27日(木)〜28日(金)
会場:豊島区役所8F
会費:5000円
講演者:鈴木賢氏(明治大学教授・北海道大学名誉教授)、鈴木秀洋氏(日本大学危機管理学部准教授・元文京区役所男女共同担当課長)、長谷部健氏(渋谷区長)ほか
内容:講演のほか、自治体議員からの報告、新宿二丁目のコミュニティセンター「akta」の視察、渋谷区ダイバーシティセンター「アイリス」の視察、二丁目のカフェ&レストランでの懇親会など


左から、豊島区議の石川大我さん、入間市議の細田智也さん、世田谷区議の上川あやさん、文京区議の前田邦博さん、中野区議の石坂わたるさん

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