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経団連が会員企業に対してLGBTについてのダイバーシティ&インクルージョン施策を実施するよう提言しました

 日本経済団体連合会(以下、経団連)は2017年5月16日、会員企業に対して、LGBT(性的マイノリティ)の社員や顧客に対する差別の禁止や配慮を求める提言「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」を発表しました。
 
 「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」は、「ダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(包摂)社会の実現が、わが国の最重要課題の一つとなっている今、『見えないマイノリティ』であるとともに、企業としても取り組みが急務となっている、LGBTの人々に関する対応に経済界として初めて焦点を当て、各企業の取り組み状況を紹介すると共に、どのような対応が考えられるかを提言するもの」です。そして、「LGBT(性的マイノリティ)の人々に関する適切な理解・適切な知識の共有を促すと共に、存在の認識・受容に向けた取り組みを推進すべく、LGBTという言葉についての概説、LGBTに関する国内外の様々な動向を紹介した上で、わが国企業による取り組みの方向性を示して」います。
 
 経団連は今年3月、会員企業を対象に、LGBT施策について尋ねる初めての調査を行い、全体の15%に当たる233社から回答を得ていました。それによると「何らかの取り組みを実施している」と回答した企業は42.1%、「検討中」という企業が34.3%に上りました。
 「実施している」または「検討中」と答えた企業に、その内容を複数回答で尋ねたところ、LGBTへの理解を深める「社内セミナーなどの開催」が91.8%と最も多く、次いで「相談窓口の設置」が82.8%、「性別を問わないトイレなど職場環境の整備」が52.2%、結婚休暇や配偶者手当を同性のパートナーにも認めるなどの「人事制度の改定」が32.8%という結果でした。
 「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」では、この調査の結果のほか、93社の企業の取り組み事例を一覧にして紹介しています。
 調査の結果について、経団連は「回答率は15%で、実際には企業の対応をより促していく必要があると感じている。グローバル化が進む中、多様な人材の受け入れは、優秀な人材を確保したり成長性を高めたりするための大きな課題となっていて、職場環境や制度の整備を広く呼びかけていきたい」としています。
 
 企業の取り組み事例としては、例えば、資生堂が6年前からグループの企業理念に「性的指向による差別やパワーハラスメントなどを行わないこと」を明記し、LGBTを差別しない姿勢を明確に打ち出しており、今年1月には人事制度を変更して、同性婚のカップルにも結婚祝い金を支給するとともに、介護休暇や慶弔休暇を取得できるようにしたほか、港区のオフィスではすべての階にある多目的トイレに、性別に関係なく誰でも使えることを示す新しいマークを取りつけたことが紹介されています。人事部の春日裕勝マネージャーは「欧米やアジアを中心にLGBTの人たちを支援する動きが大きな流れとなっている。すべての社員にありのままで力を発揮してもらいたい」と語っています。
 他の日本の企業でも、パナソニックやソニー、野村ホールディングスなどで、同性のパートナーも結婚に相当する関係として認めるなど、制度を見直す動きが相次いでいることが窺えます。

 LGBT総合研究所の森永貴彦代表は「企業のグローバル化に伴って社員や顧客、株主も多様化し、LGBTへの対応は企業の社会的責任としての課題となっている」「オリンピック憲章で、性的指向による差別の禁止が掲げられており、差別をしていると見なされた企業は物品やサービスの調達を行う対象から外されることが大きなきっかけになっている」「人事や管理職を中心に、研修に取り組む企業は増えてきたが、現場の社員まで理解が浸透している企業は非常に少ない。LGBTを身近な存在として会社全体で理解を促進することが重要だ」と語っています。

 一部上場企業を中心に構成される経団連がこのたび、LGBTの社員や顧客に対する差別を禁止し、LGBTへの理解や配慮を求める提言を行ったことの意義は大きく、今後、大手企業におけるLGBT施策がいっそう加速していくことが予想されます。


参考記事:
「LGBT」対応 大手企業の4割 経団連調査(NHK)他

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