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渋谷区が同性パートナー証明書発行から1年を経て、コミュニティスペース設置へ

 昨年、渋谷区で同性カップルも結婚と同等だと認める新条例が制定され、11月5日から同性カップルへのパートナーシップ証明書が発行されはじめました。その後もダイバーシティ推進のための施策を積極的に進めてきた渋谷区は、今度はLGBTのためのコミュニティスペースを設置することを発表しました。「LGBTコミュニティスペース #渋谷にかける虹」として、月に1度、渋谷男女平等・ダイバーシティセンター〈アイリス〉にLGBTが集まり様々なテーマで語り合うそうです。11月末からのスタートを前に、キックオフイベントが11月3日に行われました。 
 
 キックオフイベントの冒頭、長谷部健区長は「条例はパートナーがいる人のための施策。今後は思春期の子どもたちや、その親などのサポートも考えていきたい。このコミュニティスペースの開設もそのような取り組みの一つです」と意義を語りました。渋谷区のマークにレインボーカラーをあしらった「レインボーアイリス」もお披露目されました。
 続いて、第1部では「同性パートナーシップ条例」成立までを関係者が振り返るパネルディスカッションが行われ、LGBTアクティビティの杉山文野さん、渋谷区男女平等・多様性推進会議会長で弁護士の大川育子さん、府中青年の家裁判※を担当するなどこれまでLGBTの人権問題に関わってきた弁護士の中川重徳さんが登壇しました。まず杉山さんが区議時代の長谷部区長とともに同性パートナーシップ条例に取り組むことになったきっかけを語り、大川さんは条例制定に一から取り組んだ苦労を振り返りました。検討委員の8名も初めはLGBTについてほとんど知らない人が多く、まずは正確な知識を共有することからのスタートだったそうです。「私は人権擁護委員も長年つとめていますが、その委員に話してもなかなか理解が得られませんでした。子どもたちへの教育を含めた啓発が今後も重要だと思います」。推進会議メンバーの1人だった中川弁護士は、当初、証明書発行に際して公正証書2通を必須とする方向で進んでいたのを「パートナーシップ証明を行う場合の確認に関する特例」として適用される場合、1通のみで申請できるように変更した意義について語りました。「私は長年、LGBTの人たちの公正証書作成にも関わってきたので、それにかかる費用を知っていました。条例の前文には人権の問題だと書いてある。それなのにお金がある人しか利用できないのはおかしい」。しかし、事務方からは「緩くしすぎると制度として成り立たない」という危惧の声も上がり、議会で反対派の声が大きくなる恐れもあったため、現行案という落とし所になったそうです。(なお、渋谷区の同性パートナーシップ証明に必須とされている公正証書作成について、行政書士であり実際に渋谷区の方の公正証書の作成にも携わってきた永易至文さんが、こちらの記事で「条例が特定の契約のみを指定したことは、私は法律家として問題があると思っています」と意見を述べておられます。併せてご覧ください)

※府中青年の家裁判:1990年2月、動くゲイとレズビアンの会(アカー)が東京都府中青年の家で合宿利用中に、他団体による差別・いやがらせを受けました。「青年の家」所長は、いやがらせに対処するよう要請したアカー側に対して「都民のコンセンサスを得られていない同性愛者の施設利用は今後お断りする」と発言。さらに東京都教育委員会が同年4月、「男女は別室に泊まらなければならない」という慣例(男女別室ルール)をたてに同性愛者の宿泊利用を拒否しました。アカーは翌年2月、この都教委決定を不服として東京都を提訴し、約3年間の法廷闘争の末、94年3月にアカー側が完全勝訴。同年4月、東京都が控訴するも、97年9月に高裁判決でアカー側が勝訴しました。同性愛者への差別が初めて法廷で争われ、権利を獲得した歴史的な裁判でした。 

 第2部は「LGBTの若者が期待するコミュニティスペース『これから』」と題して、NPO法人ReBit 代表理事の薬師美芳さんとメンバーによるディスカッションが行われた。ReBitでLGBT教育に取り組む薬師さんは、性的少数者がいじめにあいやすかったり、自死念慮を持つ傾向が高かったりするなど、子ども時代から成人するまでに多くの困難があることを解説。渋谷区で新設されるコミュニティスペースの意義を語りました。
 ReBitメンバーでゲイのソウシさんは、地方で過ごした高校時代まで、ネットでは当事者とつながることができてもリアルではなかなかつながることができず、孤立していたそうです。「コミュニティセンターは、様々な年代の人たちが集まり、性的少数者の若者が将来のロールモデルと出会えるような場所になってほしい」と語りました。
 レズビアンのAさんも、地方に住んでいた20歳の頃まで当事者と1人も出会ったことがなかったといい、「コミュニティスペースが昔の自分のように孤独を感じている当事者の助けになれば」と語りました。 

 渋谷区の同性パートナーシップ証明書の申請第1号となった東小雪さんと増原裕子さんも、現在の心境を語りました。
「制度を利用して感じたのは安心感です。社会に認められたということが自己肯定感につながりました。肯定的に報じられアライが増えたことも嬉しいですね」(東さん)
「里親を希望する同性カップルは多いと思います。里親制度の管轄は東京都ですが、渋谷区から都に対して働きかけてもらいたい」(増原さん)

 長谷部区長は、次のステップについて「条例の制定前には批判の声も少なからずありました。しかしそのほとんどは正確な知識に基づかない差別的なものだった。これは正しくないと思いました。結果として条例制定後にはそのような声はなくなった。これからは次の段階。マジョリティの人たちに意識の変化を起こせるかどうかです。みんなで第2のウェーブを、ビッグウェーブを起こしていきましょう」と語りました。

 なお、渋谷区の同性パートナーシップへの取組みについてWeb上でアンケート調査が行われ、3週間で約700人から回答があり、約8割の方が6~8万円の負担は「高い」と回答したそうです。他にもさまざまな声が寄せられましたが、なかでも「証明書があると心理的に安心できる」「社会的な認知が広がった」という声が多かったそうです。実際に申請したのはまだ15組だそうです(公正証書の負担が大きいことも影響しているのでしょう)
 
 今後、月に1度のペースで渋谷男女平等・ダイバーシティセンター〈アイリス〉で、コミュニティスペース「#渋谷にかける虹」が開催されます。東京レインボープライドがイベント運営に携わります。初回の11月29日は「みんなの理想のコミュニティスペースを教えて!」というワークショップです。区内に住むLGBTの方であればどなたでも参加できるそうです。


参考記事:
LGBTに交流の場、渋谷区が開設へ 証明書交付1年(日経新聞)
パートナーシップ証明書から1年、渋谷区の次なる取り組みは? 長谷部健区長「マジョリティに変化を起こせるか」(The Huffington Post)

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